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ツクモグサも露天風呂も 本沢温泉から登る横岳
2008/ 6/ 7〜8


■ 6月7日 (1日目) 


横岳のツクモグサ

 メール
  5月末に、権現岳から赤岳をテントを担いで歩き八ヶ岳を堪能したので、この次は趣向を変え日光の女峰山に登り1、一里ヶ曽あたりでテントを張ろうかとほんの数日前まで考えていた。
 ところが、このところクライミング三昧というHさんから、「5月31日、6月1日と八ヶ岳に行ってきた。目的はロッククライミングで、大同心と小同心という横岳の西面にある顕著 な岩壁を登攀した。その小同心ルートに、蕾〜満開のツクモグサがいっぱい咲いていた。4、5株ずつがあちこちの岩場に咲いているので、うっかりすると踏みつけそうになり、足場の確保に気を使っ た。」というツクモグサの大ファンの自分には刺激的なメールが入った。

 今回の八ヶ岳のルートは、冬に行きたかった本沢温泉から硫黄岳を登って,横岳さらに三叉峰の先まで行ってピストンするツクモグサ花見のコースである。本沢入口から本沢温泉の間は樹林帯でもあるし、ホテイランやイチヨウランなどは咲いていないだろうかとの、多少欲の張った計画ではあるものの、ツクモグサとのご対面を除けば、本沢温泉の日本一の高所にあるという露天風呂に入ることが大きな目的であった。
 高所にある露天風呂といえば大雪山の中岳温泉が思い出に深い。あの時は早朝にもかかわらず女性2人の出現によって温泉を後にしてしまったっけ。


同じ株のツクモグサ

 不眠不休?
  前々日はちょっとした余分な仕事があって、終わって眠りに就いたのは午前2時半、朝5時過ぎにはまた起きて仕事を始めなければならなかった。午後に自宅に帰り、遊んでばかりだからとデッキを掃除したり楠に登って枝を払い、葡萄の蔓を整理したり、そして山の準備をするともう午後11時になっていて、翌日の起床は2時半なのでまたまた睡眠時間は3時間少ししかない。
 目覚ましを2個セットして、無理やり時間通りに起きて、早朝の関越自動車道に乗る。

 ベニバナイチヤクソウ、キバナノコマツメ、クリンソウ、ミズバショウ
  本沢温泉コース上に咲く花の前知識もなく駐車場のある本沢入口に着くと、離れた林床にピンクの花が見えた。ザックを背負って林道を歩くとバラバラっとベニバナイチヤクソウが見える。この林道は尾根を一直線に本沢温泉に向かっているのだが、四輪駆動車以外の通行は遠慮することとされている。周囲は笹が生い茂っていて花が咲く環境にはない。淡々とゲートまで進むとその先はシラビソやコメツガだろうか、林床が苔むしているような場所になるが、ラン科の植物がないかと探したものの何も見ることはなかった。道が水平になるころ、年数の経った小さな崩壊地にキバナノコマツメが咲いている。「いがりまさし」さんの「日本のスミレ」を見るとキバナノコマツメは和名に唯一「スミレ」という名を持たないスミレで、高山で見られるが、タカネスミレと見間違えられやすいと書かれている。てっきりヤツガタケキスミレと思い込んでしまっていた。

  
キバナノコマツメ                              ミズバショウ

 みどり湖への分岐手前に、思いもかけない花があった。その名はクリンソウ!大群落とは言えないが北海道以外の自然界で見たのは北岳と清里以来であり、感激物だった。ただ、開花にはまだ早く数株が花茎を伸ばしているだけであった。次の沢筋に目を凝らすとクリンソウが所々に見え、それがピンクの花を咲かせると、さぞかしいい感じだろうなという光景であった。さらに足を進めるとなんとミズバショウが咲いている。数は少ないが山肌から流れる水の流れに沿って点々とあって、そればかりかクリンソウをたくさん従えている。そのクリンソウは深く落ちる谷まで生えていて、開花をまっている。本沢温泉の小屋にザックを預け、サブザックで横岳まで行くこととする。

