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カムイビランジを探しに!
エサオマントッタベツ岳〜カムイエクウチカウシ山縦走

2008//29〜8/1
(3日目)


 3日目 (7月31日) 


カムイビランジ


 早朝から、雲が日高側から絶え間なく速い速度で流れてくる。天気予報は、沿海州に低気圧があって東進し、渡島・桧山地方に気圧の谷があって天気は下り坂に向かっている、と伝える。今夜は日高にも降雨があるようだが、総量は5mmと少ない模様なので、予定どおり八ノ沢カールで水を汲んでピラミッド峰の先に進み、コルでテントを張ることにしよう。


1791mへの登路

 縦走3日目の朝は、午前4時40分に出発する。ここからは切り立った尾根が主体となる。滑落した場合は、停止することが極めて困難な場所ばかりだ。最新の注意を払って尾根を次々と歩いていくが、かといって極端にスピードを落とすわけにもいかない。危険なところだが、好きな場所でもある。


1791m

 今日は体調がそれほどよくないようだ。荷物の重量感が肩に感じる。しかし、尾根歩きは順調だ。天気も回復してきて見通しも利く。1791mを越え、急峻で狭い北面を登って1917mに着き、少し休憩を取って1732のコルのテン場に向け下る。南面の岩場や登山道にチシマギキョウが多い。そこからはどっしりと安座したカムイエクウチカウシ山が見渡すことができる。大きな岩を巻いてカムエクが見えるところまで下りると、その岩場に取り付いたチシマギキョウがやけに綺麗で、思わず見とれてしまう。さて先に進もうとするが、足場が悪いので岩に手をかけなければならない。と・・・、その手の先の岩の割れ目にカムイビランジがひと塊あるではないか。


幌尻岳

 これまで、日高山脈にしか咲かないカムイビランジの植生は、春別岳、ピラミッド峰とペテガリ岳だと言われてきた。今回もここまで、岩の割れ目には十分な注目を払い、カムイビランジはないかと探し続けてきた。そしてついに4番目の植生があった!なんという幸運であろうか。これはもう、来年も来るしかないか。


1917mからのカムイエクウチカウシ山

 冷めやらぬ興奮を引きずって1903mの分岐を過ぎ、すでに時期遅れとなって目立った花もない1730mのテン場までのお花畑を淡々と進む。カムエクはその姿を次第に大きくするが、次第にガスが沸いてきて、カムエクはもとより、周囲の景観をすべて覆い尽くす。カムエクの頂上には11時30分には着くが、展望がないので少し胃を満たしてから1700mを目指す。ガスで曇って稜線は1本しか見えない。ハイマツに続く踏み跡がだんだん薄くなる。草場に抜けてみる。稜線に続く明瞭な踏み跡があったはずだ。

       道迷いの原因

 当日は、濃霧がかかってまったく見通しが利かなかった。カムエクの頂上からかろうじて見えるのは、テントサイトの様子だけであった。

 左の画像の人物が登ってくる道は、エサオマントッタベツ岳から上がってくるときの登路だと錯覚して、八ノ沢へ下る1700mへの道が、不覚にも、この明瞭な踏み跡だとは思わなかった。

【重要】
 頂上から見えるこの道が八ノ沢に下りるときの道である。

【お礼】
 この画像は、パッポ隊長のお許しを得て使用しました。


 「おかしい。」 その先に見えた「登山道」というのは、ヒグマの掘り返しの連続がそう見えたのであって、道に迷ったようだ。GPSで1700mを探ると、尾根を間違えて、南西に派生する尾根の左側、コイボクカールの斜面を下ったようだ。40分のロスの末、カムエクの頂上に戻る。ここで、迷った原因と1700mへの明瞭な登山道を探す。1903mの分岐からカムエク頂上直下のテン場を経て頂上に立ったが、そのテン場へは頂上から見て左側から来たのに、頂上からテン場を見てテン場の中央を貫く1700mへの明瞭な道を、1903mからの道と見誤っていたことが原因だった。訳もないことだが、ガスで見通しが利かないことと、先入観で、思わぬ時間を要してしまった。しかし、未だピラミッド峰の先で幕営する計画であることに変更はない。


1917m先のコブから1903m分岐


ときめきの岩

 1700mへと進むと、男性が登ってくる。ガスが濃く、降雨に遭ったように濡れている。聞くと、テントは八ノ沢の出合にあるという。時刻は13時になろうとしている。まだ先の1700mからカールに下りて水を汲み、また登り返すだけで2時間は必要だろう。ガスは濃く、ピラミッド峰のカムイビランジは見ることはできても、快適な花見とはいかない。今日はこれが潮時かな、八ノ沢カールに下りて幕営するのが順当だなと判断する。この男性は、これから頂上を往復するという。この濃霧で八ノ沢を下るのは大変だろうし、たぶん時間切れで夜間の下山となるだろう。「八ノ沢カールにテントを張りますから、停滞するのであればどうぞテントを使ってください。」と伝えると、「そのときはよろしくお願いします。」とのことだった。その後、もう一人の男性も登ってくるが、挨拶にも反応がないし、自信もみなぎっているようなので、それ以上の声かけをしなかった。


八ノ沢カール

 八ノ沢カールの慰霊碑の脇にテントを張り、カールから流れてくる水を汲んで入れた紅茶に、ウィスキーをたっぷり流し込んで飲み、すっかり寛いでいるときに濡れ鼠となった男性が、もう一人の男性を追うように下りてきて、テントを訪ねた。もう午後3時になったときだった。
「このまま下山しますので、挨拶に来ました。」とのことだった。暗くはなるが4時間もあれば下りられるだろうから、それもありか・・・。
 天気予報は、明日から天気が下り坂に向かうというが、朝起きたときに天気がよければピラミッド峰に登り、カムイビランジを見て、その後を判断しようと、のんびりしていたことを考えていた。カールに人の気配も、動物の気配もなく、今日も午後8時には爆睡する。


[4日目]

場所 所要時間
春別岳 04:40
06:40 1917m 07:00 150分
08:30 1732mテン場 08:30 90分
09:45 1903分岐 09:50 75分
11:30 カムエク 12:00 100分
12:40 カムエク 12:40 40分
13:20 1700m 13:20 40分
13:40 八ノ沢カール 20分
総歩行時間 8時間45分