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 兵どものが夢の跡 矢岳/カタクリ受難
2013/ 4/26〜27


タワ尾根と富士山


  4月27日(金) 2日目  

 同宿となったお二人はいずれも蕎麦粒山から日向沢ノ峰を川苔山へと下るとのことで、先に出立して行った。昨日は寒気の流入に伴う雷に追いかけられながら雨に打たれる前に小屋に入った。一転して快晴の爽やかな朝を迎えた。窓や戸を開け放して清々しい空気を流し込み、お礼奉公を始める。


水場は順調

 最後に水場で水を含んで長沢背稜に出る。天気予報では今朝の気温はマイナス2℃とのことであったが、そこまでは下がらなかったものの0℃というピリピリした空気を切って矢岳への分岐点から坊主山の鞍部に登る。分岐と鞍部には赤テープがあるが、このコースは迷いやすい屈折点などの核心部に若干のテープが付けられているものの饒舌ではなく、マイナールートにふさわしい景観を維持している。そうは言っても残置された汚らしい褪せた荷造り用のビニール紐も散見され、美的ではないところもある。


酉谷山避難小屋

 立橋山の急登をこなし、赤岩ノ頭に登り悪夢の矢岳に着く。昨日の集団の足跡を確認すると矢岳の頂上へは西から登ってきたとみられ、踏み跡が顕著となっていた。そのコースは見通せるところにはこれでもかというほどビニール紐が木々に括りつけられている。それは昨日今日付けられたものではなさそうである。頂上には「このコースを下るな」といった内容の警察による注意書きがあったが、その状況は過去のものであるようだ。


滑落禁止

 矢岳を辞して篠戸山へと向かって急降下すると、青年が大きなザックを背負って登ってくる。一杯水避難小屋まで行くと言って、酉谷山避難小屋の水場情報を求めてくるから、水を得るために寄るのだろう。矢岳からは昨日の登りの時と違って道がすっかり出来上がっていたのは、大勢の人間が歩いたのだから当たり前のことだ。ただ、尾根の踏み跡ににたくさんのカタクリがあるということを誰かが気付いてもよさそうなものの、足許には頓着しなかったようで、ここから先、クタシノクビレまでの約2時間のコース中のカタクリ(の幼苗)の多くは登山靴の犠牲となって息絶えていた。1人が30回歩くのも30人が1回歩くのも植生に与える影響は同じだという人もいるようだ。それはそれで一つの考え方ではあるが、自然治癒力の観点から言っても集団となった場合の個々の注意力から言っても同列には論じられない。矢岳のカタクリは標高500mほどから頂上近くまで散在し、稀有な広がりを見せている。このようなところは首都圏では見られない景観であり、そのことを念頭に置いて来年も再来年も美しい花々を楽しみたいと願うばかりだ。やはり集団登山の大きな問題点は、大ドッケのフクジュソウ然り、このような場合に顕在化するのであろう。


矢岳からの下りで

 今日は、下りなのに体が重くスピードが出ない。篠戸山で武甲山や大持山の景色を見ながら大休止(15分)を取る。明るくて気持ちのいいところだ。斜面の植林がすっかり伐採されて陽当たりがよくなり、とはいっても照らされてばかりでは生きられないのだが、カタクリが植生を見せるようになったのだろう。カタクリがちょうど見ごろとなっている。


篠戸山

 篠戸山での休憩にけりをつけ、重い腰を上げてクタシノクビレに下りる。大反山からハイカー3人が下りてくる。若御子山から大反山に登って、これから下山するという。最終人家でお礼を述べて庭先を通らさせてもらって舗装道路に下りると、軽トラックが止まって若御子山への道を聞かれる。他県ナンバーの車で、明日若御子山へ登るので、登山口を確認しに来たとのことだった。


これほど標高を下げてもまだカタクリがたくさん

矢岳までの様子を聞かれたので、2〜30人の集団に頂上で会ってびっくりしたことを言うと「それは新ハイキングだよ。」と言う。いろんなことを知っている山好きな方で、山の本でも多くの知識を得ている方だった。ようやく武州日野駅に辿りついて秩父の街に向かった。名物の豚味噌丼の店はとんでもない長蛇の列を作っていた。


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