 ツクモグサ、オヤマノエンドウ、コメバツガザクラサ
 「八ヶ岳・霧ヶ峰の花」という本を見ると、八ヶ岳にはキバナシャクナゲ、ハクサンシャクナゲ、ヤツガダケシャクナゲの3種類のシャクナゲがあるらしい。本沢温泉から夏沢峠への登山道脇にはまだ花芽も硬い背丈をゆうに越すシャクナゲが至るところにある。やまびこ荘から硫黄岳に硫黄岳山荘に至るザレ場にはコマクサもヤツガタケキスミレも何も姿を見せてはいない。
 稜線はやっと冬が終わろうとしているところだ。横岳手前の鎖場、「カニの横ばい」の西側をのぞくと、数は少ないが、今年初めてのツクモグサに対面することができた。

ウルップソウを従えたツクモグサ  クリンソウ畑

 横岳最高点の奥ノ院の南側稜線脇に、登山道からは外れるがツクモグサの集団があって、厚かましい人はチョウノスケソウやウルップソウを踏んでいることに意を介さず写真に収めている風景は昨年と変化のないところだ。杣添尾根が派生する三叉峰から女性が上がってきた。
 「とんでもないほど雪がありました。イチヨウランもまったく見かけませんでした。」
とお疲れの様子だ。
 さらに鉾岳を過ぎると3か所目のツクモグサの場所になる。ここには1か所だけツクモグサを写すのに植物を踏むことのない場所がある。ウルップソウも「間もなく咲きますよ〜。」と言ってツクモグサに寄り添っている。梯子の掛かった岩場にオヤマノエンドウとコメバツガザクラが1株づつあって、寂しい稜線に文字通り花を添えている。

 イワカガミ、トイレ、水場
 天気予報が変わって天候が悪くなってきた。ツクモグサはまだ花弁を開いたままでいてくれているが、雨にならないうちに下山しテントを張らなければならない。風が強い。空も真っ暗になってきた。ただ雲はまだ稜線の上を流れているので、雨にはなっていない。
 崩壊地で外国人の女性とすれ違う。
 「これから登るのですか。」
と聞くと、
 「食事まで時間があるので、ピークまで行ってきます。」
と言うが、もう午後4時である。
 あと少しで本沢温泉というところのザレ場にイワカガミが咲いている。赤茶けた谷には露天風呂が設えられている。数人が入浴している。小屋でザックを取り野営場に行ってテントを張る。高校生の登山集団のテントが数基、単独者のテントが2基、家族連のテントが1基張ってある。
 野営場にトイレはなく、山小屋の一番奥登山道脇に使用料50円の簡易トイレが2基置かれている。テント泊者は野営場からここまでしばらく歩かなければならない。水は小屋の前の直接飲むことができる流水か、小屋から2番目の流れの水を沸騰させて使う。 


イワカガミ

 露天風呂
 相棒のテントを大樹の下の平坦でクッションのよい場所に張り、ビールとワインを沢水の流れに浸して露天風呂に向かう。「本沢温泉野天風呂 雲上の湯」からは硫黄岳が眺められることになっているが、厚い雲に覆われている。湯船には高校生を中心に7〜8人がいて、順番待ちしている人も10人以上に上る。
 優しそうな顔をした外国人の男の子も湯船に入っている。一人の高校生は湯船を出ると湯川の流れに入ったものの、たぶん激烈な冷たさであろう、すぐ戻ってきた。
 外国人の彼も続いて川に入る。真っ赤になった体を川の急な流れに沈めているが、やはりすぐ戻ってきた。あれれ、湯船に入ろうとしている姿を見ると、その人は「彼」ではなく、「彼女」だった。この露天風呂は、女性は水着着用とのことだったはずだが、たぶんその用意がなかったのだろう。あっけらかんと、他の人と話している。
 男の子たちは次々に入れ替わって湯船に余地ができたので、我輩も湯船に入るが
 「ノルウェーに温泉はありませ〜ん。」
とのんびりしたものだ。


標高2150m 雲上の湯

 爆睡
 露天風呂の温度は40度ぐらいだったろうか。夕方の気温は10度をゆうに下っている。テントの中で今日の新聞を読みながらビールを飲みワインをたしなむ。主食はアルファ米だが、酒のつまみやご飯のおかずは用意してこなかった。スタッフザックの中に入っていた「ふりかけ」とインスタントの味噌汁で今日の夕食は終わった。
 まだ7時にならないが、寝袋に入ってファスナーを閉めるともう意識はすでになかった。熟睡まで何秒かかったのだろうか。気づけば午前3時で、露天風呂に入るには少し早い時間であった。


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