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北岳(肩ノ小屋往復)
(2010/ 7/14〜15)


 7月14日(1日目) 

 日本海に前線が停滞し、各地に大きな被害をもたらしている。北岳の麓の天気予報も悪いが、日高の訓練を兼ね予定どおり芦安に入る。今回は、どのような天候であってもテントを張るとの覚悟だ。広河原までのバスの乗客は、今日は肩ノ小屋まで行くという学生風の3人だけ。バスが終点、広河原の「野呂川広河原インフォメーションセンター」に着くころには本降りとなる。覚悟はしていたものの、野呂川の増水した激しい流れを見るとやはり怖気づく。「大樺沢はやめて、白根御池小屋経由で行こう。」


雨の中の白根御池小屋から

 白根御池小屋への分岐で青年達に追い着く。逡巡している様子なので草スベリを行っては?と勧める。この分岐から急登が始まる。広河原(1530m)から御池小屋(2230m)までの標高差は約700m、御池小屋から肩ノ小屋(3100m)までが770m、標高差は合わせて1470mの辛い登りが始まる。登山道は川となっている。降りしきる雨の中、ただただ黙々と登るだけである。


雨に打たれているミヤマクロユリ 草スベリ

 白根御池小屋で休憩する。ザックを下ろしたのがいけなかった。小屋でコーヒーを頼んで、遅れてきた青年たちからのおやつの差し入れを食べるなどしていた20分のうちに、濡れた体がすっかり冷え切ってしまっていた。草スベリの急斜面を休まず登っても体は十分に温かくならない。それでも蘭科の植物を探しながら行く。やっと咲き始めたミヤマクロユリ、鹿の食害で元気のないシナノキンバイ、雨に打たれたハクサンイチゲなどを見やりながら小太郎尾根分岐に着く。


ライチョウ

 小太郎尾根分岐の東斜面は雪が一杯残っている。肩ノ小屋の稜線に出ると西から吹き付けてくる雨に叩かれる。気温は10℃。尾根にはハクサンイチゲの白い花、オヤマノエンドウの紫の花、そしてあまりにも鮮やかなミヤマシオガマのピンクの色、どれもカメラに収めたいが、吹き付ける雨と風。明日は晴れるだろう。あと30分間の我慢と、見通しの利かない登山道を肩ノ小屋に進む。ほどなくで小屋というところにライチョウがいる。登山道をヨチヨチ歩いている。ガスっているので距離を詰めて見ようとすると、チョコチョコと先へ。結局、小屋近くで東斜面のテント場に融けずに残っている雪渓に下りていってしまった。


ハクサンイチゲとシナノキンバイ 草スベリ上部で

 そう、テント場は雪で埋まっている。小屋でテントの申し込みをして、広場に張らせてもらう。テント泊の先客がいい場所を占めている。強風の雨なので、雨水の通り道ではあるが、ドラム缶の集団によってわずかに風が除けられるところに、冷え切った体にかじかんだ手でどうにかテントを張る。その近くに雷鳥が出てくる。小屋番のお姉さんたちに知らせて雷鳥見物をする。青年たちが小屋に着く。テントに入ってずぶ濡れの衣類を脱ぎ捨て、乾いた物に替える。さっそく、ビールを飲む。日本酒を飲む、至福のひととき。

 雨がテントを叩きつけ、稜線を超える風がテントを揺さぶる。テントの外に出ることはできない。まだ午後5時前、することがないのでシュラフに潜り込む。ラジオを聴きながらまどろむ。それにしても酷い天気になったものだ。 


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