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日高路 春の野の花三昧
2004/ 4/29


杵臼のエゾノリュウキンカ

7日夕方,南日高のサクラソウ四姉妹に会う前に,梅俊さんが講演で話していた平取町のソラチコザクラを探した。梅俊さんが言っていたのはハヨピラ公園裏の岩場であるが,4月初旬に見たとおり,ソラチコザクラは付いてはいるものの花数が少ないことから二風谷ダム周辺を探した。しかしダムの周回道路は土砂が流れ通行止となっていて入れないの新平取大橋周辺の岩場を探した。


杵臼

新平取大橋周辺右手の岩は,南日高のそれのようにきれいではなく,苔や泥で汚れてはいるものの,遠目で岩がピンク色になっているところが見られる。最初にアベツ川の岩場を対岸から観察し,再び新平取大橋に戻ってアベツ川の岩場の下を歩くと,国道のすぐ脇の岩場から始まって何か所かにそこそこのソラチコザクラが咲いている。

しかし,南日高のソラチコザクラのようにのびのびとした株は少なく,被写体となるものは岩場のはるか高いところにわずかにあるだけであって,本命の花場ではないことが分かる。ここから宿泊地である浦河の山中にあるオロマップキャンプ場まではさらに100kmあるので,平取のソラチコザクラに見切りをつけて先を急ぐ。


杵臼

オロマップキャンプ場は,優駿ビレッジアエルを越え,西舎橋手前を中央競馬会日高育成牧場に向け左に折れ林道を進んで日高幌別川沿い,川をはさんだ対岸の道路が天馬街道というロケーションにある。トイレ・炊事場完備,焚き火用の薪も十分用意してあり,花の終わったフクジュソウ,旬が過ぎたカタクリ,今が盛りのニリンソウに囲まれた恵まれた環境にある。

すでに夜8時を過ぎた時間に到着した最初の仕事は,火をおこして遠赤外線をたっぷり発生させること。キャンプ場に足を運んでいるのは花探し爺1人であり,加えてこの5月の山中は日がかげると急激に寒くなるが,火にあたりながら野趣豊かな時間を過ごす。


杵臼

本来,キャンプ場の朝は爽やかな目覚めになるはずであった。しかし,森閑とした日高の山中のキャンプ場にテントを張る勇気がなく,狭い車の中で寝たために体が痛いし,換気のために少し空けたガラスの隙間から冷気がたっぷり入って体が冷え切っている。

「薪は必要最小限を効率的に使いましょう。」との注意書を横目に,目覚めの焚き火をさせてもらう。


日高の公園裏 大樹が作る日陰に沿ってサクラソウが流れ落ちている

 サクラソウ科の花,リベンジの旅初日ではあるが,さっそく目についたエゾノリュウキンカの大群落の中に入っていく。ここは林道を少し入った清流に沿って長くエゾノリュウキンカの花の道が続く。笹の葉の下に隠れるようにしてオクエゾサイシンが花を咲かせているが,ここで取り上げるべきはギョウジャニンニク。このために今回は,ナイフとタッパーと醤油を持参した。ギョウジャニンニクの醤油漬けを作ろうと言う魂胆である。ギョウジャニンニクも必要な分をいただいたことから,車を奥へ奥へと進める。

 ここのソラチコザクラは西面に咲くことから写真には撮れず,ならばとさらに車を進めるが,エゾオオサクラソウはあっても適当な岩場はなく,次の場所へと移動する。ここは東面,朝日をたっぷり浴びてソラチコザクラが可憐に咲いている。次に杵臼のエゾノリュウキンカ,アズマキイチゲを見て様似町に移動し,ゲートに車を置いて林道を歩き,たった一輪のクリンソウを見つけ,エゾオオサクラソウの観衆に見送られながらサマニユキワリ撮影のモードに入る。連休に来たときとは違って,どの株も花を咲かせていて壮観の一言に尽きる。


民家の脇

第2日目は,沢に入ってエゾキスミレ,カタクリ,ニリンソウを見やりながらとある絶滅危惧種を探し,さらに進んでシラネアオイの開花を確認し,ヒダカミツバツツジのありかを想像したのち,ヒダカイワザクラの咲く川に移って岩場と沢を彷徨する。沢の入口には花が白く小さなミヤマエンレイソウ,エンレイソウが咲き,獣道を追いながら沢を上流へと進む。

昨年,この沢に入り込んで岩場に咲くヒダカイワザクラを発見し狂気乱舞したが,林道終点から薄暗い沢に入る知恵も勇気もなかった。今回この沢に足を踏み入れてみると,すぐの岩場にヒダカイワザクラが取り付いているのが見え,その先も延々とヒダカイワザクラが見つかるのであったが,今回はここで取りやめることとした。この沢の川床にはエゾオオサクラソウがたくさん芽吹いており,その見ごろは次週になるものと見られた。


国道の一歩裏

 庶野さくら公園は,えりもの海を見渡す高台にあって絶好の花見の場所であるとともに,宴会中の花見客の脇にシラネアオイやサンカヨウが何事もないかのように咲いている面白い場所である。酔った人間と稀少植物の何気ない融合とでもいおうか。この日の公園のサクラはまだ3分咲き,こぶしの花も開いたばかりで,シラネアオイやサンカヨウも同様であった。


咲いたばかりのオオバナノエンレイソウ

 公園を抜けて林道を進むと,トドマツ林の下にエゾオオサクラソウが群生し,木材を運搬した轍のところどころにクリンソウがあるには驚く。


クリンソウ

えりも周辺を逸脱し,浦河町に戻って山中に入るとオオバナノエンレイソウが林道の両脇に驚くほど大きな花を付けている。ニリンソウやカタクリに囲まれて君臨するオオバナノエンレイソウには,白い貴婦人といった称号が似合うのかもしれない。

西舎を抜け,再びオロマップキャンプ場から林道に入ってソラチコザクラを写真に収めるがすでに日は傾きつつあり,キャンプ場でコーヒーを沸かし休息を取ってから帰路につく。


さくら公園裏のエゾオオサクラソウ

日高のサクラソウ科のはな旅は,一度や二度では堪能し切れないスケールを持っており,次回は本年3度目となるはな旅を,判官館森林公園,井寒台森林公園,常盤公園,アポイ岳,ルシチ山などとすることとした。


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