[HOME][フクジュソウの全記録]

そろそろ 大ドッケのフクジュソウ
2008/ 3/18

                  


 2008年3月20日付けの読売新聞は、「春を待つ能登」と題し「雪割草と歩む商店街」を特集していた。「石川県輪島市の猿山岬が、紫やピンクの雪割草の花で彩られ・・・能登雪割草まつりが開かれる。年間1万人が訪れる一方、無秩序な観光客に荒らされ、花が減るピンチに陥っている」という記事である。
 ところ変わってここ大ドッケのフクジュソウ群落地である。花の最盛期を迎え群生地を縦横無尽に歩く人、フクジュソウの上にレジャーシートを広げる人、フクジュソウの周りの枯れ葉枯れ枝をすべて取り払って写真を撮る人など、猿山岬に負けず劣らずの状態である。



 当日の天気予報は午前中は曇りで午後から太陽が顔を出すとのことであったので、山を下りるころにはフクジュソウの花が開いているだろうとの期待を抱いて、今年4回目となる秩父通いとなった。3月も後半となったのに秩父の朝は肌寒い。今日もバス停には誰もいないだろうと思って国道のバス停に向かうと、山スタイルのご婦人が2人先着している。
 「行くのですか。」という阿吽の質問に「ええ。」と答えると「2回目なんです。」とのこと。「私も今日が今年の4回目なんですよ。」というと、「え〜、ホームページの人!」と素性を見破られる。なんか「一人歩きの北海道紀行」のSakagさんか、はたまた「北海道あれこれ さっぽろ発」のおっさんとおばさんがよく遭遇するようなことの、初体験であった。
 そのようなことはともかく、次のバス停からは「おいらく山岳会」に所属していると言う2人の紳士も乗ってきて、珍しいことにバスはこのほか地元のご婦人一人を合わせ6人もの乗客を乗せて走る。紳士は終点2つ手前、ご婦人は一つ手前、そして終点と、それぞれ降りるバス停は違っていてもも、目的の場所は一つであり、通いなれた人ばかりの感がする。

 伐採地に近づくと、「何かあったら防災ヘリを呼べばいいんだ。」と大声でメンバーを叱咤激励する地方のリーダーと思しき人に引き連れられた、スニーカーに棒っきれの集団に追いつく。ご婦人の組とも紳士の組とも沢に入ってから合流し、10人以上の団子状態で目的地を目指す。
 もう雪は残っておらず、かといって芽吹きもない無味乾燥な風景の急な沢を400mほど登るとそこにフクジュソウの群生地が待っている。群落地にはカメラが趣味と思われるグループ数名が先着していて、フクジュソウの撮影に熱中している。フクジュソウの周りの地面がむき出しになっているところがあり、斜面にはフクジュソウを踏み付けて登った跡があちこちにある。「ここは広場になっているからおいでよ。葉っぱをよけといたから、写すのにいいよ。」と屈託がない。群落地の上部には大樹があってその根元にたくさんの花が咲いている。そこに行くには、群落地の周縁を回って水平に付いた獣道を通ればダメージが少ないが、おじさん一人が「広場」からフクジュソウを踏みつけながら「大樹」に向かって直登して行く。「おじさん、やめてよ。踏んじゃってるよ。回って行ってよ。」
 おじさんは「上へ行くんだよ。」というから、「回って行けばフクジュソウを踏まないで行けるんですよ。」とお願いする。
 平日の静かな山にフクジュソウの花を求めて来たのに、これじゃストレスを貯めるために来たようなものだと自戒しながら、平静さを保つように努力する。

 

 群落地の気温を見ると10℃にしかなっていない。太陽は顔を出さず、フクジュソウは蕾を閉じていて、開花しているのはほんの一部だけである。バスであったご婦人も、紳士も長居せずほどなくして下山して行った。「地方の名士」は仲間に向かって「お〜い写真を撮るぞ。」と言い、フクジュソウを踏みながら撮影ポイントに向かう人に「お〜い、フクジュソウを踏むなよ。」などと相変わらず賑やかである。写真はフクジュソウが一番密集している場所へ移動して撮られた。
 能登のユキワリソウも同じだが、訪問客が多くても少なくても結果的には踏み付けが行われるのは自然の成り行きであろうと思われる。足元の枯葉の中にも多くのフクジュソウがあってそこまで思いが至らない場合や、いい株を求めて踏み込んだり、撮影に夢中になって足元に気をつけないこともあるだろうと思う。ただ、秩父のフクジュソウの群落地で手が付けられておらず自然の姿で残っている大ドッケは、あるがままの状態で後世に伝えたい貴重な場所であるから、はやる心を落ち着けて登り、深山のフクジュソウを静かに観賞したいものだ。 

 スミレの花が咲くとフクジュソウの花も最盛期を迎える。崩壊地で、今年になって初めてスミレの花を見かけたが、わずか数輪が咲いているばかりであったから、フクジュソウの花見ももう少し先が適期かと思われる。西武秩父駅からの特急電車に乗ってアルコールを一缶飲むと、飯能駅までの間に爆睡してしまって、池袋の駅に着いてやっと目が覚める始末であった。


[HOME][フクジュソウの全記録]