[HOME] 2日目の大千軒岳][3日目の大平山][4日目のイカリカイ駐車場公園キャンプ場


ヒグマに吠えられたヤンカ山(2017)
2017/ 6/16(金)


2017/ 6/16(金)
大平山〜八雲町熊石〜ヤンカ山登山口〜東側コース〜ヤンカ山〜西側(滝ノ沢)コース〜登山口〜熊石青少年休暇村〜熊の湯(露天風呂)〜知内・「道の駅しりうち」(車中泊)


ヤンカ山は右手の草付きへ

今回の道南の「やま旅」は大千軒岳と大平山が主体であったが、所要時間が短く自然林が美しいというヤンカ山をサブとして用意していた。悪天候の大平山から下山してからの午後に空き時間ができたので、島牧村から八雲町熊石(旧熊石町)に向かった。ヤンカ山の登山口までは前日に下見をしている。


ヤンカ山への案内標識 左手に進む

熊石市街の八雲町熊石総合支所前信号を山側に入ってすぐ右折し、墓場を左に見て山道を覆うイタドリを車で押し分けるように進む。ほどなく公共マナーの遵守を求める看板が立てられた付近の駐車スペースに車を置く。その先に林道が続くが、ヤンカ山への道筋は林道右手の廃林道状態の踏み跡を辿って行くことになる。ほどなくしてその先に「ヤンカ山」の案内板がある。


見落とさないように 東側コース取り付き

登山道は東側コースも西側コースも、この看板の左手を進む必要がある。道はすっかり背丈の高い草に覆われている。東側コースの取り付き地点を示す赤テープを見つけると草むらの中に道標が佇んでいる。すぐさま斜面となりロープがフィックスされているがそれを頼るほどの急斜面ではない。ジグを切って進むとじきに尾根に上がり、素晴らしい自然林の中のフットパスを歩くようになる。


藪の中の表標識

これまでの登山の中で自然林の素晴らしい思い出の場所と言えば、栂海新道のブナ林・奥多摩のタワ尾根などが思い浮かぶが、ここヤンカ山東尾根コースのミズナラ樹林はこころ休まる美しさである。ヤンカ山は地元の「熊石山歩会」の尽力により開削され、じ後20数年手入れされてきたとのことである。取り付き口までの様子や最初の大きな標識の周辺を見るに、少なくてもここ2〜3年は整備の手が届いていないと見受けられるが、尾根に登ってみると林床の様子が程よい植生の伸びとなっていて、とても好ましい風景を作っている。


東側コースのフットパス

登山道脇にはイチヤクソウやササバギンラン、ホウチャクソウなどが咲いている。登山道の上にはヒグマの新しい落し物が多く、この付近を住処としているヒグマの存在が感じられる。今回はザックの下部に大きな熊鈴を付け、歩くたびに鈴が尻に当たって大きな音が出せるようにしたから、ヒグマがこちらの存在を先に分かってくれることを期待した。


前ヤンカから下りたフットパス

フットパスがややきつい傾斜にとって代わるジグを切ってほどなく前ヤンカのピークに出る。ピークの北側は展望が開けているが、山々の上部には雲がかかっている。右手に踏み跡が続いているが、ここを左に折れるとヤンカ山へと続く。垣間見えるヤンカ山はきちんとした三角形のメリハリのある端正な山容を見せている。


お猿さんとの出逢い

前ヤンカからいったん下るが、その間も素晴らしい樹林の中の道が続いている。コルからは樹林の中の登りとなるが、傾斜があってロープが付けられている。登りきるとそこも樹林に囲まれていて、頂上標識がなければただの通過点と言った趣の場所で展望は利かない。

 ヤンカ山頂上

ヤンカの頂上に鐘が吊るされている。どこかに潜んでいるかもしれない熊さんにごあいさつと鐘を鳴らして西側(滝ノ沢)コースへと入る。下山は急傾斜から始まり倒木を避けながらとなる。林床の様子も変わって楽しみも少なくなったので、ラジオをイヤホンで聞きながら歩く。

ラジオ放送を聞きながら歩いていると、エゾジカ?と思われるような鳴き声が耳に届く。鹿とはちょっと違うなと思いイヤホンを外すとその鳴き声は「クォ〜、クォ〜」と聞こえ、鳴き声の方向を見ると登山道脇20mほどの笹藪の中に横を向いたヒグマの成獣を見る。「クォ〜、クォ〜」という鳴き声は止むことがない。


お猿さん

歩きを止めることなくヒグマをやり過ごすように歩くことにするが、登山道の関係からそれほど距離を離すことができない。するとヒグマは藪の中から体をもたげてこちらに向きを変えたので、相対する位置関係となった。ということはヒグマはこちらを正面から見ていて、その様相はというと茶色のパンダのようなおかしなものであった。そのヒグマが鳴いている(吠えている)様子はないのに「クォ〜、クォ〜」という鳴き声が続く。そうだったのか。子熊を抱えているのか。隠れて登山者をやり過ごそうとしていたのに子熊が鳴いてしまったので、子熊を守るための警戒行動を執ったお母さんヒグマということか。


お猿さん

状況的にはカメラ撮影のチャンスはあった。しかしウェストポーチに手を掛け、カメラを取り出し撮影に至る行動がヒグマにどのように判断されるのか分からないので、安全策を採って同じペースで歩き続け距離をあける。振り返ることも一切せず、登り返しもスピードを安定させる。


2009年夏にカムイエクウチカウシ山八ノ沢カールで出逢ったヒグマの親子 (←その時の記録にリンク)

北海道の山ではこれまで、登山中に十指に余りあるヒグマを見た、出遭った。それは北海道のメジャーでない山を登るときの普通の光景であり、驚き騒ぎ立てることでもない。反って、このような野生動物が生息できているチャラチャラとしていない自然の中で遊ぶことのできる緊張感を伴ううれしさを覚えるのであった。とは言え、いったん緩急あれば多くの迷惑を掛けることになるので、十分な対策と警戒と慎重な行動が必要であるということは多言を要しない。


我が家の熊ちゃん猫

ヒグマとの出逢いを邂逅しながらあまり楽しみのない西側コースを下りて行く。眼下に沢が見え右手に滑滝を見ると、そこは90度に近い、つまりストンを落ち込む崖になっている。ロープが掛けられているのでポールを下に落として沢に出る。対岸に渡り登り切ると右手にうっそうとした草木に覆われた廃林道が続いて登山口まで導いてくれる。


露天風呂「熊の湯」

下山後は3日間の汗を流すために熊石青少年休暇村先の「ひらたない荘」に移動したが、大型バスが泊まり乗用車も多かったので、風呂の混雑はごめんだとその先に進んで「熊の湯」という露天風呂に入ることにする。行き止まりの道路の脇に温泉の湧出口がある。露天風呂は道路の反対側の川沿いにあって、誰もおらず源泉掛け流しの贅沢な時間を満喫する。
明日は道南のやま旅最終日なので、車を函館に向け走らせる。飛行機の出発に間に合うだろうから快晴の大千軒岳に登ろうと、「道の駅・しりうち」で車中泊とする。


[HOME] 2日目の大千軒岳][3日目の大平山][4日目のイカリカイ駐車場公園キャンプ場