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南アルプス/茶臼岳
2015/ 5/ 8〜10


茶臼小屋からの黎明


 5月10日(日)  


光岳小屋

 酒で潰れて寝入っても、(高齢化のため)いつまでも寝ていられる訳ではない。午後9時過ぎに目を覚ますと、天気予報とは相違して窓の外は濃いガスで覆われている。強い風も吹き付けている。3日目は横窪沢小屋までの予定であり、それが妥当な今日の行程であったはずだが、(3日目の)朝になって目を覚ましてみると相変わらずガスに覆われているものの、上空の月がぼんやり見えだしてきた。そうならば今日は一気に下山してしまい、赤石温泉白樺荘の湯船に浸かって・・・。


光岳小屋とお別れ

 そういうふうに気が変わったので、午前5時には小屋を発つことができるよう、テキパキと支度を進める。富士山も姿を現してきた。素晴らしい黎明が訪れようとしている。感動の夜明けを待って小屋を出る。静高平から三吉平までの急斜面には雪がびっしりと付いているが、ノーアイゼンで滑りながらもどんどんと降りて行く。


希望峰への登りから 聖岳

  茶臼岳までの戻りの道は、夏道が3分の1ほど姿を見せている。この時期は朝方の固い雪の上を歩いたほうがピッチが上がる。夏道を雪が覆ているときは尾根のてっぺんを歩いたほうがスピードが上がるし、冬場に付けられたしっかりとした踏み跡がある。ほとんど無休憩といっていいほど・・・、しかし歩みは早くはないがマイペースで先に進む。


右から 兎岳〜聖岳〜上河内岳

 易老岳のピーク及び周辺はびっしりと雪が積もっているので進路をきちんと確認して歩く。希望峰のピークには雪はないが斜面には雪が残っていて夏道と混在している。仁田池はわずかに水面を見せている。仁田池を少し進むと雪は少なくなって、茶臼岳に至るガレ場から茶臼岳、茶臼岳頂上から小屋分岐までの間は完全に夏道が露出している。


茶臼岳頂上から 上河内岳〜聖岳

 茶臼小屋に着いて、下山の前に小腹を満たし出発の準備を整えようとしたとき、聖岳方向からヘリコプターが飛んできて小屋の上を通過する。ほどなくまた小屋に向けて旋回してくる。遭難者の捜索なのか。背を向けていると彼方に飛んでいった。


稜線から下りてきて 茶臼岳

 茶臼小屋から畑薙大吊橋までの標高差≒1600mを一気に下りることにする。なるべく膝に負担とならないように気を付けるが、気力・体力の減衰が顕著となってきて膝にも違和感を覚えるようになった。これから先、最大の注意を払うべき場所はヤレヤレ峠から畑薙大吊橋の間の急斜面に取り付けられたトラバースの登山道である。吊橋が流された崩壊地にワイヤーが敷設されているところで横倒しになった鉄の杭の鋭利なところに足をぶっつけて、買ったばかりのファイントラックのズボン・ストームゴージュに穴を開けてしまった。


畑薙大吊橋

 それ以外のアクシデントには見舞われず、順調に畑薙大吊橋に到着した。コースタイムを記入していると、多くの客を乗せた東海フォレストのマイクロバスが徐行して停まるに見えたが、すぐさま砂塵を巻き上げ走り去っていく。酷暑の中を沼平に向かって林道を歩いていると、先のマイクロバスが帰ってきて、運転手さんが頭を下げ手を上げながら「さっきは乗せてあげなくて済まなかった。」というように挨拶しながら過ぎて行く。
 
 今回もいい山歩きだった。南アルプスは人が少なく静かでいい。赤石温泉白樺荘で入浴したが、食堂は営業時間が過ぎていたのに、汚れて疲れ切った登山者のために遅い昼食を用意してくれた。


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