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梅雨の合間に 北岳~間ノ岳の稜線漫歩 
(2015/ 7/10~11)


我が祖国 ニッポンの山


 2015年 7月11日 土曜日 (2日目) 
この日の行程 :北岳山荘~間ノ岳~北岳山荘~大樺沢~広河原


農鳥岳

 予定では今日は午後から天気がよろしくないから、北岳山荘から八本歯ノコル~ボーコン沢の頭を経て池山吊尾根を下りる予定であった。しかし、夜明け前、テントの換気口から覗き見た天空は星空であった。よって予定変更!3000m稜線を間ノ岳まで往復し、陽が十分に上がってから南東斜面のお花畑を見て、その後大樺沢を下ってミヤマハナシノブに逢おう、と予定を変更する。


塩見岳 左に蝙蝠岳

 早朝の稜線は多くの人が間ノ岳に向かっている。ヘッ電を点けて歩くがすぐに足許は明るくなった。北岳から見る富士山の夜明けは素晴らしい。感動で足を止め干渉的になっていると、後ろから追い越してきた青年が「本当にきれいな富士山ですね。」と声を掛けてくれた。ちっとウルウル状態であった。下界では見ることのできない神聖で犯すべからず、そんな美しい光景である。


高山植物は踏んでも関係ない 富士山命!

 間ノ岳で、昨日追い越していった2人組のうちの一人の学生や他の登山者と楽しく会話する。学生は頭脳明晰、そつのない話し方である。するともう一人の学生が雷鳥を見つけたと言って戻ってきて連れの学生とともに雷鳥がいた方向に向かい、ガレ場を二手に分かれて登って行く。ライチョウ親子包囲作戦である。「お~い、やめろ!」「戻ってこ~い。」
 二人は作戦を取りやめ戻ってきた。「子連れだから母親雷鳥は気が張っているし、子雷鳥にも可哀想だろう。」「それに君らが上り下りしたガレ場にハクサンイチゲがたくさんあったろう。登山靴で踏み付けるとダメになっちゃう。」とまるで聖人君子のようなふりをして注意する。すると、一番聡明そうな学生は急に不機嫌になって、いままでのフレンドリーさの面影は一かけも見せず、敵意を覚えたような顔をしている。人に言われなければ気付かないこともあるのだということを分かってもらえればいいだけのことだ。


北岳

 若者にそんなことを言って気まずい雰囲気の中、山荘に戻る途中、登山道から崖の端まで進んでいるおっさんがいた。ハクサンイチゲやヨツバシオガマなどが咲くところに三脚を立て富士山を一心不乱に写している。これほどの傍若無人さは珍しい。たいていは人がいないところでこのような行動に出るのもあり得ないとは思わない。それにしてもだ。


待っててくれたテント

 ところが、北岳山荘に戻ると、NHKのクルーが自由に草付きを移動し大勢でライチョウ親子を付け回し撮影に余念がない。緑の腕章を巻いた学生アルバイト風の男がその近辺に立って見ている。NHKなら付け回しが許されて間ノ岳の学生の付け回しが許されないはずはない。ごめんね!

 2015/11/22、NHK総合テレビ「ダーウィンが来た」 ~絶滅の危機ライチョウ 前代未聞の保護作戦~を見た。登山時に見たときの光景が写されている。番組のサイトを見ると、単なる自然風景を撮影していたのではなかった。番組の趣旨を知っていればその見る目も違っていたのは当然のこと。ライチョウがサルなどの天敵に捕食されているというのはヤマケイで読んでいたが、番組を見てこのような保護の在り方、方法があることなどについて瞠目させられたのであった。(2015年11月22日)


寝具干し

  テントを畳んで憧れの北岳南東斜面を今日も歩く。なんと言う幸せ。ゆっくりじっくりと花々を楽しみながら先に進むと、爺様が斜面を下りてカメラで花を撮影している。この爺様は恥とか遠慮とかをまったく持ち合わせていない異邦人のようであった。レストランの中でも手鼻をかみ喉の奥からウッゲーと痰を吐く第二位の地位を占める経済大国の国民ならいざ知らず、身なりはこの国の国籍を持っている風であった。「おじさ~ん、何してるの。」「お~い、おじさ~ん~。」
 ようやく顔を上げた。登山道に復帰して戻ってきた。「あんた、鹿じゃないんだから。みんな見てるでしょ。花を踏み付けて花を撮ったって意味ないでしょ。登山道脇にもたくさん咲いてるんだから。」
 齢70過ぎの爺さんだった。これまで生存してきてこのようなところで無様な姿を晒すとは。齢70ではなく、お頭「弱い70」かと一瞬思ったのだった。


