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酉谷山避難小屋の水場の構造
2018/ 7/23


さきごろ、掲示板「酉谷山避難小屋ノート」に、Nさんから水場についての投稿があったので、この際、心ある皆様に水場の構造を知っていただきたく、このページで取りまとめたいと思います。この水場の構造を知ると、2度とほしいがままに触ってはいけないということがよくお分かりいただけることと思います。


2017/12/5の水場

真冬の水場です。1秒か2秒に一滴落ちてきています。この季節にこれだけの水が出ていることは幸運なことです。水場からいつも水が採れると思うのは大間違いで、予備の水を相当量担ぎ上げなければならないということは基本中の基本です。

上の画像を見ると美的観点からするとゴムシートの形状と石の突っ込む具合がめちゃくちゃです。しかし、こうもしないと一滴の水さえとれないときの緊急措置であり、この水場の仕組みや構造が分からない人がやってはならないことですので、相当の覚悟を持ち合わせない人はさわらないようにして下さい。


理想的な取水口の状態

夏場の水場です。ゴムシートの配置、石組み、ステンレス缶の清掃具合とも理想的ですね。美しい水場の景色です。ものごともそうですし、社会を見渡してもそうですが、機能と美がともに備わっていないとへ心の満足が得られませんね。だから、水は出ていればいいじゃないかという目先にことだけを考えて、水場を汚くいじられるとがまんなりません。いじくりまわすときは、その目的に絞って山での時間を余裕をもって使える人だけがやるべきです。


三条の小屋への道

埼玉のNさんの著作物を無断で、勝手にコピーしました。お許し下さい。
基本構造をピタリと正確に表現されています。
さすがです。
このぐらいの洞察力、推察力のない人は水場に関与する立場からほど遠い人と言えます。



【実際にこの水場の改修は自分がやりたいとちょっとでも考えている方に】
コンクリート桝から湧出口までは2〜3mの長さがあります。
その距離の間には大きな石をたくさん載せており、さらにすき間を無くすように土砂を被せています。

実際問題として、水の出をよくしたいとする場合、「ゴムシート(上)」までの土砂を取り除き、また元に戻さなければなりません。よって、最低限小型のしっかりしたシャベルがないと埒があきませんし、園芸用のミニシャベルとか、まして素手では太刀打ちできません。
(現在のところ適格者は「Nさん」だけかと・・・。)

やるとしたら平日の朝、同宿者がいなくなってからということになりますが、自然公園法違反だとか、あ〜だこうだと難癖をつけられますので、現実的な問題としてはやめておいたほうがよさそうですね。

また、手を加えたことによって万が一にも水の流れを得られなくなってしまったのでまた時間がかかるかもしれません。そんなことも考えたら、誰もいなくなって水を採る人の邪魔にならないころ合いを見計らってからやるということが大事なことです。



山で水が採れないとき足してしまったとき、どれほど大変なことかということは、それほど危機的状況に遭遇しないと分かりません。その点、酉谷山避難小屋の水場で水が採れなかったとしても死にはしません。たった1時間ほど、旧酉谷山避難小屋まで下りれば水はいつでも採ることが可能です。

酉谷山について言えば、たかだか少しの水を担いでいけばいいだけのことですし、それが嫌なら行かなければいいだけのことです。



渡渉や沢の遡行が伴う登山でどのような準備をしようとも、想定外の困難に直面します。そんな山が少なからずあります。そのようなことになったら法律も規則も常識も、自然保護もときにいは身の安全の確保の観点からはスポイルされるということです。

2009年にカムイエクウチカウシ山から1823峰を抜けてコイカクシュサツナイ岳まで縦走した時、とんでもない藪の中に捕らえられてしまい、にっちもさっちもいかなくなってしまったのでした。

日高の山では増水した時の渡渉のために竹竿のような木のお世話になることもあり、そのようなことを念頭に、軽量でコンパクトな、そして切れ味のいい鋸の携行は非常手段としては不可欠なことです。

