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平標山 スズメバチ受難記
2009/ 9/21


 快適な山道


平標山への登山道から筍山を見る

 花の百名山「平標山」も紅葉までの端境期で、登る人も少ないだろうとFurenを誘って「平標山の家」泊まりの登山を計画した。山の家に連絡すると宿泊者は10数人とのことで、のんびり過ごせるようだ。シルバーウィークで大混雑の関越自動車道を月夜野IC経由、国道17号線三国街道を平標登山口まで走らせるつもりが、間違って「渋川伊香保IC」で下りてしまった。辛抱して一般道を沼田から三国街道に分かれ登山口に着く。数十台分ある駐車場は既に停める場所も少ない。


マツムシソウ

 登山口からは、少し行くと松手山からのルートと平元新道に別れるので、松手山へのルートをとる。直ぐ急勾配の林の中を歩くようになって、足元は丸太で階段が付けられているものの、我慢して登ると岩が混じる登山道となってくる。木々の背丈が少し低くなってくると木陰にフシグロセンノウ、明るいところにはマツムシソウが咲いている。


フシグロセンノウ


  スズメバチの襲撃?

 再び林の中に入って、そろそろ送電線が見えるころ、いったん休憩することにした。登ってきた道を振り返ると苗場スキー場がある筍山が見える。もう1時間も歩いており、ザックを下ろして水分を補給し、ついでにミニアンドーナツを食べようと、一口頬張る。景色を見ながらもう一口頬張ると口の中に枯れ枝が2〜3本同時に入ったような感触がする。おかしいなと手のひらに吐き出すと、スズメバチが蠢いている。口の中はバキバキといった感じで、痛みがある。スズメバチの針が口の左側に刺さって残っているようなので取り出す。

 では、また出発としばらく分ほど歩いているうちに、蚊に刺されたような腫れが一つずつ両腕に現出する。口の中には違和感が残る。そのうちに両腕に蕁麻疹が広がる。特に血管に沿ったところはミミズ腫れのような特大の蕁麻疹が出ている。両股にかけて非常な痒みとともに熱っぽくなる。口腔内の腫れは異常である。胸苦しくなり、試しに水を飲んでみるが無理して2〜3回落ち込むようにしないと胃に流れ落ちない。

 急激なアレルギー反応の現出に、ようやく下山を決める。まず、「119」番に通報する。「火事ですか、救急ですか。」との問いに「スズメバチに刺された。」と伝える。「救急車を出しますか。」と言うので、「自分で病院に行くので、休日診療をしている医療機関を教えてほしい。」と言って、湯沢町医療保険センターを教えてもらう。湯沢町医療センターに電話し、休日診療をお願いし、下山を開始する。相変わらず胸苦しいがあれこれ話しながら、ゆっくりと下りていく。診察を受けることから下着を取り替えてから、車を湯沢町に向け走らせる。

 医療センター

 湯沢の町は、多くの人出があってにぎやかだ。街を一周して医療保険センターを見つける。病院には警察官がいる。受付にスズメバチの件を言うと直ぐベッドに案内される。血中酸素と血圧の測定後、医師から刺されてからの時間経過、症状などの問診があり、その後、全身症状を見てすぐ抗アレルギーのための点滴が行われる。そしてこの女性医師から、アナフィラキシー反応、スズメバチの生態や刺されないための対処法などの説明を受ける。

 アレルギーをおさえ痒みを止める点滴及び処方薬は、急激な眠りを導入するので車の運転を禁じられる。30分ほどの点滴を終えると、医療保険センター窓口職員の懇切な道案内、テキパキした医師の診療と平易で要領を得た説明、看護師さんの献身的な対応などに感謝の気持ちとともに、休日ながら多くの患者の対応に忙しいセンターの皆様に感謝しつつ、そのままベッドで2時間ほど寝てしまった。この日、ベッドで寝ている間にスズメバチに刺された2人が受診したとのことであった。

 隣りのベッドには、山のガイドさんだという若い女性がいるようだ。ときおり泣いている。客を案内できないことに対するもどかしさなのだろうか、看護師さんに明日以降の仕事のことを話しているが、看護師さんから「お休みをいただいたらどうでしょうか。」と無理をしないように言われている。

 警察官は、医師や看護師に対する受診者の暴言で出動を要請されたようだ。自由をはき違えて好き勝手な振る舞いに及ぶ者が多く、触らぬ神に祟りなしなしでこのような行状が見過ごされる今の無責任社会で、毅然と法の適用を直ちに求める姿はまことに正しい。
 さらに平日に予約している診察を今日やれという要求が、別のやり取りが看護師さんと行われている。休日診療という緊急への対応から、一般診療を行うことができないという説明を丁寧に行っているが、相手は激怒している。

 スズメバチに刺されないために

 スズメバチは、黒い瞳、頭髪、衣類などに向かってくる特性があるとのことである。また、山中で甘い物を食べているとそれに飛んでくることは、今回の出来事で身をもって理解した。
 2回目に刺されたときのアレルギー反応(アナフィラキシー症状)は1回目を上回り重篤な症状を惹起するおそれがあるので、次の山からは、エピペンというアナフィラキシーの補助治療剤注射キットを携行しなければならなくなてしまった。

                        【スズメバチに関する参考サイト】
                   スズメバチの生態・対処法         「都市のスズメバチ
                   アナフィラキシー補助治療剤注射キット 「エピペン


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