TOP北海道の山1日目3日目4日目5日目


神々の遊ぶ庭 
大雪山縦走

天人峡〜化雲岳〜トムラウシ山〜五色岳〜忠別岳〜白雲岳〜間宮岳〜中岳温泉〜旭岳温泉
 
2003/ 7/19〜23


ヒサゴ沼(黄色のテント)

第2日目(7月20日・日)

 憧れの大雪山縦走への日。早朝に起き出してテントを撤収し,旭岳の裾野へといったん下って,再び登り返して天人峡へと車を走らせる。 天人峡の駐車場はすでに満杯となっており,最後の一台となって車を停め,身支度を整える。午前6時,20数キロとなったザックを背負い,化雲岳登山口から羽衣の滝の全景が見られる滝見台を目指す。 この区間は,わずか500mほどではあるが,地図上の所要時間は1時間30分となっており,ここを1時間かけて登る。

平成14年8月,北アルプス・裏銀座縦走路をブナ立尾根から登った。ここは「アルプス3大バカ急登」と呼ばれているが,これに引けを取らない急な登りであり,心底,今回は引き返そうかなと思った。10歩登って一休み,10歩登って一休みするというありさまであり,荷物を捨ててしまいたい衝動にかられる。そうこうしているうちに滝見台に到着し一息つけるが,ここにはヤブ蚊の大群が待っており,ハッカ油をスプレーしても退散しないことから,ザックを背負い直し追われるようにして,第一公園までの樹林の中を歩く。

第一公園までは,なだらかなアップダウンを繰り返しながら400mの標高を2時間かけ到着する。第一公園からは,エゾノカンゾウ,ワタスゲ,エゾコザクラを背景に旭岳,後旭岳が聳えているのが見える。第一公園から第二公園の間は,登山道が掘られて露岩が現れ歩きづらい。ぬかるみや,荒れた登山道を避けるため笹根の上を歩かなければならならず,重いザックを背負った身に辛い。


清冽な雪渓からの湧水


 途中,日陰を見つけて大休止をしていると,クワンナイ川を遡行して来たという軽装の男性が降りてくる。クワンナイ川は,沢を登ってトムラウシ山に登る人気ルートらしいが,死亡事故が多発しており,沢登りが禁止されているところである。しばし山談義に花を咲かせ,再び歩き出す。

第二公園は,1664mの手前にあり,チングルマとエゾノツガザクラが延々と広がるお花畑となっている。また,エゾコザクラの群落もあって,すべての疲れを癒してくれる天上の花園である。メインの縦走路にある中別岳と青空を背景にしたお花畑は,360度の広がりを見せている。北海道は,サクラソウ科の植物の宝庫である。ルシチ山や様似山道で魅せられたエゾオオサクラソウ,アポイ岳のヒダカコザクラ,えりものクリンソウの群落を見た。雪渓跡や傾斜地の湿潤な場所に群落となって可憐な花を咲かせている大雪山のエゾコザクラの群落はさらに素晴らしい。
 
 ただ,ここ第一公園では,その群落は小規模であり期待を裏切られた感を否めないが,第二公園ではチングルマの群落の中に,エゾコザクラが彩りを添えている。第二公園のエゾコザクラは,主に登山道周辺に沿って咲いている。シナノキンバイソウの黄色の花とともにお花畑を作っている。


融水に沿って咲くエゾコザクラ

 第二公園を過ぎると再び登り一辺倒となり,小化雲岳を巻いて化雲岳を臨み,本日最後の登りをこなす。化雲岳頂上からはトムラウシ山が見え,夕焼けのトムラウシを眺める人,カメラを構えてシャッターチャンスを待つ人がいる。 化雲岳で小休止した後,神遊びの庭に咲く一面のハクサンイチゲを見やりながら木道を進み,本日のテント場であるヒサゴ沼に下りる分岐へと進む。程なく東斜面に下ると木道が雪渓に隠れ,足場に気をつけながら下る。化雲岳からヒサゴ沼へと至る雪渓下部の雪解け水の流れの水辺には,今が盛りのエゾコザクラが待っていてくれた。

雪渓を小1時間下るが,雪渓が途切れると,雪渓の白,青い空,芽吹きの緑を背景に雪融けの流れに沿ってエゾコザクラが今とばかりに一斉に花を咲かせている。ここのエゾコザクラは,えぐり掘られた登山道に沿って咲いている。今にも崩れそうな土の塊の上にあるエゾコザクラに大きな花が多い。ところによっては,登山道脇が高山植物の生きる場所最適な場所となっているのではないかと思われる。


エゾコザクラ

ヒサゴ沼へ至る雪渓下部は,登山道に沿って水が流れるため道は荒廃し,登山道自体が小川のようになっている。夕日を背中から浴びたエゾコザクラは,なんとも言えない情緒を醸し出しており,この風景からなかなか離れることができない。今回の縦走路中,一番旬のエゾコザクラの花がここにあった。

縦走する場合の問題点の一つは良質な飲み水の確保にある。しかし,北海道の山は,キタキツネの糞を通して引き起こされるエヒノコックス病や,登山者の排泄物の浸透により山の水が安全でないことは周知の事実となっている。ヒサゴ沼には,幾筋かの水が流れ込んでいるが,安心な水は,避難小屋及びテント場からトムラウシ山への道を雪渓をトラバースしながらしばらく進み,雪渓をしばらく登って,ほとばしるように流れから得る。ここの水は雪渓から溶け出したばかりのみずであり,当然のことながらとても冷たい。10時間も炎天下を歩いた身には,まさに命の水だ。

ヒサゴ避難小屋に隣接するキャンプ場は,白雲岳から来る者,トムラウシ山から来る者,また沼の原から五色ヶ原を通ってくる登山者,そして天人峡から来る者など,まさに大雪山の十字路となっていて,テント場が窮屈になるところである。住宅密集地の首都圏の我が家よろしく,それぞれのテントは近接している。運良くヒサゴ沼を見渡せるところに場所を得たので,一応隣の方に,我が「高いびき」についてあらかじめお断りを入れてテントを設営した。

のんびりアルコールを飲み,夕食を作って大雪の夕暮れの景色を楽しみながら食事をする。食後のコーヒーもうまい。太陽が沈むと,今日1日の疲れがどっと押し寄せ,そのまま深い眠りに入ってしまう。


ヤンベタップ川源流


TOP北海道の山1日目3日目4日目5日目