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北アルプス・フラワーロード テント泊縦走記

雪倉岳から白馬岳
2011/ 7/17


朝日岳



イブキジャコウソウ (鉢ヶ岳と奥に雪倉岳)

 朝日岳から赤男山先のガレ場までは、子桜ヶ原を除きこの時期に特にこれと言った花はみられなかったた。ところがガレ場に差しかかるとウルップソウ、クモマスミレ、イブキジャコウソウ、ミヤマアズマギクなどが多く現れる。ウルップソウがそれぞれ適度な距離を置きつつ斜面一杯に広がっている光景には素晴らしいものがある。その開花時期はまだ大雪渓はもとより、鉢ヶ岳の東斜面にも大量の雪が残っていて登るのは大変だろうが、いつかは必ず見てみたいものだ。


ミヤマアズマギク (鉢ヶ岳東斜面)

 雪倉岳で小休止の後、下りにかかる。ここでのお目当ての一つはツクモグサだ。これまで何度かツクモグサを見に北海道日高山脈のピパイロ岳に登った。そこは残雪と新緑をまとった幌尻岳、戸蔦別岳などの日高の山々の絶景ポイントでもあるが、ピパイロ岳の先の稜線に咲くツクモグサは素晴らしいの一語に尽きる。そんな北の山のツクモグサを見ていることから白馬岳、雪倉岳のツクモグサは、八ヶ岳のツクモグサのようなおおらかさのない、ちんまりとしたものだろうとの先入観は見事に覆されたのだった。


ミヤマハンショウズル (雪倉岳)

 そのツクモグサの花期は終わっていたが、雪倉岳の頂上から雪倉岳避難小屋まで、三国境から白馬岳までの間の植生には驚かされた。また、雪倉岳避難小屋周辺のミヤマアズマギクは真っ赤に発色していて、それはそれは見事な色だった。その雪倉岳避難小屋周辺にを男性がペットボトルを片手にリラックスムードで散策している。朝日小屋からここまでをツバメ平での1回の休憩だけで歩いてきたことから、避難小屋に入って強い日差しを避けウトウトして体を休めた。


コマクサ

 さあそろそろ出発しようかと言うとき、その男性が小屋の前に戻ってきたので見るともなく足許に目をやるとソールが剥がれて、ビニールテープなどで補修している。「大変ですね。下山ですかね。」と尋ねると、「細引きがあるから問題ないですよ。今日はここに泊まって明日、朝日岳まで行くことにしています。」とのことだった。時間はまだお昼にもなっていない。避難小屋前の雪渓で水が採れないので鉢ヶ岳東斜面の雪渓で水を取ってくると、鷹揚な人だった。


クモマスミレ

 さてさて避難小屋から白馬岳までの稜線を眺めると、もう一仕事がまっている。今日のテント場の村営頂上宿舎までのコースタイムは約3時間半ある。重い腰を上げて鉢ヶ岳の東斜面に向かう。東斜面は思った以上の雪渓で覆われているが、危険なところはない。雪渓の途中で水が流れている場所があったので、水を汲み直してザックに収めた。鉢の鞍部に登り詰めると再びザレ場になる。鉱山道分岐を過ぎ三国境までの傾斜を我慢して黙々と登ると、そこにはコマクサが多く咲いているのだった。


ツクモグサ

 三国境には、数名が休憩していた。単独の同世代男性と話をするが、「朝日小屋まで行くのはやめようかな。」と言う。もう時刻は午後2時で、どこから来たのかと聞くと、なんと五竜山荘からとのこと。ちょとちょと、五竜山荘からと言えば不帰キレットをやって三国境まででもコースタイムは約11時間だ。三国境から朝日小屋まではさらに約6時間ある。結局は白馬大池に向かって行ったが、世には鉄人がいるものだと感心しきりだった。


鉢ヶ岳から白馬岳

 三国境から白馬岳に向かうようになると人が多くなる。「白馬」と言う名前は何か優しさを感じさせるが、その名前に反して頂上への最後の登りはなかなかのものだ。それでもコマクサが、続いて旭岳を背にウルップソウ、ハクサンイチゲ、ヨツバシオガマ、ミヤマエンドウ、ミヤマキンバイなどが咲くお花畑が延々と続く。


白馬岳への稜線で

 やがて白馬岳の頂上に着くが、そこは多くの登山者で溢れていている。ここで展望を楽しみたいところでだが、にぎやかなところでの長居は無用だから今日のテント場に急ぐ。相変わらず多くの人が頂上に向かって登ってくるし、白馬山荘は人であふれかえっている。それはそれでいいのだが、村営頂上宿舎が見えてきてテント場には隙間なくテントが張られている。


白馬岳から

 テントの受付を済ませてテント場へ向かうが、受付を済ませないで場所を確保しようと登山道から直接テント場に行こうと目論む人が後ろに数人ついている。しかしながらテント場の奥へ向かう道はテントの間を縫わない限り1本しかなく追い越しは不可能なので、追い越しをさせないで稜線から見定めていたとこに向かって行く。本来計画は明日18日は白馬鑓温泉にテントを張る予定だった。19日に八方尾根から下山したときにタクシーの運転手さんは、「鑓温泉のテント場はもともとスペースが限られているところにテント泊者が押し寄せ、テントを張れない多くの人が下山してきたんですよ。」と話していたから、北アルプスのメジャーな山では注意が必要と思われる。


白馬岳 村営頂上宿舎テント場

 テント場の一番奥には、長野県内の高校性の大きなテントがいくつか張られていた。その間に一張り分のスパースがあったので、断りを入れて首尾よくテントを張る。時刻はまだ午後3時を過ぎたばかり。上空は広く雲で覆われて、いつ雨が落ちてきても不思議ではない。テントの入口の張り綱だけが残ったときに大粒の雨が降ってきたので、あわててテントに入る。しばらくすると雷鳴も轟き雨は間断なくテントを叩くので、こんな時は寝るに限りる。夜の帳が下りるころになって雨も止んできたので小屋の食堂に行き、今日頑張った自分にジョッキのご褒美をあげたのだった。


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