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大ドッケのフクジュソウ(福寿草)群落地偵察記
2008/2/22           



どの沢が正解なのか?

 2008年に入ってからの実質的な山歩きは今回が初めてとなる。長引いていた風邪がやっと治ったばかりなので、夕方の三多摩のラッシュを考えると秩父までの車での往復を躊躇する。池袋から西武に乗り、大ドッケの福寿草群落地への登山口までは、西武秩父駅前からのバスを利用することにした。始発から2番目のバスには乗客がいない。終点の大日堂で身支度を整え山に入るが、山道には雪が積もっていて滑りやすい。

 見覚えのある山道をたどり伐採跡の急斜面を横切るが、崩壊が著しく踏み跡はなくなっている。次の伐採跡の斜面は鉄砲水でえぐられ、さらにその先は滑落事故が容易に発生するような崩壊を起こしていて、歩くたびに土砂が煙を立てて沢に落ちて行く。踏み跡は一切消えていて、ここを歩くのが正解なのか自信がなくなって、いったん元に戻って山の様子を見る。ほかに渡るべき沢もないことから突っ込んでみると、伐採地をどんどん上がっていかないとダメなことが分かった。大きなタイムロスをして本来の沢に着くと、その先は膝下まで雪が積もっていて、踏み跡も一切ない。軽アイゼンとスパッツを着用して尾根下を跨ぎ、隣の沢に入る。


この張り紙がある沢が正解

 沢に入った途端、「ヘッドランプと予備の食料のない者の入山禁止」との張り紙があり、これによってこの沢が大ドッケに続く沢であることがようやく分かる。沢の流れはほどほどにあるが、岩には氷が張り付いていて滑りやすい。標高は800mを少し切るが、ここから400mほど上がることになる。鹿や小動物の足跡がところどころを横切っているだけで、沢の急斜面の雪を漕いで登るのにエネルギーを要する。

 帰りのバスの発車時刻が14時20分であり、その次は17時過ぎであることから、12時には下山を開始しなければならない。伐採地で時間をロスしたことに加え思いのほかの雪でどんどん時間が過ぎていき、フクジュソウの群落地までは届かない。もしかしたら群落地だけは雪が融けていて、大樹の根元ではフクジュソウが咲いているかもしれないと、17時のバスで帰ることにして先に進む。


この沢を400m登る

 標高1000mあたりから雪はどんどん深くなって、ズボンに着いた雪が融けて靴の中に水が入り、しまいには毛細管現象でズボンの上に水がどんどん吸い上げられていく。粉雪が湿った雪に変わるころ、やっと群落地に着く。そこは一面雪の下で、フクジュソウはどこにも顔を出していない。フクジュソウの季節にはまだまだ早いことが確認できたことだけで十分とし、下山する。

 すっかり濡れてしまった体を温めるため、浦山の老人福祉センター「渓流荘」でお風呂を借りる。深い浴槽にたっぷり貯められたお湯に浸かってのんびりし帰り支度をはじめると、管理の方からお茶に誘われる。地元の方が寛いでおられ、煮物や漬物、パンなどをご馳走になる。山の花の話に花が咲き時間を忘れてしまう。「昔はここ山にもリンドウが咲いていましたが、いつのまにか、一つも見ることができなくなりました。開発の手も入らなかった場所ですが、どうしてなのかは分かりません。」とのことだったが、そういえば滝子山にあった2株のリンドウも昨年はその場所に見ることはなかった。自然環境が大きく変わってきているのだろうか。

 
群落地もまだ雪の下

 地元では、大ドッケのフクジュソウ群落地を見てもらいたい意向はあるが、これを整備しても道が険しく、事故があったときの責任を考えると躊躇せざるを得ないとのことである。自然界での事故などの自分が負うべき責任を転嫁し、訴訟に持ち込むことが多くなった現代社会にあって、無償の奉仕にも限度があるということだろうと考える。このような場所は、団体でがやがや行くのではなく、密やかに逢いに行くような気分で訪れるのがいいのかもしれない。


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