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3度目の北岳 クモイリンドウ

2006/ 8/26〜27



小太郎尾根のクモイリンドウ

 8月26日(土)

早朝の広河原には数台のタクシーと4台のバスが到着し,降り立った登山者は次々と登山口を目指して行く。アルペンプラザ前のベンチでお湯を沸かしゆっくりと朝食を摂っていると,時計は7時半になっていて,もう回りに人も少なくなっている。

広河原に立つとバットレストが朝日を浴びていて北岳頂上にかかるガスとバットレストを取り巻く木々の緑がひときわ際立っている。

 いつものように大樺沢をゆっくりゆっくりとしたペースで登って行く。ガスが太陽を遮って歩きやすい天候のはずが,今日はやけに汗が流れる。体調がよくないようだ。

 大樺沢の花も残り少なく,ちょうどヤナギランが見ごろであるほかは,もう取り立てて見るものはない。そんな思いで歩いていると、腰に違和感を覚える。


大樺沢に咲くヤナギラン

二俣で少し休んで右俣コースに入るが,標高を上げるのがとても辛く,ついに木陰に腰を下ろすといつの間にか寝込んでしまって,1時間半も経っている。このままでは北岳山荘までは行けないばかりか,稜線に出るのも無理な気がする。

だましだましながら草スベリとの合流点に着くと,ミヤマリンドウが点々と咲いていて,美瑛岳のリンドウは素晴らしかったなと懐かしさを覚える。後にも先にもミヤマリンドウは右俣コースのここにしか咲いていない。

小太郎尾根の分岐の東斜面では,咲いたばかりのウサギギクが鮮やかな色で迎えてくれ,稜線に出ると,あちこちにクモイリンドウが蕾を膨らませて待っていてくれる。 まだ午後1時を少し回っただけなのだが,肩ノ小屋にようやくたどり着いたというような体調だったことから,もう北岳山荘のテン場はおろか北岳の頂上まで行こうという気力も失せている。


肩ノ小屋東斜面のテン場 この先を降りると水場がある

 西からの風が小雨を運んで来たもののテントを設営に影響はなく,稜線から一歩も二歩も下がった斜面にテントを張る。

 小屋の水は塩素処理が強すぎるとの情報があり,せっかく水場があるのだからと,100m下ったところにあるという水場に下りてみた。水場に至る踏み跡の周辺は,その盛期には素晴らしいお花畑であろうと思われ,咲き残ったミヤマオダマキや髭になったチングルマ,季節はずれのハクサンフウロが見られる。

 その水場はというと,ペットボトルやプラティパスを何個も持った先客に占領されていて,2リットルの水を貯めるのに20分もかかるような有様で,ただ待っていては日が暮れるとの思いでさらに下ってみるが,涸沢に水はなかった。戻ってみると先客はまだ水汲みの最中であったが,いったん場所を譲ってくれたので,岩の隙間から一筋の細い糸のような流れの水を愛しむようにプラティパスに収めた。


豪雨の後の朝のテント

 稜線のベンチで恒例の缶ビールを堪能していると雨が強く降ってきて,急いでテントン避難するが,稜線より下で雷鳴が轟き,その後,山では経験したことのないテントを叩きつける強い雨脚が何時間も続いた。

 やっと,というより我慢できずに夜9時にトイレに立つと,テントの周りは深いガスに包まれ,ヘッドライトで照らされる踏み跡は数歩先がやっと見えるようだった。山ではもう深夜といえる時間なのに,肩ノ小屋の宿泊者が何人も徘徊している。


水場の斜面のミヤマオダマキ


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