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北岳(肩ノ小屋往復)
(2010/ 7/14〜15)


 7月15日(2日目) 

 それにしても酷い風と雨、テントが風で大きく揺すられる。思わず天上部分を支える。強い雨でバシャバシャと叩かれる。いつまでテントが持つかなぁ、と考えながらまどろみ、また目が覚め、夜明けを待つ。
 雨脚が弱くなってきた。風も収まっている。今のうちに撤収すべきだ。乾いた衣類を濡れたものに取替えて身に付ける。テントの中でパッキングを済ませ、あとはテント入れるだけにしてザックを外に出す。昨晩肩ノ小屋に宿泊したツアー登山の一行が元気に準備体操をしている。


二俣の分岐(奥の雪渓を登ると八本歯のコルへ)

 5時半、肩ノ小屋を離れ稜線を小太郎尾根分岐へと向かう。西から稜線を越える強風が濡れた衣類から熱を奪う。ここを離れればあとは風に当たらない。分岐からは、蘭科の花を探しながら二俣へ向かって下りる。しかし、蘭科の花はおろか、クロユリもハクサンチドリもシナノキンバイもほとんど見かけることがない。これほど鹿に丸裸にされたら、もう北岳の魅力も半減。あっと言う間に二俣に着いてしまった 。

 案の定、大樺沢は怒涛のように流れている。安全策をとって白根御池小屋への樹林帯の道に分ける。ところどころにある草地は丸裸にされていて、残っているのはマルバダケブキだけ。早朝の御池小屋でコーヒーブレークにしようと思ったが、人影が見えないのでスルー。樹林帯の急斜面を大樺沢の分岐へと向かう。


白根御池小屋手前の水場の沢もこのとおり

 分岐から見る大樺沢は、轟々と音を立てて流れている。合わさる野呂川は川幅を広げ激しい流れとなっている。野呂川広河原インフォメーションセンターは人影も少ない。バスや乗り合いタクシーの発車時刻(10時20分)まで2時間近くあるので、濡れた衣類を取り替え、持参した野菜などでスープを作って体を温める。残った時間は、センターの蔵書を見ながら過ごす。

 バスはまだ来ていないが、もうそろそろ乗り込む準備をしようと、停まっている乗り合いタクシーに荷物を載せようとすると、運転手さんは「1人?」と聞く。そして「1人じゃ出さないよ。」と言うので、バスにしようと待つ。2人が下山してきて、「2人?」と聞く。「3人か。出せないな。」と言っている。どういうことだろうか。運転手さんによると、「今日は林道が通行止めとなっていた。9時に解除されたが、10時20分のバスは来ない。3人だけだとガソリン代にもならないので、タクシーを出せない。」とのことであった。


大樺沢下部もこのとおりで・・・

 北岳の入口の芦安と登山口の広河原の間は、マイカー規制が行われている。その趣旨は、山梨県のホームページには次のように書かれている。

 県営林道南アルプス線(芦安〜広河原)では、訪れた皆様が、貴重な自然を保護しながら、南アルプスの雄大な自然環境のもと、交通渋滞のない快適な時間を過ごしていただけるよう、今年も、平成22年6月25日(金曜日)〜平成22年11月9日(火曜日)の間、マイカー規制を実施します。

 南アルプスの豊かな自然環境を維持していくために実施する、このマイカー規制では、利用者の皆様に、マイカー規制実施経費の一部をご負担いただきます。(1人 片道 100円)協力金は、マイカー規制が円滑に行われるよう、ゲート管理や乗換駐車場の管理などに充てさせていただきます。

 この乗り合いタクシーは近在の数社が交互に出しているようだ。自然保護や狭くて危険な林道での事故防止のほかバスやタクシーを運行することで地域振興にもなるだろうからマイカー規制には賛成であるし、その経費の一部を負担することにもやぶさかではない。しかし、客が少ないから車を出さないというのはどうだろうか。

 9時に通行止が解除され、次のバスがやって来るまで、あと2時間半、都合4時間半も待たなければならないことになった。運転手さんから「燃料代が出る料金ならタクシーを出す。」との提案があった。運転手さんは運転手さんの都合があるのだろう。これに応じて他の2人と芦安に向かった。 


ドドォ-ッと音を立てて堰を越えていく

 この2人は、群馬からの人だった。「よくこのような天気のときに登りましたね。」と話しかけると、「休みが決まっているので。」「体が濡れてしまって、特に稜線ではトムラウシの遭難事故のことを考えて歩いていました。小屋で着替えてストーブにもあたりましたが、なかなか震えが止まりませんでした。」とのこと。
 「え〜っ!私はみなさんが温かいストーブを囲んで談笑しているとき、雨の中、かじかんだ手でテントを張って、テントの中では長袖のTシャツと化繊の長袖シャツだけで過ごしていたんですよ。(というより、あてにしていたレインウェアーもすっかり濡れてしまってアウターの代わりにはならなかった。) それでも体は温かさを取り戻したんですが・・・。」と心の中で・・・。
 その違いは、ロングのTシャツの素材がメリノウールで、襟のあるジップアップだったからでしょうか。
 


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