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珠沙東京の夜景が一望 冬間近かの雲取山
2007/12/16


■ 12月16日(1日目) 

 連続した休みがなかなか取れないことから、泊まりがけの山に行けないもどかしさを感ずるが、やっと入れた休暇を利用して雲取山を登ることとした。通勤の電車の窓から見る奥多摩の山々は白くはなっていないが、2004年12月に登った雲取山は登山口に警察官が立っていて、冬山装備の確認と注意をしていたほどだから、今年も山には雪が積もっているだろうと予想して10本歯のアイゼンのほか、寒さ対策をしっかり整えて奥多摩駅に向かった。
  
 日曜日の奥多摩駅発鴨沢西行きの西東京バスは、椅子に座れない客も多かったが、雲取山の登山口の一つである鴨沢で下りた登山者はわずか3人で、ほとんどは途中で下車していった。バスには所属する山の会のメンバーが奥多摩むかしみちを歩くためハイキングスタイルで乗っているが、ものものしい75リットルのザックを持ち込んでいると、なぜか場違いとも見える。


早朝の雲取山頂避難小屋

 鴨沢のバス停前には公衆トイレがありしっかり準備を整えて、09時30分、民家の間の道を道標に従って上り、10時00分、所畑の林道に出るので一休みする。日曜日のこの日は、もう多くの人が次々と下山してくる。林道をそのまま歩くと、実質的な登山口の小袖乗越にすぐ出合うので山道に入る。登山道は徐々に高度を上げるので足に無理がなく快適に進むことができる。と、突然前方から音もなくマウンテンバイクが下りてくる。何も登山者の専用道路ではないのだろうから、マウンテンバイクが来ようが馬車や牛車を走らせようが自由かもしれないが、「はい、どうぞ。いつでもご自由にお通り下さい。」との気持ちにはなれないだろう。ただ、西洋の人がマウンテンバイクを下りて一礼し、通り過ぎるまで待って道を譲ってくれたから、それ以上の感情を持つことはなかった。

 その先を行くと、山岳会の名前が刺繍されたシャツを着た若い男性2名が清清しいあいさつをしてすれ違う。雪の状態を聞くと、「自分たちはアイゼンを着けなかったが、七ッ石山付近では注意するように」とアドバイスされた。週末の避難小屋には15人ほどが泊まっていたようで混雑していたとのことである。そして、夜間、早朝は相当寒かったとも。

石尾根を遠望 七ッ石山南西斜面

 快適な足取りもだんだん鈍ってきた。堂所に着いたときはもう12時を過ぎてしまっている。超スローペースだ。まだ夕べのアルコールが抜けきっていないようで、眠気も催してくる。七ッ石小屋下からトラバース状の道を進むと日陰の道が圧雪で覆われるが、アイゼンを必要 とするほどでもないから、そのまま七ッ石・鴨沢分岐も過ぎてブナ坂(唐松谷への分岐で、現在唐松谷林道は台風の影響で通行止めとな っている。)に着いたのは13時20分となった。ヘリポートを過 ぎ、明日の下山道である富田新道の様子を見ていこうと奥多摩小屋から巻き道に入る。富田新道は雪に覆われているが、何人かの足跡があるので、下山に支障はないものとみえる。

 小雲取山に着くと避難小屋へはもう少しだ。まだ陽は沈んではいないが、午後3時30分の稜線は吹く風も冷たく、ジャケットを着込み手袋も厚手のものにして小屋を目指す。もう6時間近くも、汗をかいたり冷えたりをくり返しながら歩いたので、早く小屋に入って一息つきたい。温かい飲み物もいいし、ビールも・・・。16時ちょうどに小屋に入る。


唐松谷分岐

  避難小屋には4,5人いるとの情報を得ていたが、先客は68歳という男性(所沢氏)一人だけであった。まだ16時だというのにもう小屋の中はす っかり暗くなっていて、寒暖計は1度を示している。この様子だと夜は相当の冷え込みが考えられるので、あらかじめ寒さを予想して持参した2つのイスカのシュラフ(最低使用温度+2℃までのエアー280と−6℃までエアー450)を重ね、寝る準備を先にした。エアーマットは「カスケードデザイン サーマレスト ライトフォームウルトラライト」の120cm、シュラフカバーはゴアテックスを使用したもので、これで寝る準備と一人宴会の寒さ対策も万全だ。(シュラフを重ねて使用する効果については「教えて!goo』参照)

  同宿の所沢から来たという所沢氏は、「会社を定年退職後、北アルプスの山小屋を2年間手伝ったのち、再び会社勤めを再開し、夢見た山三昧の生活からは遠のいた。」とは言うものの、自分から見れば頻繁に山に入っていて、うらやましい限りである。「今日はどこから登りましたか。」と聞くと、「奥多摩からです。」と言う。いやぁ、あのぅ、そのぅ、鴨沢からですか、三峰からですかということを聞いているのだが、その他の選択肢を思い浮かべることができず、「奥多摩ですか」と聞き返すと、「奥多摩駅から石尾根を登って来たんですが、8時間でこれました。」と言う。

小雲取山から七ッ石山方面 小雲取山の先から避難小屋

 奥多摩駅から石尾根?コースタイム8時間30分のところを8時間で歩くとともに、短い歩程の鴨沢から登った自分より早く避難小屋に着くとはなかなかな人だなと思っていると、この所沢氏は「石尾根を8時間で歩けるかどうかが私の健康のバロメータなんです。まだまだいけると実感しました。今回は4日間の予定で来たんですが、急に仕事の打ち合わせがあって明日下山しなければなりません。明日また石尾根を下って帰ります。いつまで山を登れるかは分かりませんが、登りたい山がたくさんあって、山のことを考えているだけでも楽しいですね。」と、本当に山歩きが好きなようだ。さてさて、食事も済んで小屋の外に出てみると真っ暗闇となっているが、遥か東に広がる東京の夜景がきれいだ。小屋に戻るともう所沢氏は軽いいびきをかいて寝ている。何もすることのない静かな避難小屋、自分も寝ようか、まだ夜のNHKニュースは始まらないが。

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