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カールはヒグマの宝庫!
エサオマントッタベツ岳〜カムイエクウチカウシ山縦走
(3日目)

2007/7/17〜21


 3日目 7月20日 (晴れ) PART1 


ナメワッカ分岐の夜明け

 午前4時、ようやく目が覚めた。既に外は明るくなって十勝側から日が昇っている。今日も雲海は取れないようだ。今日はカムイビランジとの対面の日である。朝食もそこそこにテントを撤収し1831mを越え様と思う。ナメワッカ分岐のすぐ先の鞍部の十勝側の草がなぎ倒されたようなテラスを見ようとするが稜線からの道は見つからなかった。日高側は砂地が現れているが、熊の足跡がたくさんあって、この付近は他のテン場以上にヒグマの行動が稜線に近いことが窺われる。


厳しい岩稜に咲くチシマギキョウ

 岩場の稜線が続くが、目的とするピンクの花は見かけることがない。やはり今年は花が遅れているのか、それとももともと時期が早いのか、いずれにしてもまったくもって残念である。その代わりとは言えないだろうが、岩場にチシマギキョウが朝日に向かって咲いている。


左右切れ落ちた稜線 奥にカムイエクウチカウシ山

 1831mから春別岳への稜線は、細い岩稜帯にもハイマツが覆いかぶさっていて、道は概ね日高側についているが、足を滑らせると取り返しが付かないような場所が多い。


いずれも咲いたばかりの花々(日高側)

 そのような岩稜帯だから、あまり多くの花を見かけないが、写真のようにエゾノハクサンイチゲ、エゾザクラ、ミヤマダイコンソウなどが混在しているミニ庭園があるし、1か所、カムイコザクラが岩場の隙間に張り付いているところがあった。


幌尻岳〜七ッ沼〜戸蔦別岳〜ピパイロ岳を遠望する

 1831mを振り返ると、その尾根はゴツゴツした岩場で占められ、結構険悪であることが分かる。日高側の斜面にはエゾノハクサンイチゲ、十勝川にはキンバイソウ類が見られ、岩場にチシマギキョウ、登山道周辺にイワブクロが咲くほかは、特段の植生は見られない。


春別岳のテント場が左下に見える エサオマントッタベツ〜札内JPからの稜線

 十ノ沢カールはカール壁の植生が豊かそうであり、春別岳に到着したのは午前6時30分ごろと早かったことから、このカールにもヒグマがいるだろうと思ったが、意外にもヒグマの姿は見かけなかった。春別岳頂上のテン場は頂上から少し北に下りたところにあって、夜間ここに到着したときは、どこにあるのだろうと戸惑うかもしれないが、あわてずに探せば程なくして見つかるだろう。


1917m〜1903m〜カムイエクウチカウシ山に続く稜線

 今日は、九ノ沢のカールで水が取れれば八ノ沢まで下りることなく、カムイエクウチカウシ山の手前のテン場または頂上のテン場にテントを張ろうと思う。それには1917mを越えて九ノ沢南カールの状況を把握した上、水が取れれば1903分岐を越えていかなければならない。

 あまり後ろを振り返っても仕方がないが、エサオマントッタベツ岳やピパイロ岳、北戸蔦別岳などは遥か遠くに認められるようになって、北日高の深淵に達したとの感慨を覚える。さあ、前に向かって進み、新鮮な水を汲んで明朝のピラミッド峰の登りに備えなければならない。進行方向に見える九ノ沢南カールの鞍部は下りやすそうで、雪渓もほどほどに残っていて条件はよさそうだなと思った、そのときである・・・・。


活発に餌を食べているヒグマ

 先しか見ていなかったカールの手前草場の斜面で、ヒグマがバッサバッサと樹木を抱えるようにして採餌している。風はカールから吹き上げていて、稜線で鳴っている熊鈴の音は聞こえないようだ。そのうちヒグマは、雪渓に向かい右後ろ足を上げて放尿すると、雪渓から流れる水を飲み、そして雪渓に体を預けて動かなくなってしまった。

 この時点で水は1リットル残っている。カールに下りる鞍部はヒグマが寝ている場所からは離れているが、人間に気付いて走ればあっという間の距離である。ここで敢えて無理をして事故を起こしてはならない。まだ時間は10時を過ぎたばかりであるが、残っている水で十分八ノ沢カールまで足りることができると判断して、ヒグマには刺激を与えないように1903分岐へと向かう。


チングルマは少なかった

 1732m先の急降下する道を折り、ヒダカゲンゲが咲いている1903分岐へのなだらかな登りを経て十勝側の斜面に出ると縦走中初めてのチングルマを見る。


明るい九ノ沢南カール

 その先の谷底にも雪渓が残っていて、下りようと思えば下りられるだろうが、いったん下りてしまってヒグマが出てきた場合、自分には対峙の方法がないから、様子を見ながらここも通過して進む。


左奥に北戸蔦別岳 右奥にエサオマントッタベツ岳

 ますます空は晴れ渡り、青い空、日高の山肌の緑、辿ってきた稜線のゴツゴツとした岩場を見ると、ますます気力が充実して、やっと自分は日高の山に受け入れられたのだなとの思いに至る。


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