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伏美岳〜ピパイロ岳縦走

稜線のツクモグサ

 2日目 6月18日  

 東の空が白じんできて阿寒の山の背後から朝日が昇る。今日もすごい天気だ。日の出とともに日高の山々も徐々に姿を見せる。朝食を済ませ午前4時,伏美岳を下って大小のコブをいくつもいくつも越えて,昨年テントを張った水場のコルに着くが,登山道は厚い雪渓に覆われている。昨年はここで雨の中テントを張って,雨の中テントを畳んで出て行ったっけ。元気だったな〜。

 水場のコルからは2つの急で大きな登りがあって,登山道は雪渓に覆われている。週末金曜日の早朝の稜線に人影はない。「これは落ちたら最後だ,アイゼンを持って来るべきだったな。」

トレッキングポールの先で雪渓を突つき,登山靴の先でスッテップを切る。1時間,まだ雪渓は取れない。2時間,ふくらはぎが疲労の限度を超えようとしている。やっと雪渓がなくなってもうひと登り,ハイマツが現れてキバナシャクナゲが登山道を埋めている。


早春の日高の山並 左から幌尻岳,戸蔦別岳,北戸蔦別岳,右がピパイロの台形稜線

岩場を乗越えて頂上に至りあらためて俯瞰する日高山脈,あ〜,これが望んでいた一つのシーンだ。だが,感傷に浸る時間も惜しい。先に進まないと花には逢えない。ミヤマキンバイが咲き,キバナシャクナゲが咲く岩場の登山道をしばらく進むと岩場の南面にツクモグサが咲いている。まだ朝日の当たらないツクモグサは蕾のままである。

「今まで待っていて,たった今咲きました。今年初めて見に来てくれた人です。どうぞ思う存分に見て行ってください。」とでも言っているようなツクモグサ,一つとして霜に当たってはいない。太陽の光をいっぱいに浴びて一つづつ花が開いていくようだ。どの花もどの花も清らかなまま,本当に今咲いたばかり・・・。


ミヤマダイコンソウ ピパイロ頂上

花の撮影に夢中になっているとやっと一人が稜線を辿ってくる。西峰1911mに行くと言うが,「あなたは今,足もとのツクモグサを踏もうとしている」とは言えず,「ツクモグサが咲きましたね。知りませんでしたか,ほら,足元にいっぱい咲いている。」と注意を促すと,「あぁ,これがね。」と言って気付いてくれる。この日,ピパイロ岳頂上まで来た登山者は,誰もがツクモグサの存在を知らなかったようなのである。


太陽の光を浴び花弁をいっぱいに広げたツクモグサ

稜線にツクモグサを追いカメラに夢中になっているうちに1911mの麓まで来てしまった。まだまだ続くツクモグサ,ミヤマキンバイのフラワーロードであり,名残惜しいが,この山,その山,あの山を越えてさらに伏美岳の急斜面に取り付いて1000m以上を明るいうちに下らなければならない。

1967mにはとうてい届かない。ごめんね,tara。ここまでになるけど1967も見えるし,ツクモグサの花見もできるね。


ピパイロ稜線から1911m その先に1967峰


ピパイロ開花状況
確認日 開花状況 降雪量(4_5月の平均気温)
05/04/10
 ?? 271cm
04/06/13
 ○ 303cm(5.7_12.3)
03/06/08
 ● 191cm(6.6_10.8)
02/06/16
 ▲ 166cm(7.6_12.1)ヒダカミヤマノエンドウ、ミヤマシオガマ
01/06/17
 ● 245cm(7.2_10.8)ヒダカミヤマノエンドウ
99/06/20
 ○ 189cm(5.3_11.4)
97/06/15
 ● 150cm(6.5_9.5)

○=盛期 つぼみ多く枯れ花ないが花数少なめ
●=
やや遅め 枯れ花あるものの花見頃
▲=
枯れ花目立つ すべての花が乾涸び気味

(提供:ONSEN様)


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