[ HOME ] [ 2日目 ]

天祖山から酉谷山 紅葉の小川谷渓谷
2007/11/14〜15

2004年冬の酉谷山避難小屋の宿泊記録
2010年冬の酉谷山避難小屋の宿泊記録

(お知らせ)酉谷山避難小屋は、2010年初冬から使用できるようになりました。


(注意)酉谷避難小屋は、平成19年の台風9号の影響を受け、基礎部分が崩壊しており、使用禁止となっていますのでご注意下さい。
(詳細は奥多摩ビジターセンターのホームページ、または「山と渓谷」12月号参照)


日原川沿いの山の紅葉

                            11月14日

 今年の冬は山で雪遊びをしようと考え、その下見のため八ヶ岳の天狗岳に登って、本邦第二の高所温泉である本沢温泉の露天風呂に浸かってこようと計画していた。しかし、北岳でひいた風邪がすっきりとせず、長距離運転もしんどいことから、公共交通機関の便がある酉谷山
(とりたにやま)に目的地を変更し、平日の静かな小屋滞在(アルコール+本)を目論んだ。今回は、日原を起点に、天祖山〜水松山(あららぎやま)〜タワ尾根ノ頭〜酉谷山〜避難小屋(泊)〜七跳山〜三ツドッケ〜ヨコスズ尾根〜東日原の長沢背稜を縦走するコースを設定した。


八丁橋からすぐに急登となる

 平日の奥多摩駅午前8時10分発の日原鍾乳洞行きのバスは、発車までまだ27分もあるというのに、もう車内に空席はなく、発車時には通路も身動きが取れないほどの人で埋まった。乗客の半分以上は川苔山の登山口である川乗橋で下車し、終点の鍾乳洞では10人ほどが下車した。バス停前にある茶屋のご主人は「今日明日は天気が良くていい山歩きができるね。皇太子殿下も先月、雲取山から酉谷山を歩かれているよ。」と多少自慢げに話される。さっそく日原川に沿って登山口の八丁橋に向かって歩くが、山はちょうど見ごろの紅葉で飾られている。


巨樹と紅葉

 日原川に沿った林道をそのまま進み八丁橋を渡らずに行くべきところを、無用心に九十九折となっている林道を先に歩いている人を追うように進む。紅葉をカメラに収めているその男性から、「天祖山はこの道を行くんでしょうかね。」と聞かれ、「そうですね。」と答えたものの、地図の記憶では登山道の取り付きは林道がこのようにくねくね曲がっていなかったはずだしと、地図を出して確認する。「あれれ、八丁橋を孫惣谷に入ってはいけない。」直進だった。カメラ氏の姿はすでに見えないが、山登りの仕度をしていなかったから戻ってくるだろう。

 八丁橋から程なくすると、天祖山への取り付きとなる登山道標識があって、すぐさま急登が始まる。最初は登山道の幅も狭く、斜度もあって半端ではない。「奥多摩」、すなわち簡単なハイキングコースとのイメージを持って臨んだわけではないとは言い切れず、多少甘く考えていた。八丁橋の標高が約500m、天祖山が1723mあることから、その標高差は約1200mもある。テント泊装備からテントを除いただけの縦走装備はずっしり重いし、気温は13度もあって汗が噴出す。この間では、平成17年と平成18年の2年間で3人が滑落死していて、十分な注意が必要だ。


天祖山への稜線

 ところどころに石垣が積まれ、九十九折となった自然林の中の登山道をしばらく登ると、広い尾根道となって天祖山まで続く。天祖山に近くなると大きな樅の木が多くなるが、鹿による食害で枯れているものが多い。天祖山に天祖神社があるが、途中、社務所が2か所あって朽ちかけている。 

 天祖山の頂上、と言っても神社が一等地を占めているからどこが頂上なのかよく分からないが、頂上を過ぎると登山道はいったん梯子坂ニクビレに向けて急な下りとなっている。芋木のドッケ方向の稜線が迫っていて、その稜線に上がるにはこんなに下らなければならないのかと見えるが、次の目的地の水松山(あららぎやま)へは、わずかに登れば気持ちの良いなだらかな登山道をたどることになる。


長沢背稜

 登山道が長沢背稜に合わさると、そこは水松山の袂である。単独の男性が休憩している。「これから酉谷避難小屋に行きますが、どこまで行くのですが。」と尋ねると、「昨晩雲取山頂避難小屋に泊まって、私もこれから酉谷避難小屋に行くのですが、小屋は台風9号の影響で使用禁止になっているようです。一杯水避難小屋まで行こうと思ったのですが、昨夜小屋に泊まったと言う人によると、小屋には鍵が掛かっておらず、水も流れていると言うので今晩泊まろうと思っています。」とのことだった。


酉谷山頂上

 今日の日の入りは午後4時ちょっと過ぎであり、あと1時間もすると日が落ちる。一杯水避難小屋までは現在地からはあと3時間必要であり、暗いところを歩きたくはないので、緊急避難的に酉谷避難小屋のお世話になろうと先に進む。酉谷山までの登山道はあちこちで斜面の崩壊があったが、道は切り直されていて、歩行にまったく支障はない。酉谷避難小屋に泊まると決めたので、そろそろ陽も落ちるころではあるが今日のうちに酉谷山に登っておこうと道を分けて頂上に向けて登山道を登る。頂上の南側は木が切り払われていて、富士山の展望が得られるようになっている。


酉谷山避難小屋の窓から

 酉谷避難小屋に着くと、水松山分岐で会った男性Aさんと、75歳だと言う男性Bさんが先着していた。Aさんは奥多摩大好き派でマイナールートにも詳しく、奥多摩に入るといつまでも歩いていたく、必ず夕方まで山に入っていると言う。Bさんはかくしゃくとしていて、登山歴も長く、山域も国内各地から海外までに及んでいる。今でも正月には冬の燕岳に一人で登っているという。

 月に一度、地元の人が登ってきて清掃されているという小屋は、トイレも綺麗で匂いもなく、とても快適である。窓からの展望にも優れ、富士山も眺められる。焼肉を肴に、はこだてワインを飲みながら寛ぐ。潜り込んだ寝袋での睡眠はまことに快適で、起きてみたらもう朝5時を過ぎている。75歳のBさんはほとんど身支度を済ませていて、今夜は雲取山で泊まると言って出て行った。


(注意)特に天祖山から水松山に至る周辺には、ツキノワグマが多数生息し出没が頻繁だと言われている

[ HOME ] [ 2日目 ]

酉谷山 2007