そのことを当時参加していた北海道のメーリングリストでちょこっと書いたら、犯罪者扱いの非難の言葉をいただいたことがあります。そのままハイマツやミヤマハンノキのジャングルに捕らえられていたら死んでしまいますので、脱出のための動線確保は刑法で言う緊急避難なはずなんですが、偏狭な道民もいるもんだなと思ったのでした。実際行ってみれば分かるのですが、地元でありながら恐れて空想登山しかしない人々の反応なのでした。


テントの後ろの白いところは増水した沢の流れ

前日からの降雨で増水したエサオマントッタベツ川を渡渉することは命に関わると帯広八千代ユースホステルのオーナーさんに諭され、渡渉点まで進んだところで沢が減水するまで24時間停滞しました。テントを張ったすぐ後ろがハレーションを起こしているように見えますが濁流が飛沫を散らしているのです。

テントで寝ているとき、ヒグマにテントを襲われた夢を見ました。あまりの轟音がそのような連想をさせたからなのでしょう。



ようやく減衰したがここを突破するには体を支える竿が必要なエサオマントッタベツ川の流れ

このときは柳のようなヒョロッとした細長い木を4mほどに切らせていただいて、渡渉ラインの下流に竿を突き刺し、足場を一歩一歩確保しながらの渡渉でした。沢を右岸だけ左岸だけ通しで歩くことは通常あり得ませんね。

その時は、このような状態の渡渉点を10回近くクリアしてからテントを張るべきカールに無事到着したのでした。このときの罰則は、木を切る時に鋸の歯で左手の親指を深く切ってしまったことです。


話しを酉谷山避難小屋の水場に戻しましょう

Nさんのスケッチを元にもう少し詳細にお伝えしたいのがゴムシートの配置です。
水は岩盤の途中から流れ出て、2mほどの緩斜面を伝わってコンクリート桝に到達します。
水量が一定程度あるときはロングのゴムシートに水を受けてコンクリート桝に誘導しています。

水がロングのゴムシートで受け取れず、その下を伝わっていく極めて細〜い流れはコンクリート桝の手前の窪み(凹み)に溜まって浸み込んでいくか水滴とはならず、次の画像の白い線の付近に染み出て、水を得るような状態にはまったくなりません。

そのために「短いゴムシート」が極めて重要な役割を果たします。凹みに敷いた短いゴムシートの上に溜まった水が、いつかオーバーフローしポタリポタリとステン缶の中に落ちていくのです。
めでたしめでたしです。



Nさんの画像を拝借、お許しを。

今回は本当のことを言いましょう。
この凹みは水が流れない(動かない)ときもあります。

するとそこに土壌生物が住み着きます。
家庭菜園をやっていますが、有機栽培を続けていますので畑にも土壌生物がいっぱいいます。
ハクサイやレタスなどの葉と葉の間にもよく住み着いています。
適度な水分、遮光具合が気持ちいいのでしょう。

私は、スーパーで売っているような外見上清浄な野菜を好みますので、このような土壌生物が付着していたら家には持って帰りません。
食べ物にそのような物が着いていたら気持ちわるいですよね。

酉谷山避難小屋の水場も、凹みがよどんだ時には土壌生物には住みよい場所になります。
何度も何度も「ミ〇ズ」ほかが流れ出てきたのを見ています。生きているのも死んでいるもの・・・。

しかし、山登りの時は悠長なこと、きれいごとは言っておられませんので、その水も生のまま飲んでしまいます。
ペテガリ岳に登ったときに水を切らしましたが、さすがにドブ池の水は飲めませんでした。暴風雨を避けるために雪倉岳避難小屋に泊まった時に、残りの水をキープするために登山道脇に溜まった水を飲んだら大きな下痢に見舞われました。
その点、酉谷山避難小屋の水場の水は「安心・安全」ということでしょうか。


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