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安達太良山目指して くろがね小屋泊(止)まり
2012/ 1/29〜30


だるまストーブ


 1月29日(日) 1日目  

  東北の山は、テントを担げなくなってからというのが漠然とした山の将来計画です。大震災に見舞われた東北はかつての勤務地であり、遊び場であったのです。この大震災でできることと言えばわずかな募金と被災された方への思いを持つことぐらいしかできず、ましてそのような非力な者が、特段の目的なく被災地に立ち入るのは遠慮すべきと考えていました。しかし、被災から10か月が経とうとし、どうしてもこの目で事実を確かめたくて東北に行くことにしました。(その記録は「南三陸シーサイドパレス」にまとめてあります。)同時に、山と渓谷の10月号が「放射能汚染 登山者としていま、山の放射能と向き合う 真実を求め、安達太良山へ」との記事で「くろがね小屋」について書いていたので、小屋に1泊してから安達太良山へ行こうと安易に小屋に向かったのでした。しかし、厳冬の雪山を見くびってはいけませんね。

(山渓が2011年10月号で、安達太良山、くろがね小屋の放射線量についての安全記事を書いたので、その効果《宿泊者の増加》について期待していたが、そんなことはまったくなかったようだ。目先のことを追うしか生き残るすべのないジャーナリズムの皮相的な取り上げ方に乗るお人よしは少ないようだ。ただ、真にこの小屋を愛する人の宿泊増が顕著らしい。)


勢至平

 一応、車にはブリジストンのスタッドレスタイヤ「REVO」を履かせていますが、これは9シーズン目に突入したレアものです。東北自動車道二本松ICまでは融雪剤の効果でアスファルトが出ていますが、一般道に入ると圧雪状態で登山口のあだたら高原スキーまで標高差約400mの、くねくねとした山道を慎重に進みます。スキー場の駐車場に車を置き、ワカンをザックにくくりつけ、アイゼンを着用して、13時30分に奥岳登山口を出発します。時おり地吹雪が舞います。登山道は雪上車で道が付けられたスキー場脇から樹林帯へと入り、馬車道と旧道の分岐で「旧道」を選び登って行きます。、


くろがね小屋

 標高1250mほどで樹林帯を抜け、右側が湯川の谷へ落ちる斜面を見ながら疎林の中を進みます。もうここからは急な登りはなく、緩やかな傾斜の勢至平を歩きます。天候は強風の雪模様で、気温はマイナス15℃になっています。寒さに応じてここまでに2種類の手袋を着用しましたが、指先が冷たくなったままなのでもっと厚手のものに替え、頬の保護のために目出し帽を着けます。ここまでは立派なトレースがあったのですが、それも登りから下りになるとそれも消えかかり、小屋まであと2〜300mというところの急斜面をトラバースするところでは、足を少しでも外すとズボッと潜ってしまいます。


小屋の外は吹雪いている

 このコースは、登山口からくろがね山まで、夏山で2時間のコースです。吹雪になって空もさらに暗くなると、出発時間が遅くなったことを悔やみます。それでもくろがね小屋が吹雪の合間に見えた時は、「やった〜。」と安堵します。ただ、そこからわずかな距離が大変です。急斜面のトラバース、少しでもトレースを外すと腰まで埋まってしまいます。結果的には夏山と同じ時間(2時間)で着くことができました。小屋では、小屋番さんが温かく迎えてくれます。石炭ストーブが焚かれ、その周囲では先着した人が酒を飲みながら歓談しています。今日は、6人の宿泊者で、グループ・各人ごとに一部屋割り当てられました。ザックを解いて、さっそく小屋の乳白色の源泉に身を沈めます。極楽がどんなところか知りませんが、湯船で「極楽、極楽!」と唱えて長湯をします。


語らい

 お酒も夕食も終わっても山の話に花が咲きます。5人全員が明日、安達太良山に登るということですが、私は小屋に到着早々小屋番さんに中止宣言しています。というより小屋番さんから「この分だとトレースはすっかりなくなっているし、風も強いよ。」と言われたことも即刻中止決定の理由になっています。

 冬山のベテランさんから、トレース泥棒と言わないしスキー組が先行するので行かないかと水を向けられますが、行かないことに決めてしまったのでお断りします。・・・というより、ベテランさんの話を伺っていると、私の装備で行くことは事故の元だと考えたからです。ベテランさんは、「オーバーパンツを着用しないなら、ズボンの防水処理はしっかりしているか。」「インナーグローブはウールのものか。」「吹雪などによって頂上で方向を失うおそれがあるが、コンパスと25,000分の一の地図の準備はいいか。」「スノーシューなどではラッセルが困難なところがある。」「安達太良山は那須・茶臼岳に次ぐような強風に晒される。」などと真冬の北アルプスを縦走する方らしい注意点を話してくれます。

 2011年1月、安達太良山山頂付近で遺体で発見された男性は悪天候で遭難したとみられ、この人は山頂から約300メートル北の尾根で、あおむけで倒れていて靴を履いておらず、近くに張られたテントの周辺には、水筒や食料が散乱していたということで、そのようなことに至った原因は低体温症による錯乱だったのだろうとのことでした。

 今回、ツェルトは持ってきたもののスコップやシュラフは車の中に置いてきており、短いコースだからなどと冬山を侮ってはならないと肝に銘じたところです。なお、冬の安達太良山での遭難事故は多発傾向にあるとのことですが、それは高速道路のインターチェンジから少し走れば登山口ということも関係しているようです。 

 
くろがね小屋

 消灯時間にはもう少し時間があるのですが、入浴の時間が迫っているので湯船に浸かってから、湯たんぽを抱えて眠りに就きます。ほてった体に毛布2枚で気持ちよく眠りに就き、目覚めたのは明け方でした。石炭ストーブの火が消えた小屋の明け方の室温はマイナス3度になっていて、凍える思いで耐えたのでした。

 


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往路    復路   
 着  地点 発  着  地点  発 
   あだたら高原スキー場 1330    くろがね小屋      0830 
1530   くろがね小屋 1025  あだたら高原スキー場
 所要時間 0200 所要時間  0155