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タワ尾根〜酉谷山避難小屋を往復 (2015)
2015/ 7/ 4〜5


酉谷山避難小屋


 7月 4日 (土) 

 7/3〜6の日程で奥胎内ヒュッテから飯豊山を往復する予定でいたが、種から育てた家庭菜園の収穫間近の熟したトマトが根こそぎ盗まれてしまって精神的にめげてしまったこともあって、縦走は中止することにした。わずか3坪ほどの菜園の半分を占めるトマトは40本で、連作を繰返しているが、今年もたわわに実ってくれたのだった。

 山に行ってしばらく留守にするからと収穫のために菜園に行ってみると、紅く色付いたトマトはことごとく取られていた。まさに根こそぎと言う言葉がふさわしいほど盗人にやられてしまった。自分が被害にあってみると如何にこの社会に野菜泥棒が多いかということを聞かされ、野菜泥棒というよりそもそも泥棒癖のある人間がこの社会には一定の割合で存在しているということを身に浸みて知るのだった。


これが根こそぎ・・・

  山登りの行き先を飯豊山としていたのは、梅雨の時期にもかかわらず晴れマークが鳥海山とともに出ていたからだったが、山行予定日が近づくにしたがって雨マークも織り込まれるようになり、せっかく休暇を取っていたにもかかわらず行く気がしなくなった。家で1日目を無為に過ごしていると体がムズムズし出して休暇ももったいないと言うことで、1日目の午後、2日目は全日雨マークではあったが、それを承知の上でタワ尾根を往復することにした。


雨に煙る酉谷山避難小屋

 タワ尾根を登って見て驚いたことに、最近括り付けられたと思われる「せこい」荷造り用のピンクのビニール紐以外のテープや方向を示すプライベートに付けられた標識、尾根迷い込み防止のための虎ロープも一部取り払われていたことだった。それはそれは見事な清掃の仕方で、これほど敵意剥き出しで全部取り払うことはないだろうと思うほどであった。言葉を変えればそのやり方は病的と言えるほどだった。特に、下りで迷い込みそうになるところ(金袋山から下りてしばらくしたところ)に長い間あった彫刻された「東日原」への道しるべ(ここにはトラロープも張られていた)を取り去ったのは、いくら潔癖症の人とは言えあまりにもやり過ぎだろう。ウトウの頭から大京のクビレに下りるところの赤テープもなにもかもなくなった。


小屋前のヤマオダマキ

  自身、タワ尾根や小黒、矢岳方面に乱雑に付けられた赤テープの類には辟易させられている。自然林の中のおびただしい数の赤テープの類は美観を損ねること著しい。それでもそのような目印があってもいい場所は存在し、何度もこの界隈を歩くことのできない人の助けになっている。そのように不要と思ってもその必要性を認める必要があるテープや方向指示板も存在するのである。この掃除人は、長沢背稜から下りてきて篶坂ノ丸に下りるときに尾根を変えるための目印として重要な虎ロープと「東日原」の小さな方向指示板は残しつつ、少し下りたところの彫刻された年代物の「東日原」方向を示す標識は取り去っている。これはもう病気の世界で考えないと理解できない行為である。 


水場に咲くヤマオダマキ

 そんなことを思いながら湿度100%のタワ尾根を黙々と登って行く。ときおりガスが立ち込めて小さな雨粒も落ちてくるがレインウェアーを着るとかえって体が濡れてしまいそうだ。金袋山で軽い昼食を摂っただけで、あとはただ前に進むのみ。こんな予報の日なので、週末の土曜日ながら出会う人はいない。誰も訪れる人のいないであろう酉谷山避難小屋で一夜を過ごすためのアメニティ(酒と肴と読み物)をザックに忍び込ませている。もう少しで小屋というところで大粒の雨が落ちてきたので雨衣の上だけを羽織って小屋に向かう。戸を開けた小屋には誰もおらず、目論見どおりであった。

水場は順調

 先客がいない酉谷山避難小屋の戸を開けた途端、驚いた。あまりにもきれいに清掃されている。板の間はワックスがかけられていて床がピカピカと光っている。トイレをのぞくと「トイレバイオ消臭剤」が5箱も置かれていている。無論、不快な臭いなどが漂っているというようなことはない。世の中には根性も性癖も悪い人も一部いるが、もの言わぬ善良な人々が絶対的多数だろう。この小屋の使われ方、愛され方を見て見ればよく分かる。(ハンガーを折り曲げて使う者、洗濯用ピンチを外で使って放置すればどのようなことになるか分かることのできない者もいるのは仕方がないことだ。) 

 
ピカピカです。

 そんなことを考えながらまだパッキングも解かず、今日の小屋に馴染んでいないときに、人の気配がした。鳩ノ巣から川苔山を登って来たという単独の男性であった。雲取山でテントを張る予定だったが途中雨に降らるなどして酉谷山避難小屋で宿泊というこの人と、その後話が盛り上がって酒を酌み交わしたが、彼がまだ夕食を食べてもいないとき、シュラフの中で一瞬のうちに夢の世界に入ってしまった。


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