[HOME][2日目


宗屋敷尾根〜酉谷山避難小屋 (2015)
2015/ 4/17〜18


酉谷山避難小屋


 4月17日 (金) 

 いつもなら車で出かけるところだが、春の心地よい風を浴びながら山を歩いた後は電車に乗って地酒にビールもよかろうと、西武池袋線に乗る。早朝の池袋駅は通勤客ばかりで、70リットルのザックを担いで1人で歩くのは浮いている感じがする。終点の西武秩父駅から少し歩いお花畑駅で秩父鉄道に乗り換え、武州日野駅で下りる。カタクリの自生地にカタクリは残っているわけはないが、今の季節の花はないか自生地を歩く。シロバナのイカリソウ、ホウチャクソウ、チゴユリが咲いていたが、以前あったイカリソウの群落は、今年はまったく花を見かけることはなかった。


シュンラン

 宗屋敷尾根の取り付き口までは約1時間かかるが、路傍に、地元の方の家々に様々な花があり飽きることがない。特に杉林の林縁に咲くシロバナノエンレイソウは特筆すべき花であったが、その杉林が里山再生の名目で皆伐されて地表が掘り返され、、ツツジなどの貧弱な苗が植えられることによって消滅してしまった。過去、北海道で自生地のサクラソウを探し歩いた時期があった。車が頻繁に行き交う主要道路の側溝脇にスズランやサクラソウが咲いているのを見たが、そのような場所は昔のままの土壌が保たれていた。


ハルリンドウ

 宗屋敷尾根の取り付き口(と言っても、なんらそのことを示す目印の類はないが。標高:約465m)で林道から離れようとすると、作業用の軽トラが通りかかり、怪訝な顔で見られる。こんなところを大きなザックを背負って登ろうとする独り者は不審者に見られても仕方なかろう。尾根に乗るとあとは日の射さない植林帯を延々と登るだけである。とにかく我慢の連続となる。


カタクリ

  それでもところどころにまばらに咲くカタクリが、ちょうど見ごろなのでいい。植林と落葉広葉樹の境界線のすき間に射し込む陽ざしをどうにか受け止めて生き延びていると言ったギリギリの環境にあるから、疎らながら花を咲かせるカタクリが愛おしい。この山域のカタクリはどこも同じような状態にある。

イワウチワ(シロバナ)

 よく”シロバナ”だからと言って稀少扱いする向きがあるが、そのようなことには頓着しない。しかし、祠の先の急斜面にあったイワウチワはこの尾根唯一の塊りで咲くイワウチワだったので急斜面を下りて見てみた。通常のピンクのイワウチワは尾根上に咲くから踏み付けにもあって矮小化しているようだが、この斜面のイワウチワは白いのもピンクのものものびのびと大きな花を咲かせている。 



急斜面のイワウチワ (ピンク)

 登山道、と言っても踏み跡と同クラスと言ってよいが、それ(宗屋敷尾根)が岩場を通過し上から下りてくる大きな支尾根に「T」字状にぶつかり、「支」尾根を右に折れて登って行くとアカヤシオツツジが盛大に尾根を彩る。どんどん標高を上げて行くと核心の大きな岩場のピークを巻きながら最後に熊倉山からの稜線の道に出合う。


 アカヤシオツツジ

 ここまでほとんど休憩を取らずに来たから汗も相当かいたが、早く酉谷山避難小屋に着きたく先を急ぐ。稜線の登山道にはテープとともに大嫌いなと言うより嫌悪感を覚えるほどの数の荷造り用ビニール紐が括り付けられている。100均程度のものと言う値段より、そのようなものを好きで歩いている山で括り付けて良しとする気持ちの貧しさを憐れむ。


バイカオウレン

 大血川分岐に出合って小黒へと向かう。小黒はもう魔境ではないと安易に考える向きもあるが、それはいくつかの小さな手作り標識があるからだとか、迷い易い尾根にロープが張られたからと言うのでは考え違いではないか。そのようなものがないと下れない(登りでも道迷い遭難が跡を絶たないが)というのであれば、ここは依然としてそもそも論に立ち返らなければならない場所ではある。英語を習っているときに、イスラエル出身の教師から「明日、職場に行ってみたら建物はなかったと言うぐらいの認識は持って然るべきだろう。」と言われた言葉を思い出す。


酉谷峠からの酉谷山避難小屋

 平日ながら天気もいいし、避難小屋には先客はいるだろうな。でもまだ2時ちょっと過ぎだし・・・。小屋の扉を開けると男性がラジオのスピーカーから大きな音を流し寝入っている。ご挨拶をすると「遅いね。」と言って横になったままラジオの音を流している。
 水場で冷やしている日本酒とビールを取りに行くと2人(tanukimi さんたち)が下りてくる。今日の小屋の宿泊者がこれでそろった。2人と山の話をしていると、「北海道の山が好き」「エサオマン〜カムエクの縦走をしたい」とのこと。さらに話が盛り上がることになった。2014年に「エサオマントッタベツ岳〜カムイエクウチカウシ山」を縦走したネット上の記録は、この老少年のものを含め2件しかなく、このほか記録はアップしていないが1人が同じ行程を老少年の次に歩いている。


[HOME][2日目