[HOME] [本州の山] [2日目]

徳ちゃん新道から雪の甲武信ヶ岳
2008/12/8〜9


 12月8日(1日目)


木賊山の先から見た甲武信岳

 2008年の山登りの締めくくりとして、これまで何度か計画だけをして登ったことのない甲武信ヶ岳にした。当初の予定は西沢渓谷の村営駐車場で前泊し雁坂峠から甲武信ヶ岳に向かう予定であったが、前夜にお酒を飲む機会があった。そこで、出発を当日の朝にし、中央高速経由で登山口に向かった。まだ夜の空けやらぬうちに首都高速に乗ったが、不景気をよそに高速は車が多い。中央高速では初狩サービスエリアから最初の富士山の眺めが得られるので寄り道し、朝日に照らされた富士山の姿を拝む。。


中央高速初狩パーキングエリアから

 道の駅「みとみ」に車を停め徳ちゃん新道の登山口に向かう。休業中の西沢山荘脇の登山口から、カラマツ林の間に付けられた「徳ちゃん新道」をひたすら登ると、左手に鶏冠尾根が見えてくる。ほどなくするとシャクナゲがまばらに見え出し、さらに急坂を登るとしっかりしたシャクナゲのジャングルとなる。シャクナゲはどこまでもトンネル状となっていて、次の季節の蕾を付けたものも多くある。
 1869mのヌク沢からの道と合流する場所の「広瀬」までは、登山道にはほとんど雪はないが、その先はアイスバーン化したところや圧雪されて滑りやすくなっていて、さらに傾斜も急なので10本歯のアイゼンを装着する。


当初の予定だった雁坂峠への分岐

 主稜線に出ると、そこは雁坂峠からの道と木賊山(とくさやま)への道が交差するところであった。太陽が顔を見せていた天候が、真っ黒な雲が押し寄せるように変わったが、樹林帯の歩きでは風の影響をほとんど受けずに済んだ。
 それまでの道はしっかり踏まれてアイゼンが音を立てて雪に吸い付くようで歩きやすいが、雁坂峠への道を見るとそこにはわずかな踏み跡があるだけであった。もし前夜泊していたならばこの道からきていたのだったが、自分の体力からは大変な苦労をしただろうなと、計画が変更となったことを喜んだ。 

  すぐ木賊山の頂上標識に出た。そこは頂上とは名ばかりののぺ〜っとしたところであり、その先に少し進んで甲武信ヶ岳が見える斜面に出て初めて木賊山も「山なんだ」というように思えた。初めて見る甲武信ヶ岳は三角形のきりりとした山で、埼玉県の最高峰である三宝山(さんぽうざん)を従えている。もっとも三宝山のほうが標高はわずかに高いのではあるが。
 木賊山の斜面を下るとそこは吹きさらしとなっていて、踏み跡が消えかかっているがその距離はわずかで、すぐ樹林帯に入るし、標識もあって、「甲武信小屋600m、木賊山400m」と書かれていて安堵する。


冬期小屋はトイレ(閉鎖中)との間を入る

 今夜は甲武信小屋の冬期小屋にお世話になる予定で来たのだが、その内部をのぞくと、ソーラー発電を電源として冬期小屋の入口と小屋内に電灯が灯されているし、木屋の内部は布団やシュラフが用意されていて、さらにとても綺麗なことに驚いた。それらはわざわざ、小屋で冬に甲武信ヶ岳に登る者に使わせるために準備してくれているもので、感謝の言葉意外にない。
 先ほどまでは、「今日は頂上に行かず、すぐ小屋で沈殿しよう」と思っていたが、小屋を見て急に元気が出てきたので、冬装備を満載した大型ザックを背負ったまま、頂上へと向かった。頂上への登山道は小屋の左脇にあるが、登山道の様相はこれまでと同様、樹林帯の中の急登である。途中、斜面が崩れたところに出るが、そこは樹林帯が切れていることから、強い風が吹き付けている。


木に付着した氷

 斜面の崩れからの先は平坦な道となっていて、この先、頂上まではどのくらいあるのだろうかと思いながら歩いていると、樹林の間からぽっかりと頂上標識が見える。「やった〜。」と思わず声に出して頂上に出ると、四囲の山は雲に隠れていて姿を見せない。
 十文字峠への道には何人かが歩いた足跡が見える。もう一つの金峰山あるいは毛木平への道にも同様に足跡が複数続いている。雁坂峠から歩かなくて良かったと思うような自分とは違う人たちの存在が羨ましかった。
 


甲武信の上にて

 寒風の吹きすさぶ頂上で20分ほど滞留したのち、甲武信小屋に戻る。小屋の外に置かれている寒暖計はマイナス5度を示している。小屋の壁にはスコップが掛けられていて、心遣いが感じられる。トイレ棟は閉鎖されているが、工事現場に置かれるような簡易トイレが設置されていて、使用できるようになっている。何から何までの気配りで、頭が下がりっぱなしである。
 冬期小屋とは言っても、普段は登山客が泊まる部屋をあてがっているので広い。今日は寝袋を2つ用意してきたし、エアーマットも持ってきたので、小屋の寝具を借りる必要はない・・・・、と当初は思っていたが、とにかく寒い。
 イヤーバンドをして、フリースを羽織り、オーバーパンツを履き、ダウンのフットウォーマーを履くが、細かいことをするため手袋をしていない手はすぐにかじかんでしまう。ジッポーのカイロに火を入れようと思ってもライターが二つとも気化せず火が付かない。マッチでようやく火を入れる。
 このような状況では、甘えて布団類を拝借しよう。ザックに入れてきたシャンパン(ではなくスパークリングワイン)の栓を抜いて一人で乾杯して冷えた体をさらに冷やした後に、肉と野菜たっぷりのうどんで体を温める。夕食を終え、すぐさま布団を敷いて潜り込む。この際、果物や牛乳、水など凍りそうなものは布団の脇に入れる。
 まだ7時にもならないが、夢の世界に入っていってしまう。何度か目覚める。布団の隙間から冷気が当たる肩は寒いものの、布団の中は快適至極である。


ソーラー発電による常夜灯

[HOME] [本州の山] [2日目]