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酉谷山から宗屋敷尾根を下る
2012/ 4/29〜30


旅立ちの朝


 4月30日・月曜日 (2日目) 

 いやはや、女性パワーはすごいものです。酉谷山避難小屋に到着するのに多少のハプニングがあったようですが意気軒昂、明るさがあふれています。朝もテキパキ済ませ出発して行きます。昨晩泊まった全員の感想が、「この小屋はきれいだ。」「トイレが臭わない。」ということで一致しましたが、それでも連休3日目なのでトイレの多少の汚れは致し方ありません。今日は熊倉山の手前から宗屋敷尾根を下りる予定なので悠長にしているわけにはいかないはずですが、全員が出発するのを待って清掃奉仕に取り掛かります。


酉谷山のミツバオウレン

 すっきり爽やかとなった小屋を後にして長沢背稜に出ると、まだ7時半だというのに女性2人が酉谷山に登って行きます。頂上で話をすると、一杯水避難小屋のお世話になったとのことで、昨晩は総勢6人だったそうです。天祖山を下りるという2人と別れ、酉谷山北面を下ります。清楚なミツバオウレンが湿った苔の中でいっぱい咲いています。小黒をこなし、大血川分岐を過ぎ、馬酔木のトンネルをくぐって檜岳から蝉笹に出ます。シラカケ岩でツツジの花を確かめるはずでしたが、いつの間にか通り過ぎてしまったので、そのまま宗屋敷尾根に入り、急斜面を下ります。(10時40分、大岩の上方基部着)
 大岩は右側を巻きますが、一応赤テープもあり、注意深く踏み跡を辿って鞍部に到着します。このあとは1284m先のルートをいかに的確に見つけるかがポイントですが、今回は、大きな尾根の左側に非粘着性のピンクのテープが巻かれていて、前回のGPSのログにも符合していたので、容易に小さな尾根に移ることができたのでした。
 (小黒を「おぐろ」と読んでいたが「こぐろ」と読むのが正しいらしい。酉谷山は黒ドッケあるいは「大黒(おおぐろ)」と呼称されるようだ。))


急峻な宗屋敷尾根

 今まで左肩がとても痛く、ブルーな気持ちで山を歩いていて、今回もそんなことにずいぶん気を取られていたのですが、1284mの登りしなでアカヤシオを目にし、思わず声を上げてしまいました。予期せぬ出会いというものはうれしいものです。その後、ほんの少しのミツバツツジの他はアカヤシオのオンパレードに見送られながら次第に植林帯に入って行きます。そうなるともう楽しみは何もなくなるのですが、 自然林と植林の境でイワウチワとのご対面です。量は少ないもののこれにも驚いてしまいました。秩父では街中でときおりイワウチワの鉢植えを見かけますが、今までのその疑問がすっかり解けました。主稜線ではなく、進退窮まるような行き止まりとなる岩場などを探せばたくさんあるのだろうと想像がつきます。


アカヤシオ

 そんな喜びをかみしめながら下ると今度はカタクリが尾根を覆っています。どうにか生存し、わずかながら子孫を残していると言った風情ですが、少し陽が入り込むような植林地の条件を生かして生き延びている姿に感動します。カタクリは尾根に付けられた踏み跡にもたくさんあって、この尾根を使う人が稀なことからそんなことが許されているのでしょう。


イワウチワ(1120m)

 宗屋敷尾根はそのほとんどが植林地で、かつ展望もないので、この尾根を使う酔狂な人は稀だろうとは思います。・・・と思ったのは勝手な思い込みでした。携帯が鳴ったのかなと思ってウェストポーチをまさぐりながら進むと、展望の利く鹿除けネットのところで、青年がレジャーシートを広げ、ラジオを聴きながらコーヒーを淹れているところでした。聞くと、暇だったので登ってきたがここで折り返すということです。


カタクリ(1060m)

 宗屋敷尾根は、つまんない尾根のように書きましたが、実は探せば花はあるところにはきちんとあるものです。これまでの癖で花はないか、花はどこだと見まわしながら歩いていると目に入ったのが緑色の草ならぬちょうど見ごろのシュンランでした。この付近を探索すればもっと見られそうですが、その場の3株を鑑賞して下ります。


とあるところで

 無事林道に出てからは、薄暗い杉林の縁に目をやりながら歩きます。スミレ、ニリンソウ、エンレイソウ、チゴユリ、ナルコユリ、ギボウシなどが目に付きます。前回に続き宗屋敷尾根を歩いたので、もうここはいいかと思った矢先にこれほどの花が見られるのなら、また来年もこの時期に宗屋敷尾根を歩かなくてはと、頭の中の計画に入れてしまいました。里に出るともう自然の花は何もなくなりますが、ニホンサクラソウがちょうど見ごろでした。


可憐

 今回の山には、国土地理院の25000分の1の地図をつなぎ合わて広域を俯瞰できるようにし、GPSにも要所を落とし込んできました。この山域は道迷い遭難事故が多いところです。タワ尾根を登っているときに出合った男性2人の仲間は奥多摩駅近くの山で迷い、ヘリコプターが出動、35人の捜索隊により発見、救助されたそうです。酉谷山避難小屋で話をした青年は、小黒で迷って別な尾根に入り込んだというし、細心の準備をして臨む必要があることはいつもと同じです。


ニリンソウ

 秩父(奥武蔵)の山は、家から近く、標高差1000m内外あって登り具合があり、季節によっては多少の花も見られるということで何度も足を運んでいますが、首都圏にこのような素晴らしいフィールドがあることに感謝しながら、ビール片手の帰りの電車の中で、もう次の計画を練ってしまったのでした。


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