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キタダケソウのじゅうたん 北岳南東斜面
2008/ 7/1〜2

                          (参考)2006年のキタダケソウ
                               2007年のキタダケソウ


 7月1日


北岳南東斜面のキタダケソウ

コンディション?
  この時期にヌカビラ岳に咲くお気に入りの花を見たいし、何度もほんの手前で断念した幌尻岳の頂上にも立ちたいと、10日前にヌカビラ岳から幌尻岳をピストン縦走したばかりだ。しかし、今年も北岳に登って、キタダケソウを見てみたい、何度見ても南東斜面のお花畑は圧巻だ!ということで、前夕に身支度を整え、目覚ましを午前3時にセットして床に就いた。
 しかし、体は言うことを聞いてくれないものだ。目を覚ますともう既に午前4時半・・・。いったん躊躇するが、車に飛び乗って首都高速から中央高速を経て2時間で芦安の駐車場に着くと、平日の始発バスの出発まで1時間弱あった。芦安の川は茶色に濁っていて流れが強く、前日の雨量が多かったと見える。平日だと言うのに人は多く、バス1台にジャンボタクシー2台で広河原へと向かう。広河原でバスを降りると下山してきたと思われる男性がいたので「早い下山ですね。」と声を掛けた。男性は「雨の中広河原まで来たのですが、林道が閉鎖されて帰れなく、テントを張って一晩過ごしました。今日の天気はいいのですが、もう帰ります。」とのこと。

北岳バットレス下部とイワカガミ
大樺沢上部斜面の雪渓

いつものようにゲート前の湧き水をいただいてから野呂川に掛かる吊り橋を渡って広河原山荘から登山口に取り付く。この2年間で8回通ったいつもの道、いつもの景色を白根御池小屋分岐まで行く。ここまで「20分」はいつものペースで、いい調子だ。ところが分岐でいったん腰を下ろして朝食を摂った後、ザックを担いで歩き始めるとザックの重さが腰部にどっしりとのしかかり、でん部の筋肉に異常に負担が掛かる。幌尻岳の疲労がまだ残っているようだ。

それでも二俣まではその程度の感じでまあまあの調子だったが、アイゼンを装着して大樺沢の雪渓に取り付くと、もう足下の重いことこの上なく、一歩一歩ようやくと言った感じで八本歯ノコルを目指す。北岳バットレスを背景にイワカガミとキバナシャクナゲが花を広げたばかりのようであった。
 

 山のTPO
  雪渓を離れルンゼ脇の小尾根に取り付く場所で年配の男性が休んでいるので、「こんにちは。きつい登りでしたね。」とあいさつすると、「北岳山荘に電話して聞いたら、雪渓を登るにはピッケルとアイゼンが必要だと言われたが、小屋の者は素人だね。ピッケルなんか要らないじゃないですか。」と申される。装備は、見るとダブルストックと6本歯の軽アイゼンだ。
 そういえば、自分も、池袋の山用品店で店員さんに北岳の雪渓を登る際の装備選びについて聞いて見た。店員さんは「大樺沢を花の時期に登るのならアイゼンはしっかりしたものが必要だが、ピッケルは必要ない。ただ、一般の常識としてピッケルを持っていないとひんしゅくを買うだろうから、持っていますよとのアピールは必要かもしれません。」と言う。実際、2007年のこの時期に滑落して岩にぶつかってやっと停止した人やするすると滑落する人を続けて目撃した者として、このおじさんの感想はいただけない。

 雪渓を離れると八本歯ノコルまで辛い梯子登りが延々と続く。コルからさらに普段はなんともない南東斜面の分岐までの岩場が待っている。今日の歩きは本当にしんどいが、花に逢うまでの辛抱とがまんすると南東斜面がキタダケソウやハクサンイチゲで真っ白に染められている。ミヤマダイコンソウ、キジムシロ、シナノキンバイソウ、オヤマノエンドウ、ミヤマシオガマ、チョウノスケソウもちょうど満開で、ミヤマオダマキは今にも紫の花弁を開こうとしているし、イワベンケイも咲きたくてむずむずしている。

 
登山道脇の岩の上で


登山道脇で


南東斜面の登山道上部のどこまでも

 南東斜面
 辛かったけれど、やっぱり来てよかった北岳南東斜面。キタダケソウを始めとする花々に囲まれて至福のときを過ごしたが、もう3時を過ぎている。缶ビールを雪渓に埋め、早くテントを設営して一息つかなければ・・・。南東斜面から岩場の急斜面を過ぎると昨年はなかった雪渓が待っていた。しかし、道はしっかり付けられていて安全に通過させてくれる。

岩盤をトラバースするとその先に雪渓が↓
切ってなくてもピッケルなしで渡れますか?
北岳山荘のテント場

 北岳山荘で幕営の受付を済ませ、早速誰もいないテント場でテントを張る。まだ4時で陽も高いが、夕食の支度を済ませてから雪渓でしっかり冷えたビールをごくごくと飲み干すともうすることはない。シュラフに潜り込むとたちまち深い眠りに就いて別世界に入り込む。夜半にいったん強い風が吹いたようだが、またまどろんで、起きてみるともう夜が明けようとしていた。

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