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ヌカビラ岳〜北戸蔦別岳〜1967峰〜ピパイロ岳往復 
(2010/ 6/17〜19)


               ■2010/ 6/19(3日目) 

  テントは、夜中相変わらずの風で煽られ、霧で濡らされる。十勝平野の灯りも無論見えず、今日はただ下山するだけかと切ない。それでも、午前4時近くになると東の空が紫色になって明るさを取り戻し、次第に山が照らし出されていく。朝食を済ませ、テントを畳んだ後、テント場を整地する。小さいテント用の場所は一段上がったところにあり、風の影響を受けやすいから石積みを重ねる。テントを張ったところは傾斜があり石垣が不ぞろいなので、地面を均し、丁寧に石積みをし直す。「ここに3回もテントを晴らせていただきました。ありがとう。」の気持ちを込めて・・・。


キバナシャクナゲの咲く北戸蔦別岳のテント場からの風景

 6時になってしまった。去りがたい気持ちを抑えテントを担ぐ。「もう来ることはないのかなぁ。」

 ヌカビラ岳の手前で大きなハイマツがなぎ倒されていて折れ、登山道を塞いでいる。倒木を処理し終えてザックを担いでほんの少し歩くと、男性が目の前に現れる。「おはようございます。」とあいさつし、「お早いですね。」と声を掛ける。続いて男性と女性の順で歩いてくる。女性によると、昨日、北戸蔦別岳の頂上にテントを張ろうとしたが、行くことができず、(すぐそこの)草地にテントを張ったとのこと。 


登山道の真ん中で咲くカムイコザクラ

 でも、結果的にそれがよかったのではないだろうか。そうでないと、北戸蔦別岳頂上の広いほうの場所には、2人用のテントを張ってしまっていたので、1人用のテントを張るスペースしか残っていないし、1856mまで前進するとなるとさらに1時間は余分に必要となるし風当たりも強い場所なので、何がいい結果を産むか分からないものである。

 6時30分、ヌカビラ岳の橄欖岩帯で待望のコザクラたちに出逢う。北戸蔦別岳で少しゆっくりしていたもう一つの理由は、太陽がある程度上がってコザクラに光が当たってくれるのを待つ必要があったのだった。飽くことなくコザクラを眺め、登山道のど真ん中に咲くコザクラを枯れ枝で周囲を覆い、踏まれないようにする。コザクラたちとは結局1時間ほど戯れてしまった。


ムラサキヤシオツツジも多い

 支尾根の夏道分岐見誤りやすい場所を無事通過し、トッタの泉に出る。トッタの泉からも登山道に雪が残っているが、斜面の雪がたった今融けたというようなところで、サンカヨウが、ツバメオモトが群れて咲いている。ギョウジャニンニクも育って、春これからといういい雰囲気にある。ムラサキヤシオツツジが周囲を彩り、ミヤマエンレイソウも自己主張している。

 これは絶好の撮影ポイントと、ザックを下ろし数分間、花を見定めデジカメのシャッターを押す。「もういいか。」とザックを背負おうとすると、「ブオッォー」という音が聞こえ、「ザックカバーが引っ剥がされた音ではないか。」と首を後に向ける。


エゾオオサクラソウはゲートから沢沿いまで延々と咲く

 「ダダダダァー」、すぐそこ、そう、本当にすぐそこ、20歩ぐらいのところからヒグマが飛び出して登山道脇の斜面を上にダッシュして行く。「なんだ、お前、熊かよ。」といった感じでヒグマを見送る。ある種爽やかな出会い?出遭い、であった。「やっぱり北海道の山だよな〜。」、そんな感情だけを持って、ほどなくニノ沢の滝に出る。


ヒダカハナシノブの多さもハンパではない

 太陽は、沢沿いの新緑の樹林帯に日差しを送り込み、春のさわやかな匂いが立ち込める。「我慢して登ってよかった。この雰囲気を楽しみにしていたんだ。」と軽やかな歩調で沢を渉り、2本の巨樹を横目に河原に出て、すっかり花弁を開いたヒダカハナシノブと戯れる。林道跡から取水施設に出ると午前11時の少し前だった。


今年も逢うことができました ノビネチドリ

 取水施設からの林道歩きは、単調かと言うとさにあらず。エゾオオサクラソウが、ヒダカハナシノブが延々と咲き誇り、ニリンソウが彩りを添えている。そしてとあるところに立派なノビネチドリが今年も親子で待ち受けてくれていた。ここ二岐沢からヌカビラ岳への道は、真のフラワーロードである。


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