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梅雨の合間に 北岳~間ノ岳の稜線漫歩 
(2015/ 7/10~11)


北岳南斜面の花たち


 2015年 7月10日 金曜日 (1日目) 
この日の行程 : 広河原~御池小屋~草スベリ~肩ノ小屋~北岳山荘


草スベリのクロユリ

 これまでに北岳に登った回数は20回。ほとんどが芦安に車を停め広河原から登るのが定番になっていた。今回も芦安から入って北岳に登るが、下山は池山吊尾根を使って奈良田からの林道に下りるつもりであった。いつかは冬山で使いたいルートである。


チゴユリ

 そんな意気込みで向かった金曜日早朝の夜叉神峠登山口の駐車場は、折からの悪い天気予報の影響でガラガラであった。ここから広河原向けのバスに乗るのであったが、乗客は疎らで気が抜けた。キタダケソウの時期が終わったとはいえ、夏山シーズン真っ盛りの北岳だが、予報に恐れ?をなして(常識的に自重して)登る人は少ない。


御池

 今回は雨を覚悟しての登山である。それほどエネルギーが満ち溢れている(わけはない)。ただ、山に登りたいだけのことだ。山梨交通のバスに揺られ南アルプススーパー林道の人となると、濃いガスが一瞬晴れて農鳥岳が姿を現す。これは幸福の始まりかも・・・。バスが広河原インフォメーションセンターに着くとガスはどんどん取れて、青空が広がってくる。


草スベリのショウジョウバカマ

 いつも癖でもたもたしていると、もうほとんどの人は山に向かっていて、最後の方の出発となってしまった。広河原のインフォメーションセンターを出発して吊橋に向かうとロケをやっている。女優さんはツンと斜に構えている。この女優さんも山道に入って辛い思いをすればそんな見栄は晴れず素に戻れるのだろう。 


小太郎尾根分岐付近のハクサンイチゲ

 今回は、御池小屋経由草スベリを登って名だたるお花畑の花々を愛でながら3時間の辛い歩きをやろうと思っていた。ところがどっこい、7月初旬の花盛りの季節なのに草スベリには花はほとんどない。まるでゴルフ場の急斜面が芝刈りされたような様相になっている。わずかに咲いているミヤマハナシノブの背丈は20センチメートルもない。ハクサンフウロに至っては花は小さくなんともみすぼらしい。それは鹿の食害のせいである。鹿の食害も限界寸前まで来ている。 


千丈ヶ岳とヨツバシオガマ

 草スベリにはクロユリが多く咲いていた。しかし、今年見かけたクロユリはたったの一株だけ。もう草スベリで花を見ようと思っても何もないに等しい。キバナノアツモリソウ、ホテイアツモリソウ?それっていつの話ということになっている。昔は腰を下ろす場所がないほどホテイアツモリソウが咲いていたところとは想像が難しい。どうして今回、草スベリを登ったのかと言うと、間違ってそんな希少種が見られないのかと・・・。


肩ノ小屋

 気を取り直し鹿柵の中で守られているシナノキンバイソウを横目に小太郎尾根分岐に登ると、いつものところのウサギギクがまったくと言っていいほどない。 その年によって花の具合は違うだろうが、今年は花に関してはまさに異常な世界である。途中、NHKの取材クルーの一人を追い越した。国民から税金同様受信料をむしり取ってのお殿様商売をやっているのがよく分かる。老いてもなお登山に費やす費用の削減のためもあってビールも酒もテントも食料もなにもかも背負っている一視聴者にくらべ、このクルー(若くはないからある程度の地位にいるのだろう)は豊かな体格で背負っているザックはデイバックであるにも関わらず、この老体に追い越されるとは。


北岳山荘のテント場と北岳

 肩ノ小屋で小休止し北岳頂上を越える。北岳の南斜面の花は鹿の食害に遭うことはなく、まさには百花繚乱である。雨を覚悟で来てよかったと思う瞬間であった。この後、八本歯ノコル方向に下りてキタダケソウの残滓を探すが何も残っておらず、本命の南東斜面に入って北岳山荘を目指す。まだチョウノスケソウが残っているほか大好きなミヤマムラサキが待っていてくれた。アポイ岳に登ったときの吉田岳方向に咲いていたエゾルリムラサキは特に印象に残っているが、北岳のも千枚岳のミヤマムラサキも綺麗だ。週末は混雑するであろうテント場にテントは少なく、贅沢なポジションを占めてテントを設営する。まだ陽の高い時間に着いてしまった。熱がこもった今年手に入れたアライ・エアライズ1の中でぬるくなったビールを飲む。


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