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花がこんなに咲いているのに 誰も登らないヌカビラ岳
 (2013)
(2013/ 6/17)


エゾオオサクラソウ


 6月17日・月 (その1)  

 道の駅「樹海ロード日高」に隣接するコンビニが午前5時からやっていることを知らずに、同6時まで車で開店を待つ。昨晩は飲まず食わずで寝てしまったし、当座の食料を買い求める必要があった。そのおかげで、林道に入るのも遅れてしまった。出発直前までは林道ゲートの解放がいつになるか森林管理局は開示しなかったので、書面で入林申請し許可を得ていた。実際はゲートは開いており今季の入山者はわずか4人程度であった。その入林者も泊まりの予定の者はおらず、北海道の夏山シーズンが始まったというのに低調極まりない。


千露呂川

 東電ゲートまでの林道の路面は落石は少なく、崩壊もなく、なんら通行に支障はない。スムーズに東電ゲートに到着する。東電ゲートからほぼ登り一辺倒の林道を、レンタサイクルを押して進む。昨年10月にこのルートを使って、ヌカビラ岳〜北戸蔦別岳〜幌尻岳を往復した。その際、林道脇の岩壁にソラチコザクラがあるのを確認していたのでもしや咲き残りでもあるのではと注意しながら歩くと、2か所にその植生を見る。咲き残りのソラチコザクラもそこそこあったほか、その周辺ではヒダカハナシノブ、ミヤマハンショウズル、エゾオオサクラソウが見られた。ただ、ヒダカハナシノブは遅れていてこの先では開花株はまったくなく、いつもはこの辺で咲いているノビネチドリの開花株は1株しか見つけられなかった。


ソラチコザクラ (千露呂川林道)

 自転車を押しながらの苦行も、東電の取水施設で終わった。自転車を登山口に置いて二岐沢沿いを進む。前者の足跡は2人分あったが、一人分はすぐ踵を返し、もう一人分もその先ちょっと面倒な渡渉地点で引き返していた。こと左様に今年の北戸蔦別岳登山ルートの沢は増水気味で、ここの流れで先の渡渉の場面を想像できないと登山の継続は消極的にならざるを得ないだろう。


ミヤマハンショウズル

 一方、2010年8月には、この沢で札幌の登山ツアーの12人が遭難し、ガイドを除く8人がヘリコプターで搬送されている。そのツアーの日程を見ると、取水口で前泊し、実質1泊2日で北戸蔦別岳を経て幌尻岳を登って来るというもので、それは、慣れた登山者でもなかなかハードな行程というものではないか。それを寄せ集めの集団でやるということはなかなか難しい。それだけの人数を収容できるテント場は七ツ沼以外にない。また、遭難前日、北海道には4つの低気圧が取り囲み当日の天気図は、前線を伴った低気圧が北海道を通過している。そしてその日、8月1日の降水量は日高町で39.5oを記録していることから、山ではもっと降ったことだろう。


ヒダカハナシノブ

 今回の北戸蔦別岳は、5日間の北海道の山登りの最後となる。北戸蔦別岳の頂上にテントを張るのを最大の楽しみと計画してきた。ところが、6回目となる北戸蔦別登山にも暗雲が漂ってきた。天気予報を聞くと、北海道に気圧の谷がかかってきて日本海側から移動してくるというのだ。降水量は少ないものの北戸蔦別岳頂上で天候が崩れた時の風の強さは半端じゃない。そこで、装備はテント泊+アイゼンとし、1日目の昼までの予報が変わらなければ午後2時の地点で下山すると決めて二岐沢を遡ったのだった。


二ノ沢

 二岐沢の水量はいつもより少し多い程度だった。頻繁に渡渉を繰り返す必要のある二ノ沢はもうちょっと多い程度だが、うまく渡れば登山靴に浸水を許すようなことはない程度だ。苔の生えた岩(石)で滑らない限り・・・。北海道は雪解けが遅れたという。しかし、二ノ沢上部の尾根への取付き口にある滝の前後の雪渓はこれまでと変わりがない。その先の登山道はトッタノ泉のずいぶん手前から雪が残っており、花々の芽吹きは遅れている。その雪はヌカビラ岳手前の尾根まで続いているが、登りではアイゼンがあった方が楽かなという程度である。


エゾノリュウキンカ (二ノ沢上部)

 薄日が射す中を登る。しかし、夕張岳方向から十勝岳方向の上空には真っ黒な雲が流れている。幌尻岳方向も重い雲が立ち込めている。午後1時30分までにヌカビラ岳に着き30分間の花見、午後2時には下山に取り掛かることとし、先を急ぐ。ヌカビラ岳を前にして雪渓にしばらく前に人が歩いたと思われる痕跡がある。しかし、ハイマツ帯に入ると人が通ったという足跡などはない。そして待望のヌカビラ岳の橄欖岩に着くと、登山道のあちこちにカムイコザクラが咲いている。どれも真紅で咲いたばかりのものだった。まだ、蜂も訪れてはいない。

 


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