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南アルプス/茶臼岳〜光岳往復 (2013)
(2013/ 8/22〜24)
茶臼小屋〜光岳〜茶臼小屋 (2日目)


仁田池周辺の木道


 2013年8月23日(金) 


 よく寝た。4時前に目が覚めたので、シリアル+スキムミルクの至って簡便な朝食ののち、光岳に向けて出発する。外は真っ暗闇の上濃いガスが流れている。ヘッドライトの光を収束する度合いが高いブラックダイヤモンド・ストームを装着して稜線に出る。茶臼岳の手前で挨拶をして無口かつ無表情の男性を追い抜く。茶臼岳の頂上を過ぎ岩場を下りていくとザレ場を下ることになる。ちょっと意表を突かれたので、GPSを見てみる。ルートは正しかった。そのうち灌木帯に入り込み、木道があって優しい雰囲気の道を進むと、暗闇の中に仁田池がわずかに確認できる。そのまま希望峰に進むが仁田岳はスルーし、南アルプス特有の過密なもやしのような樹林帯を易老岳に向かう。途中、3人のパーティが休憩している。


南部特有の様相

 濃霧の三吉ガレでは展望がないので、樹林帯をなおも先に進む。鞍部の三吉平でいったん心を落ち着け、イザルガ岳の分岐、静高平の入り口までの標高差約300mのガレ場の急登をこなす。静高平の快適な木道が終わると目の前に光小屋が見えてくる。木道が終わった登山道脇に大きなゴミ袋(買い物袋)が落ちている。今日は光小屋からの下山者と多く出会った。前から「ちゃんと見て歩け」と学生を引率しているようなリーダーの声がする。帰路にこのゴミがそのまま残っていれば持って帰ってもいいかなぁと考えながら小屋に向かう。


三吉平から静高平の間の涸れ沢にはトリカブトが群生

 光小屋に着いて先に進もうかと考えていると、ちびっこ登山家が到着する。自分より1時間後に茶臼小屋を出てここで抜かれるとは・・・。飄々と光岳に向かって行く後ろ姿は、山を舞う蝶々のようだった。光岳の頂上から折り返し、小屋に戻るとちびっこたちは小屋の中で朝食を摂っている。蜂にさされ膨らんだ手、こけて打った頭の傷、腕の傷、膝の打ち身複数・・・。もう一人のおじいちゃん(私)相手にたくさんの話をしてくれ、たくさんの笑顔を見せてくれ、他人の孫ながら目にも入れてみたいぐらいの可愛さである。(本当のおじいちゃんは、山では超スパルタで気を引き締めさせているとのこと。)


光岳

 そのおじいちゃんに、光小屋に着いたとき「これ落とさなかった?」とゴミ袋について聞かれる。ちびっこ登山家が「うんちの匂いがする。」というのでおじいちゃんが中身を検め、うんちは入っていないことが分かったのでザックに入れて持ち帰るという。そのことを知った小屋番さんが、「置いて行って。」というが、おじいちゃんは譲らない。そのうち、ちびっこ登山家より2時間先に茶臼小屋を出た(途中で追い抜いた)3人組が到着する。その事実を知って3人は驚天動地のごとく感心し、あるいは恥じることしきりであった。天候の悪化が予測され、3人は小屋泊をキャンセルし急きょ下山を決定する。小屋のおかみさんは「今日ここに泊まると、今夜の天気からすれば明日は易老渡からの林道が崩落で通れなくなるから、今のうちに下りなさい。」と勧める。(その言葉通り翌24日、林道は通行止めとなったようだ。)


イザルヶ岳へのアプローチ

 ちびっこ登山家が「また会おうね。山を一緒に歩こうね。」と言いながら私にバイバイして先行していく。悪天候を避けるため、今日中に横窪沢小屋まで下りるとのこと。イザルガ岳にでも寄って行こうと脇道にそれる。頂上では展望はなかったが、帰路の下り斜面でガスが取れ、光小屋が姿を現す。三吉平までのガレ場の斜面をだましながら下り、三吉のガレで単独者から「易老渡へ下りる尾根はどれでしょうかね。」と聞かれる。易老岳があの辺だから、その尾根が・・・。希望峰に戻るころにはガスが湧いてきた。どうにか仁田池の姿が拝める程度のガスになって、茶臼岳の登りのガレ場辺りからは視界が失せていく。頂上を越えるとお先真っ暗(真っ白)と言った様相で、方向指示版の手前でGPSを取出し、茶臼小屋への分岐点を確認する。雨が落ちてきた。早く小屋に着いてビールを確保し、源頭で日本酒とともに冷やし、トイレを済ませ、ずぶ濡れにならないうちにテントの中に落ち着かなければならない。


光小屋

 どうにか小振りの雨で済んだ。そういうことで、ビールも飲んだし寝るに限ると5時には横臥する。午後8時過ぎ、テントを叩き付ける激しい雨で目が覚める。携帯で雨雲の様子を見ると、100mm/毎時の雨雲がスポットで茶臼岳付近をうかがっている。これが過ぎ去れば安泰かと高をくくって寝ること数時間後、閃光と雷鳴が同時に小屋周辺を襲う。テントは何度も雷のスポットライトを浴びせられているようだ。しばらくして雷が去ると、間断のない土砂降りが続く。しっかり閉じたはずの換気口のわずかなすき間から雨が吹き付けて入ってくる。張り綱は岩で強固に、テントのボトムはグランドシートとボトムの間に雨水が入り込まないように工夫したことからボトムからの浸水はない。再度携帯で雨雲を見ると、石川県から伸びる長い雨雲が掛かってきている。本体とフライシートが接触しているところから水が落ちてくる。雷が去ったから死ぬことはないだろうと、湿ったシュラフのファスナーを閉めて寝る。 


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