いい歳をしてお花畑を踏み荒らし・・・、なかなか洒落っぽい姿だが外観と中身は

 八本歯ノコルでは土曜日とあって多くの人が登ってきて休んでいる。続々と登ってくる人を待ってから下りて行くが、その先大樺沢の雪渓取り付きまでも渋滞する。どうにか大樺沢の源頭水場に出ると両脚が攣って難渋している若者が木陰にいる。聞くとほとんど働きっぱなしで運動する機会もなく北岳を登りに来たという。一緒の女性とともに水分と塩分の摂取を薦めていると、すれ違う登山者がアミノバイタルを置いていってくれる。しばらくしてからストレッチを3人で一緒にやる。「もうだいじょうぶ。」というが今日はテント泊だとのこと。この時間ではもうテント場は満杯に違いない。「北岳山荘に着いたら○△のところを探してご覧、一張り分の穴場があるから。」と耳打ちしてやる。


北岳南東斜面で ミヤマムラサキ

 まあ、北岳山荘のどこにテントを張るのだろうかというほどの人がテント装備で登ってくる。もうテント場はとっくに満杯であろうから、小屋泊に切替えということになるのだろう。体力があるうちは暇がなく、暇があるようになると体力がなくなってくる。皮肉なものだ。「歳なのだからテント泊は平日に限って、週末は若者のためにテント泊をしない。」という人に山で会ったことがある。週末でなくともテント泊をしようとしたら若者に勝てるわけはない。それは普段一生懸命働いている若者に週末のレジャーの場を譲ってやろうという精神であることは承知している。しかし、キャパシティが限られた槍ヶ岳の平日のテント場では3回ともテントを張ることができなかったという経験をした。次善の策としての殺生ヒュッテへの転身にしても若者のスピードは速い。 


シナノキンバイソウ 南東斜面

 若者の山ブームが著しい。そしてテント泊も多い。以前は人がそれほど入り込まなかったところに入り込んでいる。その代表が北戸蔦別岳である。ところがこの種の人たちは最近山を始めたばかりの人、経験の浅い人が多い。つまり行きやすいということである。ネットを介在して情報が伝播すると瞬く間に人が入り込む。そんなところは本当に平日しかない。ただ、すぐ隣の稜線のテント場は今年は(ネット上の記録の限りでは)まだ誰も使っていない。そこに至る道のりが辛いとばかりしか書いていないからである。ちょっとは冒険心を出してはどうか。


クロユリ

 大樺沢を歩く理由は、この時期はミヤマハナシノブにある。大樺沢の雪渓脇、沢の傍らに咲くミヤマハナシノブの花はとても美しい。そんな大好きな花が今年はことのほか少ない。以前はここにもあそこにもたくさん咲いていたのに・・・。もう、山の花の群落を見るには、北海道の山しかないのか・・・。これまで何度も通った日高の山ではヒダカハナシノブが少しではあるが咲いていた。ところが今年はあるはあるは、それはそれは凄い光景であった。なにせ沢以外に林道脇に夥しいヒダカハナシノブがあって、これぞまさに「フラワーロード」と言えるほどだった。ただヒグマも普通に通行するので注意が必要だ。


大樺沢のミヤマハナシノブ

 大樺沢を下りいつもは簡易トイレが設置されている二俣に着くと、まだこれから登ろうという人たちが多く休んでいる。そこをスルーして広河原へと急ぐ。中央高速小仏トンネルの大渋滞にはまらないようにするためには少しでも早く山を下りたい。あらん限りの力を振り絞って?歩く。誰かいつも後ろを一定の間隔で着いてくる人がいる。単独の年季のいった女性であった。ペースメーカとして使われているのか。あと2~3分で吊橋だというところの追い越しができるところでスルッと前に出てすたすた歩いていく。バスやタクシーの時間もあるので急ぎ足で行くとその女性はタクシーにめがけザックを投げ出すようにしてタッチの差で最後の座席を占める。お蔭で次の交通機関は30分後のバスとなった。中央高速は相模湖から先高井戸ICまでの大渋滞であった。桃の木温泉で汗を流していた時間も悪かったか。


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