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酉谷山避難小屋から大血川へと下る
2012/11/30〜12/ 1


酉谷山避難小屋


 12月 15日(土) 2日目  

  ぐっすり眠ったのでもう4時ごろかなと時計を見ると、まだ午前1時です。明かり取りのために細く絞って点けていたガスランタンの火が消えて、生ガスだけが出ています。再び眠りに就こうとしますが、夏用のシュラフでは、いったん目が覚めると小屋の中とはいえ寒くて熟睡できません。うとうとしながら4時になったので起き出し、米を炊くことにしました。メスティンでの炊飯も回を重ねるごとにいい炊き上がりになっていきます。何事も実践あるのみです。

 
いい具合にできました

 天気予報どおり南西方向から黒い雲が押し寄せ、小雪が舞い散り、小屋の周りの木々が音を立てています。それでも時間が経つにつれて風も弱くなってきて陽の光も射すようになってきました。小屋はトイレもとてもきれいに使われています。この小屋を利用する人はトイレも綺麗に掃除をして帰っていっているようですが、それでも「垂れ」「漏れ」を残していくのがあるのは致し方ありません。ということでトイレも懇ろにやります。小屋ノートの今年の分は、心無い人に破られてしまいましたが、それでも11月後半再開分からの記載を見ると、これまでのとおり小屋がきれいに使われていること、心遣いへの感謝の言葉が添えられています。 


朝の酉谷山避難小屋


抜群の綺麗さも皆さんの努力のおかげです

 小屋ノートの記載と言えば、12/9に宿泊した人は「東日原を9時30分に出て小川谷を歩いてきたが、落ち葉で登山道が分からず3か所で迷い、小屋到着が16時になってしまった。」と書いています。このルートは小川谷林道が通行禁止ということで入り込む人も僅少で、落ち葉の堆積に加え踏み跡もボケてきています。沢が分かれたとき、尾根を意表を突かれるように乗越すときなど、以前の風景が頭の中に残っていないと首をかしげるところがないわけでもありません。また、この1か月のノートによれば、最大宿泊人数は9人、小屋外の最低温度−10℃、小屋内の最低温度0℃となっています。「小屋に備えられたホッカイロなどを使った挙句、ごみを散らかしたまま。」なんていう記載も。それでもこの小屋に到着するたびに、「次に来る人にきれいな小屋を使ってもらいたい。」という「おもてなしの心」を持った人が大勢を占めていることに違いないと、ありがたく思うのです。


長沢背稜

 小屋を出るころになるとまた風が強くなってきたので、準冬支度で酉谷山を目指します。登りの踏み跡は氷化した雪で滑り易くなっており、雪のないところの土はカチカチです。特に酉谷山の北斜面は要注意です。寒々とした小黒の樹林帯を抜け大血川←→熊倉山分岐への自然林の明るい尾根を下ります。


酉谷山

 どうも昨晩の寒さを引きずって体が温まりません。ぎこちない体勢で大血川分岐から先の急斜面を恐る恐る下ります。体が臆病になると、ここはこんなに急だったのかというほど恐々とします。小屋ノートでは、このルートを3時間40分で登ってきた人の記録がありますが、同じ時間かかってやっと下りられそうです。


鹿の食害の深刻さが如実に表れている

 途中の山の中で面白い光景を見ることとなりました。今、秩父の山で禿げていないところ(草が生えているところ)は皆無といって過言ではありませんが、1か所、ネットで囲んで植生を保護しているところは、草が生い茂っています。これほど鹿の食害がひどいということですが、そういえば、今回、某所にイワウチワの植生があったのですが、個々の株はとても小さいのです。鹿が喰わないとすると踏み付けなどにより個体の矮小化を余儀なくされているのでしょう。「植生の保護のために指定地以外での幕営禁止」という御触れが稜線にあります。「排便排尿などによる山の環境の悪化」を理由とするのなら多少は理解できるのですが、それとても鹿の糞だらけの山では植生保護などという理屈も立たないでしょう。しかし、鹿の食欲は恐るべし!


炭焼き小屋

 下山後は、帰路の逆方向に向かって走り、「道の駅大滝温泉」へ。施設の清潔さと湯船の広大さは秀逸なこの温泉で、冷えた体をすっかりと温めます。いつも立ち寄る地元産の野菜と果物がお気に入りの「道の駅果樹公園あしがくぼ」では、生産者が秋の高温が原因でトマトとキュウリの種まきに失敗し来年2月までは出荷できないというのが、今回の秩父行の心残りの一つだったのでした。


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