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白馬岳から鑓温泉へ(2012)
 7月17日 



雲上の白馬鑓温泉


 夜中の風はフライシートのバンジーコードを切りました。前室に置いたサンダルは飛ばされて、ありません。午前3時に目覚めると、まだ風はビュービューと音を立てています。このまま夜明けを待つかとも思ったのですが、強風下のテントの撤収もやっておかなければと、行動を開始します。パッキングが済むとザックをテントの中に残し、テントを潰します。ポールを引き抜いて、アンダーシートとテント本体ごとザックを包むようにしてトイレに運び込みます。


ミヤマクロユリ

 白馬村村営頂上宿舎のテント場のトイレは、中に入ると入口に広いスペースがあるのでそこでテントを収納し、小屋の朝食の時間まで待ちます。この縦走で初めて小屋の食事にありつきます。どうも食事のバランスが悪く口内炎ができかかっています。体が野菜や具だくさんの味噌汁などを求めています。(多くの小屋で、テント泊者が食事だけを頼むことができるようになっています。料金は高めに設定されています。)


ミヤマオダマキ

 頂上宿舎の食堂のテレビは、白馬村の今日の天気を「晴れ、午後から雨」と伝えています。山域は濃いガスと強風に見舞われていますが、小屋の人は、レーダーに雨雲がないので(午前中の)雨はないだろうと話します。稜線の鑓温泉の分岐から下は雪渓が相当残っているとのことで、頂上宿舎で軽アイゼンを仕入れます。これで、鑓温泉までの雪渓も杓子沢の雪渓も大丈夫?(4本歯の爪のしっかりしたアイゼンは、頂上宿舎では販売のみで1000円で購入できます。白馬山荘はレンタルのみで、料金は700円です。)


ミヤマシオガマ

 もう、食堂に残っているのは私と、隣のカップルだけです。ゆっくりと食事を楽しみ、山の話に花が咲きます。そろそろ迷惑になりそうなので重い腰を上げ、濃霧と強風の稜線に取り付きます。どう表現したらいいのか、この濃霧ではお伝えできませんが、延々とウルップソウの群落が続くありさまは圧巻です。(気象条件が悪く、日本一のウルップソウ畑の様子をお見せできません。2011年のお花畑の様子はこちらからご覧いただけます。)


ノビネチドリと?

  杓子岳のトラバースで、食堂でご一緒だった5人のパーティに追い付きます。花をゆっくり見るのでその後に付き、あの花この花をカメラに収めます。杓子沢ノコルで風を除けて休んでいたこの人たちから、クロユリが咲いていることを教えられます。教えたいただいたことはうれしいのですが、そのクロユリを写そうとするとして足元のウルップソウを踏み付けていますよ。もっと近くにあるんですけど・・・。(朝日岳手前の吹上のコルから鑓ヶ岳の間に確認できたクロユリの植生は4か所でした。1か所は大群落ですが、陽のよく当たる東斜面なため、既に花期は終わっていました。)


チングルマ

 鑓ヶ岳の登りは辛かったですね。小鑓という偽ピークからさらに先が鑓の頂上です。ガスで視界はありませんが、一応トラバースしないで律儀に頂上に向かいます。頂上からは直接登山道に下りられる道があるので、くねくねと下りて行きます。鑓温泉の分岐までの下りでいったんコブを越えますが、その手前のハイマツに隠れて休憩兼現在位置の確認をします。(5人パーティのリーダー?は地図を見て「このコブのすぐ先に下降点になる。」と瞬時に伝えます。GPSで確認していた私は画面の地図上に微妙なコブが表示されず、GPSに落としたウェイポイントでこの先に分岐があることを知るのでした。)


シラネアオイ

 下降点の東斜面はお花畑になっています。ノビネチドリやタカネハヤズハハコ の群落を楽しみます。ここから下は急斜面のガレ場、さらに延々と続く雪渓ということで気を引き締めますが、たったいま咲きましたと言っているほどの旬のコマクサが登山道の両脇に咲いているので、またまたお花見モードに戻ります。(@コマクサの大きな株は登山道脇のザレ場の上部にあります。いくつもの登山靴がそのザレ場を登っているので、その途中にある小さな株のコマクサは全滅間違いなしです。花を咲かせるのに5年もかかるというのに・・・・。A鑓温泉ルートの通行止めは7月13日(金)の朝で解除となりましたが、今年はルート上に特に残雪が多いため、必ずアイゼンを用意するよう注意喚起されています。)


白馬鑓温泉

 長大な雪渓はあるものの、アイゼンを使うほどでもありません。ハクサンフウロ、クルマユリなどの花を楽しみにしていた大出原は雪渓に埋もれたままでした。どうにか雪渓を抜け木陰で休憩していると、白馬グリーンパトロール隊のお2人が登ってきます。この先の鎖場通過際のアドバイスをいただきます。高山植物の開花について話が及んだので、分岐下のコマクサのことにつて話すと、天狗山荘まで行って資材を運び込み、立ち入らないようロープを張ってくれるとのことでした。(2012/7/16付け白馬村山岳情報は、この鎖場での事故防止につき、注意を呼びかけています。この一帯の地質は珪長質岩のようですが、鎖場は蛇紋岩同様スリップしやすい緑色の岩となっていています。)


これぞ源泉掛け流し

 ガスの中といえど、しっかりとお花畑の高山植物を堪能した後、雪渓や鎖場を慎重に下って鑓温泉が見えたのは、頂上宿舎を発ってから4時間40分後、まだ午前10時半過ぎです。このまま下山するに十分余裕のある時間ですが、憧れの鑓温泉で長逗留しない手はありません。続々登山者が到着します。ビールを飲み風呂に入り、風呂から出てビール・・・と、まったり三昧です。小屋に置かれている山の本を読み、周りの登山者と話し込み、「また風呂に入ろう。」などと和気あいあいです。誰もがこの温泉に入りたいという目的で来ています。(平日ながら20人ほどが宿泊し、うちテント泊は3人でした。露天風呂は基本的に混浴ながら男性が独占し、女性専用となるのは19:30〜20:30の間となっていました。)


いい湯だねぇ

 男性陣は、女性が出てからまた風呂に入ろうと盛り上がっています。小屋裏の岩盤から流れ出す温泉の量は豊富です。大きな浴槽で手足を伸ばし心ゆくまで雲上の掛け流しの温泉を何度も堪能したころ、小屋の食事が始まります。同じような目的で集まった人たちとはすっかり、かつ十分に打ち解けて贅沢な食卓の時間を過ごすのでした。


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