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北戸蔦別岳〜幌尻岳(往復) 
(2012/10/ 6〜8)


七ッ沼の咲き残りのミヤマアズマギク


 10月7日(土) 

 いやはや、すごい夜だった。気圧の谷が通過中ということで、テントは揺れに揺れた。そしておまけに雨がバラバラとテントを打ち付ける。それでもシュラフに包まって温かい体は心地よく睡眠を貪る。外で男女の話し声が聞こえる。まだ夜明け前、それも午前4時。この時間に頂上にいて不思議のない人たちと言えば、昨日北戸蔦別岳頂上のテント場の確保が成らなかった道内のお二人だ。間もなく幌尻岳方向に行ったようだ。テントの換気口から見る外は濃霧なるも、天気予報からすると日中は晴れるだろうからと起き出して、幌尻岳往復の準備をする。外気温はマイナス2℃。


林道からヌカビラ岳

 テントの外は地面が凍っている。外気温マイナス2度。風は日高の海側から滅法強く吹き付けている。ヘッドランプを点灯して北戸蔦別岳の南斜面を下りる。幌尻岳の肩を登るヘッドランプが見える。戸蔦別岳への登りの道は踏み跡が広がって、植生の場を脅かしている。戸蔦別岳の頂上も可哀想なことになっている。展望を得ようとして狭い頂上広場の周囲をぎりぎりまで前に出るから、ミヤマキンバイの群落があったところの土が削り取られ、石が剥き出しになっている。これから春先に登る人は可哀想、こんな姿にはもう二度とお目にかかれまい。(2008年6月の戸蔦別岳頂上。周り一面がキンバイソウで飾られていて、それはそれは見事だった。


昔昔、北戸蔦別の頂上はキンバイソウに覆われていたんだって!(2008)

 (ヌカビラ岳の登山道に咲いていたカムイコザクラも踏まれてしまって跡形もないが、そんなものだろう。管理の主体がないところ、あるいはあっても太古の昔から営々と保たれてきた植生の価値を知らない当事者にはまったく痛痒を感じない。)


七ッ沼と肩

 七ッ沼への下降点に近づくとガスが取れてきたものの、幌尻岳の肩から上は厚い雲に覆われている。前線が通り去るまでは我慢と、風に吹かれガスに頬を濡らし肩へと登る。肩に着くと、上は見通しが利かず、ただただ幌尻岳を目指して歩くだけだ。稜線と十勝側の道が輻輳するところがあって、風下を歩くとまったく風の音も聞こえない。

 


いいね〜!見えるのは頂上標識だけだけど!

 頂上には早くに出発したご夫婦が到着していて、ガスに濡れながら休憩している。まだ朝と呼べる時間帯だが展望のない頂上を早々に辞し、七ッ沼のカール壁を下りることにする。カール壁のカムイコザクラの植生を確かめることと、この時期に水が間違って流れ出ていないか見るためだ。


肩寄りの七ツ沼への下降ルート

 七ッ沼への下りは急峻だ。と言っても気を付けて下りればいいだけなので、カール壁を注意深く観察しながら下りる。結論は、このルートにカムイコザクラの植生はなく、あの時に稜線から見たものはもっと先だったのだった。


エゾノオヤマノリンドウ

 七ッ沼に下りてちょろっとでも水が出ているところはないか探す。干からびた沼、わずかに水の残っている沼には、エゾシカとキタキツネの足跡が無数に付いている。1か所、テント場から戸蔦別岳寄りのルートに至る踏み跡の南側斜面に水が染み出てくるところがあって、十分な水がたまっているところがあったが流れと呼べる水流はないので、あくまでも非常時に煮沸して利用するのが関の山と見えた。


たまにこんなところも

 七ッ沼の戸蔦別岳寄りからカール壁を登り、戸蔦別岳の頂上でコーヒーを淹れようとハイマツ帯に出ると風が強く吹き付けている。いったん七ッ沼への下降点に戻り、ハイマツに守られた日当たりのいいその場所でコーヒータイムとする。あまりにも居心地がよく、まさに天国のような場所だったので、長逗留を決め込む。そのうちに頂上のテン場のお隣さんも七ッ沼から上がってきたので、あれこれ山の話をするなどし、また一人に戻ってのんびりしていると2時間も経っていた。


戸蔦別岳から七ッ沼カールと幌尻岳

 いくらなんでももうそろそろテントに戻ろうかと、戸蔦別岳に登る。頂上で、踏み込まれた植生の周縁にサークルストーンのように石を並べて見る。何の役にも立たないだろうが自己満足だけは得られた。1881m、幌尻山荘への分岐標識がへしゃっている。その先の岩場を乗越し、先を見るとハイマツに守られて3人が一息ついているように見える。3人に追い付くといずれもご妙齢の女性であった。沢靴を履いているところを見ると、戸蔦別川を遡行してきたのだろう。お疲れのようであった。


眺めよし! (奥に1967峰 その右にピパイロ岳)


何があっても張ることができるのは2張りのテントだけ 


戸蔦別岳と南日高の山脈を背に受けて 極上のテント場で

 北戸蔦別岳へ戻る途中、ヌカビラ岳へ向かうルートの頂上直下にテントが2つ張られている。また、1856のピークにも1張りあって、こんな様子は今まで見たことがない。myテントは強風に耐え待っていてくれた。まだ陽は高いが、シュラフに潜って文庫本を広げる。夕闇が迫ってくると、十勝や日高の街の灯りが煌めく。


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