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ラッセル・ラッセル 甲武信小屋冬季小屋
2009/ 1/21〜22

2008/12/8〜9の甲武信ヶ岳の記録はこちら



2013/11/26現在、North-NWさんのヤマレコの記録によると、甲武信小屋「冬期小屋」は、登山者の冬期小屋の汚損が理由で開放していないとのことである。マナーもモラルも持ち合わせない一部の登山者の行いによって、そのほかの者が迷惑を受けている。実際に泊まった際の乱暴狼藉を見ると、冬季小屋の使用を拒否されて当然。



2011/12/17現在、甲武信小屋は使用できません。
小屋のホームページによると
 「冬季避難小屋は小屋の事情により、開放しておりませんので、
笹平の避難小屋を利用して下さい。」とのことです。


 1月21日(1日目)


崩壊地はさながら真冬の様相

  2008年の1月、ハプニングにより登山口に着く前に引き返さざるを得なかった冬の金峰山に、今年こそは行ってみようと計画した。低気圧が本州南岸を通ることで山では雪が降るとの予報が出てしまったが、等圧線の間隔が広いので、風は吹かないだろう、万一風が吹いても登山道が樹林帯を縫っているので大きな影響を受けないだろうとの予測で、雪のあるときに一度登ったことのある甲武信ヶ岳を登ることとした。
 
 今回は、北アルプスの山で春までに「寒中テント泊」をしてみたいので、その予行演習のために、甲武信の山中でテントを設営するつもりで装備を整えた。ザックは90リットルにショベル、ワカン、アイゼン、ピッケル、シュラフ2個・・・・。これらで重くなったザックを背負い、08時ちょうどに西沢渓谷の入口にある道の駅「みとみ」を出発する。空はどんより曇っているが、戸渡尾根方向は薄日が射していて尾根筋を見渡すことができる。


新道の途中で


 徳ちゃん新道の取り付き口にある西沢山荘でアイゼンを装着し、急な坂をしばらく黙々と登ると、カラマツ林の中から鶏冠山がすくっと聳え立っているのが見える。前者の足跡のない登山道は雪で覆われているものの、南斜面であることから積雪量は少なく、ヌク沢からの登山道が合流する「広瀬」までは順調に高度を稼ぐが、もう12時を過ぎている。雪もちらほら降り始めてきた。気温は0度からマイナス2度の間を行き来している。

 標高が2,000mを越えシャクナゲのトンネルをくぐるころには、股下までもぐるような吹きだまりもあるので、アイゼンをはずしてワカンを装着し対処することとした。ただ、本格的な登りとなったにのアイゼンをはずしたため、ピッケルで体を支えて登ろうとするが、ワカンの歯はそれほど役に立たず、登り辛い。標高が2180mのところにテント一張り分ほどの平らなところがあるが、そこには雪のブロックが積まれている。その広さからツェルトでビバークした跡のようだ。


ビバーク跡にピッケルを忘れる

 ビバーク跡を過ぎるころから積雪量が増し、ヅボっとやると股下までもぐるところもある。難行苦行の末、14時40分になって急坂がいったん緩むロープが張られている場所に出るが、その先も急坂が続く。この辺りから、北西に向かうような樹林帯の稜線歩きとなることから、雪はそれほどないだろうと予測して来たのだが、それはまったく逆なことであって、吹雪いた雪が樹林帯の中の登山道に盛り上がっているのだった。

 先達者の足跡はまったくない急坂はなかなか足が進まず、雁坂峠への分岐点まで1時間30分もかかってしまった。もう時刻は16時20分で回りは薄暗くなってきた。これから先、距離としてはたいしたことはないが、雪の積もり具合が分からないし、小屋に到着するにはまだ時間が要ることから、ヘッドランプを準備する。分岐から木賊山まではほんの少しの距離なのに、雪が深く20分もかかってしまった。


木賊山

 木賊山を少し下りると展望が開け甲武信ヶ岳が見えるはずだが、真っ黒な雲に隠されて山は見えない。樹林帯の深い雪に手こずりながら崩壊地に出て、稜線の北側を巻いた道を小屋へと進む。今日の大きな目的は小屋周辺にテントを張っての耐寒訓練のはずだったが、小屋が見えたとたんその意欲はすっかり失せてしまった。時計は17時20分を指しているし、小屋周辺は雪が深く積もっていてこれから整地してテントを張るなど、今の疲れからは到底無理な話だ。結局道の駅からは9時間半を要したことになる。

 甲武信の冬季小屋は、相変わらず常夜灯が灯されていてほっとする。外の簡易トイレを使用するにはスコップで雪を除けなければならないが、冬季小屋の入口はその必要はなかった。小屋に入ると、登山靴で運ばれたと思われる雪が床にいっぱいあって、また、ゴミや飲料水を確保するために使ったと思われる雪が鋸たままのポリ袋が複数あったので、いったんこれらを持ち帰るために片付ける。そして熱燗を用意しながら簡素な夕食を摂って就寝体制に入ったとたん、夢の中に入り込んでしまった。


 1月22日(2日目)

  すっかり熟睡し一度も目が覚めなかったが、目覚ましで起されたのが4時だった。しかし、暖かい寝具から抜け出せなくて30分ほど無駄な時間を過ごしてしまった。外はまだ雪が続いている。外の簡易トイレに行くまでの昨日の足跡は新雪で隠されてしまっている。新たな雪は、10cmはないだろうが、昨日のコースタイムからすると、下山にも結構な時間がかかるだろう。

 ヘッドランプを点けて小屋を後にし、木賊山への登り坂に取り付く。途中の崩壊地の手前の樹林帯の道は、吹雪いた雪が積もって昨日の足跡を消している。気温はマイナス5度とそれほど低くはない。もう少し寒いだろうと思ってオーバーパンツを履き、下着もメリノウールの長袖を着用したが、少し歩き出すと暑くてたまらない。木賊山の頂上でアウターと下着1枚にして黙々歩く。


崩壊地

 崩壊地は、谷から吹き付ける風で樹木が真っ白となっている。ここの様相はまるで厳冬の北の国のようだ。崩壊地を抜けた樹林帯も樹氷が着いて美しい。昨晩吹雪いて雪が溜まった登山道も、下りは楽チンだ。途中、昨日見たビバーク跡で休憩した際、そこにピッケルを置き忘れて100メートル以上下ってしまってまた登り返すという失態をしてしまった。鶏冠山が見えてくるころには気温は0度から2度ぐらいとなって、汗が噴出す。ゆっくりと下りると約6時間で西沢山荘に着いた。

 【参考】 冬期小屋用のノートの書き込みを見ると、「雁坂峠から来たが予想外の時間が掛かった。」「ワカンを持ってくればよかった。」「ラッセルに苦労した。」「十文字小屋から11時間掛かった。』などと書かれていた。


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