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カムイエクウチカウシ山〜コイカクシュシュサツナイ岳縦走
2009/ 7/27〜7/31


 4日目(7月30日)


1643m手前の強固なヤブ

 夜半からの雨はまだ止まない。しかし西の空は明るさを増してきてるので、雨が上がったあと数時間天気は持つだろう。テントの中であらかたのパッキングを終える。3度の防水スプレーで備えたヌバックの登山靴も昨日のカムエクとピラミッド峰歩きで濡れ鼠となっている。今日はその靴も本格的に浸水するだろうし、すべての衣服も完全に濡れてしまうことを覚悟し出発する。(07:40)

 
1643mからのカムエク

 1823峰から下り、1643m手前のコルにテントを張ることができるスペースがある。1823mからは1時間と少しの距離であるから、1823峰の頂上が塞がっているときの代替として使うことができる。さらに1643峰に登ると傾斜面ながらテントを張るスペースがあり、実はこの場所では日高三股さんが2000年にテントを張っている。(リンクはmyブログへ)


1444m先標高1500mのポコ 一張り分のテン場あり
 

 1444mから少し登ると高度計は1500mを指している。思いもよらずこのポコにも一張り分のテン場があって、何かのときに利用できる。そろそろ空が怪しくなってきて、冷たい風が吹き付ける。まず、合羽の上着を着るが、雨が激しく降ってきて、体も冷えてくる。しばらく経ってから合羽のズボンを履き体温の低下に備える。帽子はメッシュからゴアテックスのものに替え、長いひさしで視界を確保するとともに頭部から熱が逃げることを防ぐ。胸を突く斜面、滑る岩場、いったん足を踏み外したらきっと奈落へと落ちる両サイドの急斜面と、どれをとっても一瞬たりとも気を抜くことができない。急斜面上から矢のように向かって枝を伸ばしているハイマツを掻き分け体の後ろに持って行き一歩、背丈の高いハイマツはもぐってザックに引っかかるハイマツをどけながら一歩と登る。今回の正念場はこの場所であった。絶対に滑落するわけにはいかない。コイカクまで出るのだ。

 ほうほうの呈で稜線に出ると少しのスペースがある。下降点であることを示す赤テープも付けられている。地図で見る夏尾根の頭までの距離は短い。しかし。行けども行けどもハイマツ帯である。GPSで現在位置を取ると、夏尾根の頭はまだ先だ。ただもう滑落の心配もない。ハイマツを漕げばいいだけのことである。40分を要して懐かしいテン場に着く。2007年10月のこの場所には、カムエクから来たというソロの女性がテントを張ってまどろんでいたようだった。今日の自分は、1305mを目指してこのまま下るだけだ。雨に打たれ疲れも出てきた。気力も失せてきてしまった。ただ十勝側にあるテント場だけは見ておこうと少し下る。そこにはウサギギクが5本あって、ミヤマリンドウも咲いている。「このまま下りちゃって後悔しないのか。明朝、素晴らしい展望が得られる可能性もあるのではないのか。」と自問自答する。せっかく1年間温めたプランだったのに、ペテガリ岳へも行かない、コイカクの朝も楽しまない縦走でいいのかと・・・。


コイカク夏尾根の頭

 翻意してテントを張ることにする。強風が尾根を覆っていたガスを追い払う。徐々に日が差し、テントを設営するころには視界が開ける。思いとどまってテントを張って正解だった。テントは強い風に煽られるが、明るい太陽が何よりだ。このままの天候が続くのであれば、明日の朝は景色を堪能してゆっくり下りることにしよう。行程管理人にメールし、13時に中札内タクシーにヒュッテで待ってもらうようにする。


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