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今年も自生地 ヤマシャクヤク開花状況 
(2011年)


ヤマシャクヤクの咲く山裾で

※(1) ヤマシャクヤク群落地のこれまでの探訪記はこちらに取りまとめています。
※(2)この場所はヤマシャクヤクの植生を考えてたどりついたところです。

2011年群落地の開花の様子


 2011/ 5/13 

 今年は季節が少し遅れているので開花はまだだろうが、まずはヤマシャクヤクにごあいさつをしなければと、いつもの自生地へ向かいました。しばらくぶりの晴天とあって握る車のハンドルも、そして私のこころも軽快です。身支度を整えて新緑に彩られた山道を登りますが、傾斜のきつい道なので朝から汗をかいてしまいます。この地のヤマシャクヤクは、どちらかというと日当たりの悪いところにも咲いていますので、標高の低いところや薄暗いところも侮ることができません。目を右に左に、と一瞬たりとも気を抜くことなく登っていきます。

 
スミレさんにもごあいさつ

 しかし、登りではこれといった新たなヤマシャクヤクの発見もなく、いつもの場所に行くことになります。そこはヤマシャクヤクの生育には不向きと言われるスズタケの生える場所ですが、それでも2株が開花を待っているところでした。ヤマシャクヤクが葉を広げた姿は、まるでタンチョウズルのようなのですが、スズタケの中ではそうもいきませんね。ここは倒木があって周りに比べ少しスズタケが薄いところなので、ヤマシャクヤクもなんとか生き延びていけるのでしょう。


いつものお2人さん
 

 小さな支尾根?を一つ越え、樹林がまばらとなって開けた場所に移動します。今年のここのヤマシャクヤクは心なしかまばらに見えます。それでもそれが誰かに掘られたとかというのではなく、たとえば昨年(2010年)の酷暑に耐えられず株が溶けてしまったのではないのかと思われるのです。そうでないとこの疎らな風景の説明はつきませんし、このページの最後のほうの説明からもお分かりになるものと思います。そのような風景であっても、ここが群落地と呼んでも遜色のない、ヤマシャクヤクの大きく広がる場所には違いありません。画像でもお分かりいただけるとおり、この場所には陽が全体的には射し込みません。

 

 そのような薄暗い場所から少し下の斜面に、太陽の光がスポットライトのようにヤマシャクヤクを照らしているところがありました。ところで奥のヤマシャクヤクはまさに鶴がそのウィングを広げているようですね。手前の株の右下の株は2〜3年のものでしょうか。画像中央から左にかけてヤマシャクヤクの今年発芽した幼苗が一杯あります。今年はどこもこのような苗が数えきれないほど芽を出していました。このように増減を繰り返しているのではないのだろうかと思われます。

 

 この杉の倒木のところのヤマシャクヤクは、先の群落地から少し離れていて、環境的にはまったく別なところです。
 ところで、この場所までに来る間にこれまでヤマシャクヤクを見付けることはなかったのですが、今年は4か所で2〜3株ずつ見ることができました。先入観をなくしよく四囲を観察することが必要だと感じた場所でもありました。いずれも日当たりは十分すぎるほどいいのですが、もう少しすると木々の葉で太陽光が遮られるはずです。ヤマシャクヤクは陽が当たり過ぎてもダメ、日陰ばかりでもダメということなんでしょう。
 さてこの倒木の地のヤマシャクヤクですが、2010年9月9日に観察に行ったときにはすべて影も形もなくなっていたのです。ちょと掘り返したような跡もあったので、根こそぎやられてしまったのだなと臍を噛んだのですが、実はそうではなく、すっかり枯れて(溶けて)しまっていたのでしょう。幼苗も含めて数を数えると29株もありました。あと2〜3年もするとたくさんの花を付けてくれるのでしょう。


奥の親株から種がこぼれてこのように増えていくのでしょう

 大本命の群落地は、今日は行くのをやめておきました。というより、斜面を這うようにして登らなければならないのですが、その取り付き口の風景を忘れてしまったというのが本当のところでした。そこで、最後にもう一か所見てから帰ることにしました。ここは親株が近くにないのに昨年、幼苗が7株ほどあったのです。倒木をまたぐように整列して生えていたのですが、どう探しても見当たりません。周りに遮るものがない開けたところなのできっと溶けてしまったのかもしれません。ところが、何の木かその名前は分かりませんが、ちょっと見たところでは木の葉と似た葉が、その木の根元にあったのです。だから生き長らえることができたのでしょう。このヤマシャクヤクは2年目の株でしょう。昨年見た株の生き残りのようです。

 さあもう帰ろうかと山を下ろうとしましたが、もう一度倒木の場所を振り返って見ました。誰かの視線を感じたというのではありませんが、倒木の下の小さな葉っぱが目に入りました。今年発芽したヤマシャクヤクだったのでした。きっと昨年発芽できなかったものが今年芽を出したのでしょう。

 
しっかり育ってほしい・・・。

 今日はこれから別な山に行こうと思っていますから、この場所を離れるともう一目散にこの山を下りるだけです。標高をどんどん下げますが、それでも習性とは怖いものです。目だけはあちこちを向いてしまいます。その甲斐あってか、もうこの標高ではあり得ないだろうというところで、2〜3年のヤマシャクヤクが1株私を見送ってくれました。あまりの嬉しさで渡渉に失敗して登山靴を沢水に突っ込み、さらには次の初めての山の取付き口を間違って1時間も林道を歩き、少しずつ目的の山から遠ざかっていることに気付いてタイムアウトとなってしまいました。


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