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塩見岳〜北俣岳〜蝙蝠岳 
(2015/ 9/19〜24)


 2015年 9月22日( (4日目の2) 
この日の行程 : 三伏峠小屋04:59〜05:09三伏山05:12〜06:02本谷山〜07:55塩見小屋〜08:58塩見岳09:08〜09:11塩見岳東峰09:14〜09:45北俣岳分岐09:58〜10:16北俣岳10:18〜12:30蝙蝠岳(ビバーク)


塩見岳 北面

 この日の行動時間は、三伏峠小屋〜塩見岳〜蝙蝠岳間を9時間10分で歩くことを見込んでいた。うち休憩時間は1時間である。縦走装備に、水が採れる徳右衛門岳までの間の水を5リットル持って歩くことも、ザックが体になじんでいるのでそう苦とはならない。よく歩きこまれた塩見岳東峰からの登山道から北俣岳へ向かって下りる。北俣岳の頂上には男女2人が長い間留まっている。仙塩尾根か蝙蝠岳へ尾根に分ける分岐には、ソーラーパネルを取り付けたザックが一つ置かれている。蝙蝠岳への尾根にほんの少し入った窪地の整地にザックが二つ置かれている。


ニペソツ?カムイエクウチカウシ山? いいえ塩見岳


 今回の縦走から山を下りたのは9月24日である。携帯電話は、自分が使うとき以外は身辺に置かないことも少なくない。10/1に同じ電話番号から2度電話が入っていたことに気付いたので5日、発信元に掛けると派出所だった。9月12日に赤石小屋から散策に出ると言って行方不明となった人のことかと思ったら、21日に熊ノ平を出た登山者が行方不明になっていて、蝙蝠岳周辺での情報を得たいと言うことだった。警察はその人の人定、着衣、装備等を説明したあと、「あの日、あなたは、その人に蝙蝠岳付近の山域で出会ってはいないか。」ということだった。蝙蝠岳へ向かう途中に出会った人は4人で、蝙蝠岳では二軒小屋ロッジから登ってきた人とテント場を同じくしている。北俣岳付近に残置されていたザック3つのそれぞれの特徴を伝えたが、警察が探している遭難者のものではなかった。
 なぜ警察がこの私の携帯電話番号を知ったかというと、それは登山計画書を提出していたからであった。警察は私のヤマレコの記録の存在も知っていた。ヤマレコの記録と登山計画書の行動スケジュールから特定したようだ。山間部にある派出所もなかなかやるものだ。その遭難者は北荒川岳で見かけられている。この人もビバークか?


北俣岳 奥に塩見岳

 遭難者がどこに向おうとしていたかが登山計画書がないことで分からず、捜索の範囲を大幅に広げなければならないことも多いようだが、登山は言ってみれば単なる遊びであることを肝に銘じ、いったん何かあれば大勢の人に迷惑をかけるのだから、登山計画書はきちんと書き記し提出することが必定であると、今回の警察の緻密な調べ方を知って、あらためて思った。


登ってくる二人 蝙蝠岳

 蝙蝠岳の手前の2758mのザレ場を下りていくと、前方から2人が登ってくる。先行する女性とはにこやかな挨拶を交わしたが、後方の男性は無言である。そうか、こんな辺鄙なところでも挨拶はなしか。そんな思いを振り払うように、2人がザック、サブザックを持っていない、すなわち手ぶらであることに気付いた。この日の稜線は非常に熱く、この人たちが北俣岳分岐にザックを置いてきた人たちならば、そして蝙蝠岳の往復なら所要時間は山地図上では6時間となっている。登山中に水分を補給できないことの辛さは身に染みて分かっている。 


身軽と言おうか、無茶と言おうか 灼熱の尾根の空身

 10年以上前に、ペテガリ岳東尾根コースを1泊2日で往復したときに水を切らし、2日目の午前中から下山できた深夜0時までの10時間ほど、水なしで歩いたことがあった。このときは、夜になってから熊笹の葉にかすかにたまった夜露を舐め舐め歩いたが、それは水分補給にはほとんど役に立たなかった。登山口に下りてから沢の水をがぶ飲みしたが、水の味はまったく感じられないかった。そんなことも思い出して通り過ぎた二人にお声をかけようとも思ったが、人を寄せ付けないほどの雰囲気の男性に圧倒されたこともあり、ザックには売りに出すほど水があるのにぁと思いながらも、先に進む。


蝙蝠岳への途中のオアシス

 ガレ場からいったん小ピークを乗り越え下りに入ると、この炎天下でようやく太陽光を遮ることができる草地に出た。夜露で濡れて重くなったテントやグランドシートを広げて乾かすことにした。すっかり乾くまでにそう時間はかからなかったが、それでも15分以上は木陰で休むことができ、疲労感もすっかり取れた。そろそろテントをザックに入れようというころ、男性2人が北俣岳方向から下りてくる。
 「ここでテントを張るの?」
 「三伏峠小屋ですっかり濡れたので干しているけれど、目的地は蝙蝠岳ですよ。」
 「私たちは徳右衛門岳に張ったが、そこもお勧めだよ。」
 「私は憧れの蝙蝠岳に予定通りに張るつもり。」
 「そうそう、徳右衛門岳の水場への入り方には注意してね。こちらから行くと左側に下りるからね。」
 「今日はどうするの。」
 「テントを撤収して、二軒小屋ロッジに下ります。」


神聖な山に無粋で貧乏くさい荷造り紐 このような輩は登山禁止に

 もうすぐで蝙蝠岳だというのに、出会った人はこれで4人だけ。本当に静かで煩わしさのない山だ。ところが、こんな素晴らしい自然風景の中に荷造り用紐をあちこちに括り付けたとんでもない勘違いをしている人がいる。それは北俣岳分岐から蝙蝠岳まで続いていたから、塩見岳から往復した者のことに違いない。これまで、このような貧乏くさいビニール紐を用いるのは年寄りだとの先入観を持っていたが、魔境・小黒界隈で比較的若い人がブログでその行為を正当化するような記述をしていた。自分のためのみならず、後の人のことを考えて括り付けているそうだ。蝙蝠岳のビニール紐は登山道に沿って延々と付けられていて、その偏執ぶりには驚くばかりだった。


来たりし尾根、塩見岳

 蝙蝠岳を目前にしてきた方向を振り返ると、迷いようのないように見える。実際には過去に遭難者もあったようではあるが、それは裏山でも同じことである。それほどまおどおどして歩いてどこに面白さがあるのだろうか。とにかく山で見るビニール紐の取り付けは生理的にも受け付けられない。


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