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思いのほかの積雪で難儀!大ドッケから酉谷山避難小屋へ
2011/ 2/ 19〜20

 大ドッケのフクジュソウ群落地探訪の全記録 


巨樹の根本のフクジュソウ


 2月19日(土) 

 2月14日に秩父で22cmとまとまった大雪があったが、その後最高気温が10℃を超える日が3日ほど続いたので、これならもしかしたらフクジュソウもOKと判断で当初計画の雲取山〜酉谷山〜有間山稜を変更し、安易な気持ちで大ドッケに向かうことにした。西武新宿線の車窓から見る沿線の山々には全く雪はないが、電車が横瀬駅に近づくと武甲山や長沢背稜に連なる山に雪が積もっているのが見える。西武秩父駅の土産物店で特別純米酒「秩父錦」のアルミカップを買い足し、西武秩父駅入口バス停(バス停は駅前ではなく国道140号線にある。)で「市営バス「ぬくもり号」10:26発を待つ。

 バスに乗客はなく、同じバス停で乗った方との2人だけで浦山大日堂にと向かう。バスが車とすれ違うと運転手さん同士お互いに挨拶するのは地元だからかと不思議でもなく見ていたが、そのうち道路沿いの民家の人もバスの運転手さんに頭を下げて挨拶する風景を見ると、あ〜、日本のふるさとはいいな〜と思う。そういえば浦山の人はこれまでも優しく接してくれていた。バスを降りるとき運転手さんは、「気を付けて行ってきてください。」と声をかけてくれる。


鬼門の沢

 浦山大日堂の駐車スペースには3台の車が停まっている。「あ〜、もうフクジュソウは咲いているんだ。雪は踏まれていて歩きやすいだろうな。」と楽観的に考えながら山道へと入る。陽ざしはあるが気温はそれほど高くなく一抹の不安を感じるが、先行者の足跡が数人分あり期待のほうが強い。ただ、数人分の足跡なのにどうして車は3台も停まっているのだろうとの疑問はあった。

 廃屋を越え、作業小屋を2つ越え、最初の柵にぶつかると柵のひもが縛られておらず「遊びに来て他人の山に入るのに、こんなことだと嫌がられるな。」と思って、柵を紐できっちり縛って奥に進む。すると第2の柵の前で4人の人が昼寝をしている。聞くと作業を請け負って3月中旬までいるとのことで、「この先にフクジュソウが咲いているようだけれど、どう行ったらいいのか。」「どの沢を行けばいいのか。」などと聞かれるので、きっちり答える。な〜んだ、先行者の足跡はこの作業の人たちのものだったのだ。駐車場の車の数が多いのもうなずけた。


倒木の根本はツキノワグマの寝ぐら

 その先の崩壊斜面にはもう足跡はなく、最初の沢に下りるともう雪だらけで先が思いやられる。目的の沢に入るとミニミニ・デブリがあったり沢の真ん中に雪がたまっていて歩きずらいことこの上ない。スケジュール上の所要時間は雪がない時のものを想定してきたので、時間だけが過ぎていくことにじりじりする。この雪でツキノワグマも難渋したようで、人が通るところにある倒木でえぐれた場所をねぐらとした痕跡が見られる。人間の足はズボズボッと雪に埋まるが、ツキノワグマの足跡は雪に沈んでいないし、雪の上をサッサと歩いているような躍動感が足跡から感じられる。

 汗をいっぱいかき、ほうほうの体でフクジュソウ群落地に着く。前回来た時に花を開きかけていたフクジュソウは雪の下に埋もれているのだろう。黄色い姿はどこにもなかった。ただ数輪が巨樹の南側で顔を出している。前回より季節が戻ってしまったので、旬の時期を迎えるには今しばらくお預けということだった。スケジュールより1時間半も遅くなった。尾根に上がればスズ竹の藪道は動物の足跡で歩きやすいだろうと思ったがその期待は外れ、たまにシカやツキノワグマの足跡がほんのわずかある程度で、多くは前回降った雪を踏みしめ時間をかけ我慢して歩く。雪山を歩く人は偉大だなと思いながら・・・。


まだ先は遠い

 ともかくまず大平山まで行かなくてはと、雪の多い北斜面を歩く。弱り目に祟り目、斜面の傾斜が緩くなると今度は吹き溜まりが現れる。小屋を当てにしてテントはおろかツェルトも持ってこなかった。いざとなればエアーマットを敷いてシュラフにシュラフカバーをかけ、頭はレインスーツで覆って寝ようかなどと考えながら先に進む。大平山に着いて南面に出ても吹き溜まりが多い。陽が傾いてきたのでヘッドランプを装着する。クビレに出ると摩訶不思議、林道が除雪されている。七跳山まで出れば何とかなるだろう。ひと山越して緩やかな稜線になって最後のひと登りをする。間もなく七跳山というところで人の大平山へ下りるのをためらった足跡がある。

 七跳山から長沢背稜に出ると足跡はない。すっかり暗くなった道を避難小屋へと歩く。左側斜面から鹿ではない獣の動きが感じられる。かまっていっられないので先に進む。ヘッドランプの光を反射するのは小動物の目なのだろうか。秩父の街の灯りが煌々としている。しかし、携帯は圏外である。早く小屋に着きたいがまだ先がある。雪でスリップしないよう注意しながら先に進む。どうにか標識に出会う。雲取山への道に足跡はない。明日の雲取山はあきらめる。

フクジュソウ群落地

 酉谷山避難小屋への道に下りると足跡があるようなないような感じがある。まさか三又から来る人はいないだろうと思っていると小屋前の雪にはっきりとした足跡がある。ヘッドランプがポリの買い物袋をとらえる。「遅くなってごめんなさい。」と言いながら小屋の戸を開けると、青年がシュラフに入って横になっていた。驚かせて申し訳ない、遅くなって申し訳ないとは思いつつ、がさごそとシュラフを広げ夕食の準備をしつつビールを飲み、秩父錦を燗にして飲む。青年と山の話、四方山話をとしていると9時になってしまった。湯たんぽを入れたシュラフに入るとあっという間に別の世界に入ってしまった。あ〜極楽極楽!


長沢背稜を歩く

 この日の大ドッケの気温は0℃、稜線では−5℃であった。酉谷山避難小屋の水場は、2秒に1滴のしずくが落ちていた。水は念のため沢の源頭で3リットル補給し、全体で3.5リットルを持参することとなった。


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