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シマリスも小鳥も迎えてくれた 秋の羊蹄山
2004/10/ 6
〜7



収穫の秋を迎えた羊蹄山麓

 ピパイロ岳から幌尻岳までの縦走の足慣らしを兼ね羊蹄山に登ることとした。これまでこの山に登らなかったのは,100名山とされていることと,羊蹄山が蝦夷富士とも呼ばれていることに起因する。日本を象徴する山でありながら,富士山には,登山道に散乱するゴミ,植物層の貧弱な火山レキに覆われた山とのイメージがあって,百名山の羊蹄山にも同様の思いを持っていた。

 しかしながら,羊蹄山の9合目には避難小屋があって,午後から登って日の出を見るのも乙なものと考え,真狩コースから登ることとした。羊蹄山は高山植物も豊富で,山頂一帯と倶知安コースが高山植物帯として天然記念物に指定されていることも下山後に知ったが,真狩コースの登山道周辺の植生を見ると,ここにも,季節にはそこそこの高山植物が見られる感じがした。

 真狩コースの登山道は,羊蹄山自然公園のキャンプ場の奥から植林されたトドマツの中への急登へと延び,2合目を過ぎると次第に天然林を縫うようになる。天然林は,低からず高からず,周囲の景色を眺めることもでき,また,夏場は適度に太陽を遮ってくれそうないい感じである。

 登山口出発が遅くなり午後3時となったことから,やっと十分な展望がきく7合目に着いたころは,すっかり夜の帳が下り,ニセコ,真狩市街,洞爺湖などの街の明かりがきれいに見られる。東にある尻別山方面からは霧が立ち込めてくるが,それを真狩市街当たりで西風が押し返している。        


花の山 尻別岳

日が沈んで急激に気温が下がり,しっかり防寒対策をして羊蹄山避難小屋を目指すが,濃霧に包まれ携帯電話のGPSで現在地を確認して進むと,程なくして小屋から漏れてくる明かりが見え,石炭ストーブで暖を採っている温かい小屋に入り一息つく。

小屋には,管理人のほか若い女性を中心とした登山者が7〜8人もいて,女性たちは頼もしくもビールの空き缶をたくさん脇に積んで,話に花を咲かせている。

翌朝,まだ日も明けやらぬうちに小屋を出て真狩コースに戻り,お鉢を時計回りと反対に喜茂別コース方面へと向かう。昨晩の最低気温は氷点下5度で,登山道には霜柱があり,お鉢の周辺の木や岩には樹氷が着いている。


早朝の喜茂別分岐

反対側のお鉢の北山には,数人が登っていて,朝日を浴びている。太陽が上がってくるにしたがって,ニセコの町に影富士がのびていく。

羊蹄山最高地点で尻別山を眺めながら1898mで簡単な食事を済ませてお鉢周りを再開し,真狩コースを下山する。適度にジグを切った登山道を快調に下りて,中間地点の大木の下で休憩していると,シマリスが登山道に現れ,程なくして小木に登ってじっとしている。


こんなに口がふくらんでも足りないぐらい・・・

 口には一杯の木の葉を蓄え,頬も満杯に膨らんでいる。もうそろそろ雪の季節,春までの餌を運んでいたところで人と出合ったものだから,フリーズしたとでもいのであろうか。


横からも一枚

こちらが動かなければシマリス君も動かないといった状況だったので,そろりそろりと下山し始めると,シマリス君は木立の中に姿を消していった。平穏な秋の陽だまりの中の,なんとも形容詞しがたい時間であった。


もうポーズはいいかな〜

登りの時は,この脇の木の梢に1羽,2羽,3羽と順番に小鳥がまるでこちらの様子を見るように下りてきて止まり,ささやきあっていた。先入観だけでこれまで足が向かなかった羊蹄山ではあったが,登山道よし,景観よし,小動物との出会いありと,2004年の想い出に残る山の一つとなった。


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