[HOME][2日目][酉谷山避難小屋訪問記録一覧]


宗屋敷尾根から酉谷山避難小屋
2012/ 4/ 6〜7


地図+コンパス+高度計+GPS=ソロで初めてのバリエーションルートを選ぶ


 4月 6日 (1日目) 

 秩父の山にシロヤシオツツジやアカヤシオツツジが多いということは、2010年大ドッケから大平山に登って知ったのです。しかし、そのツツジがマイナールートゆえ入山を躊躇せざるを得ない熊倉山宗屋敷尾根から聖尾根にかけてが多いということで、いつかは歩いてみたいところです。ちょうど、とあるMLでGPS不要論の話題が沸騰している最中であったことから、今回はツツジの時期の下見として、宗屋敷尾根を熊倉山〜酉谷山の稜線まで登って、この道迷い事故の多い山域でついでに地形図とGPSの両方の特性を体感することとしました。なお、松浦隆康著「バリエーションルートを楽しむ」を参考にし、下山後改めて読み返すと、その過不足ない描写に驚かされます。


参考:大平山で (2010) 

 武州日野駅で下り、まずは駅裏のカタクリ群生地に出向いてごあいさつします。まだ朝早くだったのでカタクリもアズマイチゲも花弁を閉じたままですが、もう希少な花となったカタクリがご無事であることに安堵し、宗屋敷尾根の取付きに向かいます。この地域では、昔の斜面が残っているところにはカタクリが花を咲かせていますが、その場所や画像は割愛して先に進むことにしましょう。 

 武州日野駅で

 荒川日野の集落から寺沢の集落を経て送電線を越えるまで林道を歩きます。途中、集落の人と朝のごあいさつを交わしながら歩きます。秩父の集落はどこでもそうですが、みなさんが声をかけてくれますので、よそ者がその土地を通過するときは先んじて元気に明るくあいさつすることをお勧めします。寺沢のニリンソウ群落地を過ぎたところに「和味」という蕎麦屋さんがあるのですが、そのおかみさん(?)からは、「いい天気になったから山歩きにはいい日ですね〜。」なんて先に声を掛けられてしまいました。 


この繊細な目印を秩父の他の尾根でもよく見かける

 宗屋敷尾根の取付場所は安谷川林道途中の「林道行き止まり」の案内板があるところ、尾根が「森林管理道 秩父中央線」によって切り通しとなっているところを右手に見やりながら、そのままほんの少し進んだところです。そこにはテープなどは巻かれてはいませんが、バリエーションルートを楽しむ人なら気付く程度の踏み跡が右手後方に登って行くようにあります。尾根に乗ると上部の鹿除けネットに付けられていたと同じ緑色の細い毛糸が結び付けられていました。


1003mの祠

 いったん尾根に取り付くとあとはせっせと登って行くだけです。途中は植林地のありきたりの風景で、難しいところもまったくありません。680mあたりで初めての鹿除けネットが左手に、800mあたりで右手にネットが見えて視界が開けます。この右手のネットは880mあたりまで続いていて、寺沢集落やゴルフコースが見渡すことができます。その先でいったん990mの顕著なコブを越えてまた登ると1003mの祠です。秩父の道の駅ではかつてイワウチワが売られていたことがあるのですが、標高のある北向きの岩場でちょっと湿っぽいところはどこだろうと疑問に思っていました。その場所の一つがここだったということが分かったのが収穫でした。ここまではそんなお気楽な尾根歩きですが、ここを過ぎるときちんと地形図を読んでいく必要があります。 


蝉笹手前の岩稜を宗屋敷尾根ルートの上部から俯瞰する(右手下から登りあがってくる)

 それは花見の時はこの尾根を下りに使う予定なので迷いやすそうなところを地形図と照らし合わせ、かつ景色を覚えておくことです。地形図の1003mと1284mの間には、1284m寄りに地形図上顕著なコブがあります。そこから1284mに登り切るのですが、1284mから下りてくることを考えると、1003mに出る尾根が1284mから東南東に延びる尾根の方が優勢で、1003m方向の尾根に乗るにはいったん1284mに延びる尾根の左腹を下って行かなければならないという重大な道迷いポイントであることが分かります。宗屋敷尾根を下った人の記録を見ると、ここで迷っていることが分かります。


熊倉山からの稜線に出る直前のトラロープ

 次のポイントの蝉笹の手前の岩稜帯では、岩稜の左側を大きく弧を描くように回って登り詰めます。ここは赤テープが頻繁に誘導してくれるので、途中から斜面を右に登り気味にルートを取ることを怠っても、左手のV字形の沢が尾根に引っ張って行ってくれる(それがおかしいことだと気付く)ので、あまり難しいことはないでしょう。ここから急登を我慢するとトラロープが張られた岩に出合い、すぐ先が熊倉山〜酉谷山の稜線ですが、「乙219」と書かれた石柱があるのでいい目印になります。


この樹木が低木の藪に変われば日高の稜線と同じでしょう (シラカケ岩から)

 蝉笹から進路を酉谷山に向けてシラカケ岩で大休止します。武州日野駅を出発してからここまで5時間を要しました。ようやくランチタイムです。ここから見る長沢背稜には雪がびっしりと張り付いていて寒々しい限りです。あ〜、こんなに下りて檜岳に登り返し、また小黒へ登って・・・・。日が傾いて来て気温も数度しかなく先に進むのに気力が充実してきませんが、腰を上げざるを得ません。


 酉谷山へもう少し

 檜岳(1451m)から小黒(1650m)に向かいますが、途中大血川への分岐前後でスズタケの中を歩き、小黒へは今回は直登します。もうこのころはテープがべたべたと屋上屋を架すほど巻かれていて煩わしいばかりです。なかでも荷造り用の紐だけは勘弁願いたいものです。同じことをするのでももっと心を込め、見た目にもきれいにしてくれるといいですね。


陽も落ちかけたころにようやく酉谷山避難小屋へ

 小黒の頂上からは右手(南南西)に回って急下りです。ようやく酉谷山を目前にし、雪の残った斜面を登ります。檜岳あたりからの雪の残った北斜面に新しい足跡が一人分あったのですが、この足跡は酉谷山から酉谷山避難小屋方向に向かっています。ようやく着いた小屋には人はいなかったのですが、板の間に水がこぼされていて、土間には水が溜まっています。


月がとてもきれいな夜でした 酉谷山避難小屋からの夜景

 さっそくシュラフを広げいつでも寝られる態勢にしてからビールと秩父錦で落ち着きます。メスティンでご飯を炊くつもりでしたが面倒になったので、氷で傷まないように持ってきた焼き肉だけにします。食事を終えたころには夜景が見えるようになっていました。冷やされた体をシュラフに滑り込ますと、あっという間に眠ってしまったようです。やはりこの歳には8時間30分の行程は相当な負荷となっています。

 このコースは非常にタフなところです。2011/4/15〜16に熊倉山から登っていますが、「ここはペテガリ岳・・・」と書いてます。宗屋敷尾根〜酉谷山も同様の感想です。それよりなにより、地形図やGPSなどを用い道迷い遭難にはくれぐれもご注意ください。この山域の尾根を下りに使うには、一度尾根を登りに使った上で行うことを強く強く推奨します。


[HOME][2日目]