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とっておきの山 ヤマシャクヤク (2010年)

 2010年5月19日 


 群落地〜2 

 
メインの群落地から新たな場所へ移動したものの、
そこには何もない。
そこは少し陰鬱な感じの場所であったから、
すぐに明るい場所を探す。

曽野綾子は、今日の新聞のコラムで
「作物は日当たりが必要だが、(アフリカの暑い土地では)日陰も非常に大切だった。」
「水と肥料もなくてはならないものだが、風通しも実に大切で、」
「風通しの悪い畑は、個人の自由を圧迫する社会主義政権の恐怖を感覚的に示していた。」
と書いている。

ここの群落地に当てはめると、
ヤマシャクヤクがのびのびと美しく咲く自由を阻害されると言うことか。

 
ヤマシャクヤクの咲く場所はまさにそのとおり。
植林地からちょうど開けた場所に出ると、
ヤマシャクヤクが点在している。

明るすぎず、暗すぎず。
乾きすぎず、湿りすぎず。
尾根から遠すぎず、近すぎず適度な風が通る。

当たり前と言えば当たり前ながら、
少しの例外を除き、
ヤマシャクヤクもこのようなところ、
すなわち居心地のいいところにしかない。

   ヤマシャクヤクはどれもが[間もなく咲きますから・・・。」
と言っていそうだ。
その中で一つだけ綺麗に花を広げている。

去年はどうしてこの場所を見つけることができなかったのだろう。
今日は探せば探すほど新たな出逢いがある。
そして今年のヤマシャクヤクは力強い。


みな花開きたいのに、
今日の雨でためらっている。
どれもが花開きたいと思っている。

 
この花たちの先は暗い樹林となる。
だから、この樹林の中ではいくら探しても、
シャクヤクは見つからない。

暗い風通しのよくない場所には、
希望も未来もないとでも言うように、
ヤマシャクヤクはポッと開けたところで思いっきり空気を吸っているようだ。

 雨に打たれたヤマシャクヤクは、
何か大切なものを守っているように花弁を閉じている。

「今はちょっと時間が過ぎるのを待っています。」
「晴れる日もありますから・・・。」


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