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さいはての百名山 利尻岳
(2003・6・21〜22 単独・テント泊)


ハクサンイチゲ 鴛泊コースから鴛泊港方向を見下ろす

 登る北海道の山の対象としてはあまり食指の動かなかった利尻岳ではあったが,戸田山好会の有志が2004年に利尻岳を予定しているので,花の時期の下見山行として雨の札幌を夜に出発した。石狩,増毛,遠別などの海岸約300kmをひた走り夜半に稚内港に着いた。

 最北に位置する日本百名山の一つの利尻岳1,721mは,単に山を登る者ばかりではなく,多くの善男善女を引き付ける夢の山でもある。台風6号が温帯低気圧となって北海道を過ぎ去った6月21日の土曜日,早朝の稚内港フェリーターミナルには,登山姿の者は少ないものの,北の最果ての旅情を求める多くのツアー客がフェリーの出航を待っている。


ハクサンイチゲと利尻岳

 午前6時30分発のフェリーは日本海を滑って利尻島へと向かうが,利尻岳は濃霧が立ち込めてその山容を見ることはできない。千葉と足立から来たという還暦を迎えたご婦人は,もう少し若ければリ尻岳にも登りたかったが,もうそれもかなわないので,今回は利尻島と礼文島を回っての花の旅だという。鴛泊の港が近づいた。さっそくタクシーに乗って登山口の利尻北麓野営場へと向かう。

 実質的な登山口の北麓野営場から,標高差1,500mの厳しい道のりが始まる。500m歩くと甘露泉という水場があり,冷たい水が湧き出ている。しばらくは樹林帯の中のハイキングコースといった道が続く。樹林帯を抜けるとダケガンバ,ハイマツ,ナナカマドの順に低木帯が現れる。長官山までの長い距離に展望はない。黒土の道は深くえぐられており,登山者がいかに多いかが分かる。コース全体にゴロタ石が多く歩きづらい。出発時は濃霧に包まれていた島も次第に姿を現し,途中雲がたなびく長官山が望める。長官山からは頂上に雲をいただいた利尻山が姿を見せるが,ここからは,頂上直下の険しい道は想像できない。


チシマフウロ

  利尻岳にあまりお花畑を期待してはいなかったものの,想像どおり花の数は少ない。標高1,300mになってもバイケイソウ,ザゼンソウが生えており,ヨモギやイネ科の雑草の類も多い。暖流の影響を受けているのかも知れない。

 礼文島に渡ったことのある人は,花を見るなら礼文島だという。標高1,500mの沓形コース分岐になってようやくハクサンイチゲの咲くのが見え,アズマギク,ボタンキンバイがほんの数輪見ることができる。ハクサンイチゲが咲く登山道から鴛泊港を見下ろすが,ガスで展望は悪い。沓形へ下りる尾根には雪渓が残っており,ピッケルにアイゼンが必要とのことであったが,雪渓をわずかトラバースすればよく踏み後もあるようだ。

 9合目からは火山れきの登山道で,急峻な登りとなることもあって慎重な足運びが要求される。ガスが稚内方面から次々と流れてきて展望はきかない。それでも,利尻島3回目の人が,「これでもいいほう。やっと利尻岳を見ることができた。」と言っていた。この時期,山が姿を現すのは2日に1回の割合だと地元の人は言う。


火山砕屑物で成り立っている利尻岳の崩壊は登山によっても増長されている

 北峰を利尻岳の頂上としているが,北峰から30分の南峰のほうが3m高い。頂上から一度下る南峰への尾根道には,ロープが張られ行く手をさえぎっているが,そこまでの間はハクサンイチゲの群落が広がっている。お花畑は扇状に大きく広がり,ハクサンイチゲとともにキバナシャクナゲが主体となっている。お花畑下部は切れ落ちて見えないが,岩が崩落し滑落している音が始終響き渡り,ゆっくりした気分にはなれない。


ひっきりなしに落石が起こっている頂上直下


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